コラム 2026.01.26

【ラグリパWest】挫折を味わいにゆく。島正輝 [立命館大学ラグビー部/前主将]

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】挫折を味わいにゆく。島正輝 [立命館大学ラグビー部/前主将]
立命館大のラグビー部を主将として引っ張った島正輝。この春、クボタに入社し、S東京ベイで社員選手としてプレーする。チーム加入後はそれまでのNO8からHOに転向する予定だ

 島正輝はこの春、クボタに入社する。会社が持つクボタスピアーズ船橋・東京ベイで社員選手としてラグビーを続ける。

「今まで、ありがたいことに高校でも大学でも1年から試合に出してもらえました。だから、挫折らしい挫折をしていません。あえてその経験をしてみようと思いました」

 ポジションは立命館時代のNO8からHOに上がる。激戦区での日々が自らをさらに高みに導くと信じる。目も眉も口も大ぶり。快男児である。

 短縮形「S東京ベイ」のHOは多士済々だ。リーグワンのディビジョン1(一部)でもこのレベルはない。まず、マルコム・マークスがいる。昨年の世界最優秀選手だ。南アフリカ代表のキャップは86を誇る。

 江良颯もいる。島の2学年上で日本代表キャップは6。将来を嘱望されている。リザーブとして売り出し中の福田陸人や大熊克哉もいる。昨秋には、41歳の安江祥光が入団した。日本代表キャップは2。つまり、このS東京ベイで出番を得れば、代表入りに等しい。

 島はHO未経験ではない。
「大学2年の終わりから、3年の春まで少し練習はしたことがあります」
 チームコーディネーターでOBの中林正一にもすすめられた。HOとしてヤマハ(現・静岡BR)で日本代表キャップ4を得た。

 専念しなかったのは、チーム事情がある。同期には大本峻士(たかし)がいた。U20日本代表などに選ばれる。卒業後は同じリーグワンの浦安DRへ加入する。

 島への期待を前川泰慶(ひろのり)は表現する。S東京ベイのGMである。
「日本人版のマルコムになってほしい」
 大型HOとしての大成を望む。島の体躯は183センチ、107キロ。体の盛り上がりは格闘家でも通る。HOでは6センチ高いマルコムの次に来る。

 前川は島を1年時から注目していた。
「ボールを獲ってこれるんですよね。頭を突っ込んでそれがやれる選手は少ないのです」
 いわゆる、「ジャッカル」である。その用語はスティールに改められた。ボールの争奪現場での奮闘が目に焼きついている。

「ブレイクダウンは自分の強みと思っています。まず予測。この辺に倒れて、これならいける、という感じです。そこには強い姿勢が必要です。重心は真下に置き、足は肩幅くらいで右足が少し前め。母指球に力を入れます」

 島は説明する。自主練習は速さを抑え気味で、下半身にタックルに入ってから、起き上がり、ボールを獲ることを繰り返す。その手順、動きを体にしみ込ませる。高校までにやった柔道やレスリングも役に立っている。

 島は立命館での最終学年で主将についた。同期4年生の話し合いを指導陣が承認する。10回目の関西春季トーナメントこそ、決勝で京産大を29-12で破り、初優勝するが、秋のリーグ戦は7位に沈む。28年ぶりの入替戦は大体大を57-21と降し、残留した。

 その急降下の理由を考える。
「菅平に上がってから、しんどい練習はしていません。試合にフォーカスしていました。もっと自分たちで追い込むべきでした」
 夏合宿では流経大などに3連勝した。強いという錯覚。さらに自身がひざを痛め、リーグ戦序盤の3試合に欠場したこともあった。

 島は立命館で1年生から公式戦に出たが、最高位は5位である。大学選手権の出場もない。その状況でもS東京ベイは評価をつけた。関西の担当は熊田碩彩。とりまとめのチームディレクターとして鈴木力がおり、前川を含め採用のシステムが確立している。

 島は立命館に大分舞鶴から入学した。大分県人である。競技を始めたのは小5だ。
「テレビ見ていてやりたいな、と」
 大分ラグビースクールで中3まで続けた。黒ジャージーを選んだ理由がある。
「地元ですし、花園に出られると思いました」
 その冬の全国大会出場のあては外れる。

 大分東明の台頭があった。全国大会の出場は3年時の101回大会(2021年度)のみ。県予選決勝は14-14。抽選の結果、本大会に出場し、2回戦で石見智翠館に0-45で敗れた。この最終学年では共同主将をつとめた。

 高1の県予選決勝は14-17だった。島は1年生でただひとり先発した。FLだった。
「規律の大切さを学びました。同時に申し訳ない気持ちでいっぱいでした」
 3点差はまたPG差。全国大会の連続出場記録は33で止められた。

 大分舞鶴での卒業後を相談したのは落合佑輔である。立命館のOBだった。
「スポットのコーチでした」
 落合はバックローとしてキヤノン(現・横浜E)に進み、9年前に現役引退している。そのすすめもあり、スポーツ推薦で合格した。

 立命館での4年を総括する。
「よかったです。色々な経験ができました。負けたことも、優勝したことも」
 組織というものをとらえることもできた。
「みんなが同じ方向を見るようにしないといけません。そのためのキャプテンです」
 リーダーの役目を痛感する。

 入社前にそれらのことが分かったのは大きい。GMの前川は言う。
「会社の人事面接でも評価は高かった。人から好かれる性格を持っているし、仕事でも出世してほしいと願っています」
 デスクワークでも結果を出し、社員としてチームを未来永劫守ってゆく役目もある。

 島は上司や先輩、同期たちともうまくやるに違いない。酒でもコミュニケーションがとれる。好みは焼酎。隣県・宮崎の黒霧島がお気に入りだ。地元・大分の麦より、クセのある芋が好物ということは、人間に関してもその許容する範囲は広いだろう。

 高校でも、大学でも色に例えればくすんだ感じだった。その反動で社会人では安住の地を探してもおかしくはないのに、さらに挫折を得ようとする。

 あふれる向上心。その先にはまばゆいばかりの光がある。栄光を体いっぱいに浴びるため、島はこれから奮闘してゆく。

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