各国代表 2025.07.11

フランス代表が対NZ第2戦の登録メンバーを発表。4点差惜敗の第1戦から先発10人を変更。

[ 福本美由紀 ]
フランス代表が対NZ第2戦の登録メンバーを発表。4点差惜敗の第1戦から先発10人を変更。
右WTBで先発するテオ・アティソグベ(Photo/Getty Images)



 オールブラックスとのテストマッチ第2戦に臨むフランス代表「レ・ブルー」が、驚くべきメンバー構成で発表された。先週土曜日のダニーデンでの第1戦(27-31で惜敗)で対戦したフランスの選手たちをオールブラックスはほとんど知らなかっただろうが、今回の先発メンバーの3分の2がさらに新たな顔ぶれとなるとは、さすがに予想していなかっただろう。

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 ファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(HC)は、この大幅なメンバー刷新について明確な意図を語った。

「先週水曜日に合流したトップ14決勝進出チームの選手たちをできるだけ早く起用することは、彼らのクラブのHCとの約束だった。トゥールーズとボルドーは今シーズン最高の2クラブであり、フランス代表に選手を送り出すに値する」

 また、激戦だった第1戦で肉体的・精神的に大きな負担がかかった選手たちは、来週の第3戦に備えてリカバリーのため、今回は出場を見送った。

 この変更は、単なる疲労回復策にとどまらない。ガルチエHCは「今回の遠征は、このレベルを経験したことのない選手たちを見る良い機会。先週の試合で、何人かの選手は想像もしなかったような経験をした。その経験は彼らに、より一層練習に励み、またこのレベルに戻ってきたいと思わせるでしょう。私たちは選手たちの中に、この野心を育てていきたいのです」と述べ、多くの選手にトップレベルでの経験を積ませ、チーム全体の底上げを図る狙いを強調した。

 先週末の僅差での敗戦から、先発に残ったのはわずか5人。今回キャプテンを務めるHOのガエタン・バルロー(28歳)ほか、エミリエン・ガイユトン(22歳)とテオ・アティソグベ(20歳)はポジションを変更し、それぞれ左WTBと右WTBで出場する。HBは、先週安定したゲームメイクを見せたSHノラン・ルガレック(23歳)とSOジョリス・スゴン(28歳)が継続してゲームを組み立てる。

 平均キャップ数4.3という若いチームには、フレッシュな顔ぶれが並ぶ。FW第2列には、ジョシュア・ブレンナン(23歳)とマチアス・アラガユ(23歳)の初キャップの2人が抜擢された。ラックでの激しい戦いが期待される。

 第1列の左PRには代表初選出のバティスト・エルドシオ(25歳)が名を連ね、右PRには体格に恵まれ(193cm、142kg)期待されながらも伸び悩んでいるジョルジュ=アンリ・コロンブ(27歳)が新たに起用された。ガルチエHCは「このポジションは選手層を厚くする必要がある」と語る。

 第3列には、通常FLを務めるエステバン・アバディ(27歳)が NO8として、またラインアウトのリーダーとして先発。先週NO8で出場したミカエル・ギヤールも本来はLOの選手だが、この起用についてガルチエHCは「フランスでは、NO8のポジションは選考対象外の外国人選手が多く占めているから」と説明する。彼を両脇で支えるのは、第1戦で印象的な活躍を見せたヤコブス・ファン・トンダー(27歳)と、初キャップだが強烈なアグレッシブさに期待が寄せられるピエール・ボシャトン(24歳)だ。

 BKは、95キャップを誇るガエル・フィクーを温存しながらも魅力的な布陣になっている。怪我に悩まされてきたが、今季は大きな怪我もなく好調で、トゥールーズでも代表でも主要選手となっているピエール=ルイ・バラシ(27歳)がインサイドセンターに入り、ニコラ・ドゥポルテール(22歳)とコンビを組む。

 ドゥポルテールにとっては、層の厚いセンターのポジション争いの中で自身の立ち位置を再確認する機会となる。また、レオ・バレ(22歳)もFBとして重要な役割を担い、今後の代表定着へ向けた安定したパフォーマンスが期待される。

 ベンチには、HOピエール・ブルガリット(27歳)ら経験豊富な6人の「フィニッシャー」が控えるほか、初キャップとなるFLバスチャン・ヴェルニュ=タイユファー(28歳)とSHチボー・ドバニャ(31歳)が加わり、試合の流れを変える役割が期待される。

「オールブラックスとの試合に臨むのにハグをしながら準備することはできません」。今週の練習で、ガルチエHCガ選手を激しく叱咤する場面が見られたと言う。「練習はカオスへの準備。試合よりも速くなければならない。本番で非常に激しい状況に耐えられるよう、練習で非常に厳しい経験を積む必要がある」とレ・ブルーの将は語る。

 一方で、第1戦での惜敗にも、彼は確かな手応えを感じている。「残り3分で私たちには逆転のチャンスがあった。それがまさに私たちが望んでいたこと。そこに至るには、オールブラックスを相手に76分間持ちこたえる必要があり、私たちはそれを成し遂げた。苦しい時間帯や厳しい瞬間があったにもかかわらずです。私たちは試合終了まで勝利を手にできる範囲にいた。これはほぼ完璧にプラン通りと言えるでしょう」

 オールブラックスについては、「常に危険な存在であり、先週も試合を通して危険に晒され続けた。彼らのポゼッション全てが危険だ」と警戒を怠らない。そして、「彼らのようなチームは非常に強固なディフェンスシステムを持っており、我々はそこに対応できるよう改善しなければならない。彼らのアタックの組み立ても、もっと良く理解しなければならない」と、攻守両面での改善の必要性を説く。

「ポゼッションについては、もっと野心的になれるはず。私たちはオールブラックスのファンではあるが、自分たちを過小評価してはならない。先週は、時にコンプレックスを感じていた。それを払拭し、『我々にもできるんだ』と思う必要がある。我々にも武器があるのです」と、選手たちに自信を持つことの重要性を訴えかける。

 彼の選手への影響力は絶大だ。3週間前のイングランドXV戦で12-19とリードされて迎えたハーフタイムのロッカールームでのスピーチは、それをよく表している。

「驚いているのか? うつむいている奴がいる。試合のインテンシティに圧倒されている。でも、ここが、君たちがプレーしたいレベルだろ! このレベルで戦いたいんだろ! このレベルは下なんて向かない! 頭の中でギアを上げる! そうすれば体がついてくる! 君たちは今、このレベルの入口に立っている。キツいと感じるなら、それは『もっとレベルを上げてやる! 俺はここにいるべきだ!』と奮い立つ時だ! まだまだ上がるぞ! だからこそ、俺たちがそれ以上になる番だ! もっとインテンシティを上げろ! 後半はさらに上がる! 驚いている場合じゃない! ここが、俺たちがいるべき場所だ! そして、ここで最高のプレーを見せるんだ!」

 この言葉に奮い立ったフランス代表は、後半に勢いを取り戻し、劇的な逆転勝利(26-24)を収めた。

 そして、ガルチエHCは、今回の3連戦のチャレンジを心から楽しんでいる。彼の策士としての才能と、選手にストーリーを語り、そこに彼らを巻き込み、潜在能力を引き出す手腕に、経験の浅い選手が多数を占めるこの夏のシリーズを通して、改めて感心させられる。NZでの第2戦、レ・ブルーがどんな戦いを見せてくれるのか、期待が高まる。

フランス代表チーム NZ遠征第2戦メンバー

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