国内 2025.05.19

スピアーズ、粘るサンゴリアスに苦戦も4強入り。「勝って反省」

[ 向 風見也 ]
スピアーズ、粘るサンゴリアスに苦戦も4強入り。「勝って反省」
フル出場した立川理道[S東京ベイ](撮影:三野良介)

 トンネルの向こう側が近いようで遠いと感じたのではないか、

 クボタスピアーズ船橋・東京ベイは5月18日、東大阪市花園ラグビー場でリーグワン1部のプレーオフへ参戦。レギュラーシーズン12チーム中3位で2季ぶりに迎えた舞台で準々決勝に臨んでいた。

 相手は東京サントリーサンゴリアスだった。同6位と苦しみながら4季連続でこの舞台に立っていた。
 
 直近の同カードを30-10で下していたスピアーズは序盤からスクラム、波状攻撃で破壊力を示しながら、逸機を重ねた。好突破を決めながらもスコアを逃した局面について、インサイドCTBの立川理道はこう振り返る。

「硬さみたいなものはあったかなと思います。でも、ゲーム中はそこまで(深刻に)感じることはなかったです」

 スピアーズ苦戦の背景には、サンゴリアスの踏ん張りがあった。チャレンジャーは局所的に好タックルを決めた。主将でHOの堀越康介は言う。

「(1人の走者に)2人で入る。ファイトして、ブレイクダウンカオスを起こす。それだけにフォーカスしました」

 端側の起点となるラインアウトでも、サンゴリアスがスピアーズボールをもぎ取りまくった。このエリアを仕切るLOのハリー・ホッキングスは、事前準備に手ごたえを掴んだ。

「プラン通りでした」

 ハーフタイム直前。3-0とわずかなリードのスピアーズは、敵陣ゴール前で何度も向こうの反則を引き出した。

 ノックアウトステージとありペナルティーゴールで6点差にする向きもありそうだったが、就任1年目で主将のNO8のファウルア・マキシは異なる判断を下した。

 HOのマルコム・マークスを軸に優勢だったスクラムを選び続け、プッシュからのラック連取をイメージした。

「皆の(トライを)獲りたい気持ちが凄くて」

 思い通りにはならなかった。対するWTBのチェスリン・コルビが、ゴールの線を背に値千金のスティールを決めたのである。

 堀越は「相手のほうがマインド的にも身体的にも疲れている」と実感した。「後半のファーストプレーから、1分、1分、勝っていこう」と味方に発破をかけてリスタートした。すると後半5分、一時勝ち越しに成功する。

 中盤で球を振るさなか、FBの松島幸太朗が右奥のスペースへキック。その弾道をコルビが追いかけ、トライゾーンでグラウンディングした。

 ここで3-5とされたスピアーズは9分までに10-5と再逆転も、まもなく、サンゴリアスが新たな勝ち筋を見出す。

 SHの流大が、敵陣10メートル線付近の右あたりから高い弾道を放った。

「事前には特にそこまでハイパントを蹴る戦術(の予定)ではなかったんですけど、スピアーズの防御は堅く、オーバーアタックになってしまうと体力も失って身体の大きな相手のペースになると感じて。森谷(圭介=味方SO)と『もう少し、(キックを)上げよう』と話しました。うちには空中戦に強い選手もいるから、ここでモメンタム(勢い)を出そう、と」

 サンゴリアスは、件の1本を敵陣22メートル線付近右再獲得した。以後はスピアーズのエラーにも助けられ、しばらく陣地を確保できた。13分、ラインアウトからのサインプレーで再び先行。10-12。その後もサンゴリアスは、やや規律を乱すスピアーズから追加点を奪いにかかった。

 しかし結局、堀越はうつむく。

「きょうはクボタさんのオレンジの壁が厚く、ゴールラインを割れなかった」

 トンネルの向こう側が近いようで遠いと感じたのは、サンゴリアスも同じだった。

 14分にFW4枚替えのスピアーズを前に、20分頃、中盤での接点で圧を受け被ターンオーバー。24分、自陣ゴール前右で速攻を浴びた。トライラインを割られた。17-12。

 26、27分と敵陣22メートル線付近まで近づくも、向こうのジャッカルと自分たちの落球に泣いた。32分には、タフなマークスのクラッシュで笛を吹かれた。点差は20-12と広がった。

 その後は今季最大級の粘りで20-15としたサンゴリアスだったが、戦前の序列を覆すには至らなかった。奮闘のコルビはシーズンを総括する。

「最終的には、一貫性が足りなかった。アップダウンが激しかった。常にいいパフォーマンスを出せるようにならないと」

 最後に牙をむいたひとりはホッキングス。ドロップアウトからコルビが短く蹴り込んだのを「もう時間もなかった」と追い、キャッチを狙う。いったんは向こうに捕られるも、そちらへ刺さって落球させる。

 ここで最後のアタックに転じるも、サンゴリアスのパスは繋がらなかった。

 ラストワンプレーでタッチラインの外へ楕円球を出した立川は、4強入り達成で「ノックアウトステージでは、ポイントに変えられる部分でポイントしていかないとこういう(難しい)試合になる。(サンゴリアスの)しぶとさに対して、どこにボールを動かすか…ということは、次に向けて勝って反省できる」と締めた。

PICK UP