日本代表 2025.08.13

7月に日本代表デビューの中楠一期は「常に成長し続け、うまくなりたい」。

[ 向 風見也 ]
7月に日本代表デビューの中楠一期は「常に成長し続け、うまくなりたい」。
初キャップの北九州で結果を残した中楠一期(撮影:上野弘明)

 特別な経験をしてもなお、それまでと変わらずにいられた。

 2025年7月5日、福岡・ミクニワールドスタジアム北九州。中楠一期はラグビー日本代表でデビューした。

 ウェールズ代表戦で、前半19分から最後尾のFBで途中出場した。テストマッチ(代表戦)出場で得られるキャップを初めて手にした。

 登場より1分後のイエローカードで一時退場も、フィールドに戻っていた後半19分にはSOの李承信との連携でトライ。ハイパフォーマンスユニオンの一角であるウェールズ代表を24-19で下した。

 2日後、オンライン会見に出た。栄えある初陣を飾ったことでの心境の変化について問われ、「結論から言うと、あまり変わらないです」と語った。

「ファーストキャップを取って、小さい頃から着たかったジャージィを着て試合に出て、達成感はありましたけど、ここがゴールじゃないし、僕は常に成長し続けたい、うまくなりたい思いでやっている。(5日の一戦を)特別な試合という風に捉え過ぎることもなかったですし、また試合が終わって、1週間の準備が始まって…というプロセスのなかに自分がいるな、いつもと同じだな、という感覚で過ごしています」
 
 12日の同カードにはFBで先発。22-31と敗れてキャンペーンを終えるも、6月中旬に始まった活動は「少し、いい期間になったと思います」。司令塔のSOが本職の25歳は8月上旬、改めて取材に応じて述べた。

「去年とは違ったラグビーをするなか、勝ちたい思いをコーチも、皆(選手)も持っていて、それに向けて取り組んで、結果が出た」

 9季ぶりに就任したエディー・ジョーンズヘッドコーチの体制は2季目に入り、攻め方を微修正していた。球を保持するか、蹴るかのバランスを刷新した。

 初選出された昨秋のツアー時に比べ、指揮官の雰囲気が柔らかくなったように感じなくもない。

 何より、今回、世界ランキングで自国と接近するハイパフォーマンスユニオンの一角を制したことに意味を感じられた。

「いくら力がついていても、結果がついてこないと、自信に変わらない。(努力の成果が勝利という)見える形になったことで、より自分たちのことを信じてやってきたということ(思い)が強くなる」

 以後は束の間のオフを経て、次の活動への準備を始めた。

 所属するリコーブラックラムズ東京の拠点で、ジャパンのハイパフォーマンスコーディネーターであるジョン・プライヤー氏に課されたメニューに取り組んでいた。具体的には「狭いスペースでのスピード」などを鍛えた。

 12日、15日からの代表合宿のメンバーに名を連ねると発表された。8月下旬から国内外であるパシフィック・ネーションズカップを見据え、チームの課題にもなっているハイボールの競り合いでもっとタフに戦うと誓った。

 ジャパンでは、参加するたびに早朝から複数回のトレーニングを重ね、「毎日、必死に生き延びて…という感じです」。周りの仲間のことは、「成長しようという姿勢、(組織に)コミットする意識がある。練習がきついなか、ひとりひとりが凄く必死に100パーセント(の力を)注いでいる」と尊敬する。自身もそうあるつもりだ。

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