ボルドーがチャンピオンズカップ決勝進出。トゥールーズ破り歴史作る。

ボルドーが新たな歴史をつくった。ラグビー欧州クラブNo.1を決めるチャンピオンズカップ準決勝でトゥールーズとの激闘を35-18で制し、クラブ史上初の同大会決勝進出を決めた。
5月24日、ウェールズ・カーディフでノーサンプトン(イングランド)と対戦する。
「二度あることは三度ある」ーーその格言が、今季のボルドーには当てはまった。トップ14のレギュラーシーズンで、アウェイ、ホームとトゥールーズから2勝を奪っていた。
しかし、その時のトゥールーズは主力選手を欠く布陣。何より決勝トーナメントに入ってからのトゥールーズは別格だ。大舞台での経験値の差からも、予想はトゥールーズ優位に傾いていた。
だが、トゥールーズに暗雲が立ち込める。準決勝の前週、52-6と圧勝したトップ14のカストル戦で、FB/WTBブレア・キングホーンが膝の負傷で戦線離脱。さらに週明けには、5月中旬の復帰が見込まれていたWTB/FBアンジュ・カプオッゾの早期復帰の朗報に沸いたのも束の間、HOペアト・モヴァカが練習中に右膝前十字靭帯を断裂し、長期離脱を余儀なくされた。
追い打ちをかけるように、準決勝3日前には、絶対的なプレースキッカーであり、戦術面、精神面でチームを牽引するリーダー、そして試合の流れを一変させるXファクター、FBトマ・ラモスがふくらはぎの負傷で欠場することが発表された。SHアントワンヌ・デュポンをすでに欠く状況で、大一番直前のラモスの離脱は、選手層の厚さを誇るトゥールーズにとっても痛手となった。
試合前の記者会見で、トゥールーズのユーゴ・モラ ヘッドコーチは、「トマ・ラモスなしで戦うことの難しさは十分に理解している。正直なところ、少しでも可能性があるなら、彼をピッチに立たせていただろう。彼の不在に戦略で適応するしかない。それは我々のラグビーとは少し異なるものになるかもしれない。我々にとって未知の領域であるように、相手にとってもそうだろう」と、言葉を選びながらも心中を覗かせた。
一方のボルドーも、決して順風満帆ではなかった。前週、年明けから勝利に見放され、1月4日を最後に白星から遠ざかっていたラ・ロシェルと対戦し、手痛い敗北を喫していた。他の試合でも勝利こそ掴んでいたものの、後半に集中力を欠き、追い込まれる展開を繰り返す脆さも露呈していた。
そんな中、1月25日のリヨン戦で足首を負傷し手術を受けていたNO8テビタ・タタフが、この重要な準決勝を前にして練習に復帰。ヤニック・ブリュHCは「テビタは練習に戻り、試合に出られる状態だ。試合終盤で役割を果たす可能性もある。彼はやはり特別な選手だ」と語り、ボールキャリーでチームに勢いをもたらすタタフの投入を示唆していた。しかし、最終的にタタフはこの試合のメンバーには名を連ねず、万全を期す判断が下されたようだ。
タタフの不在の間、ボルドーのNO8を務めてきたのは、オーストラリア代表33キャップのピート・サム。この試合で最初にトライを奪ったのは、他でもないサムだった。
トゥールーズの巨漢LOエマニュエル・メアフーが、ボルドーの屈強な2人のPRから強烈なダブルタックルを受け、ボールをこぼす。その瞬間を見逃さなかったボルドーは、自陣深くからカウンターアタックを仕掛ける。
SOマチュー・ジャリベールがトゥールーズの赤い壁を切り裂き、敵陣22m内へと侵入。タックルを受けながらも、サポートに走り込んできたサムに絶妙なパスを送る。ボールを受けたサムは、そのまま一直線にトライラインを駆け抜けた。ジャリベールが冷静にコンバージョンを決め、開始5分でボルドーが7-0と先制した。
その後、ジャリベールと、この日トゥールーズで今季2度目の15番を背負ったアルゼンチン代表のフアン=クルス・マリーアが、それぞれPGを決めた(10-3)。さらに、トゥールーズがトライを返し、PGで3点を追加。10-11と逆転に成功する。
しかし、そのリードは長くは続かなかった。2分後、ボルドーは再びトゥールーズゴール前に猛攻を仕掛け、ボールを受けたWTBルイ・ビエル=ビアレが、軽やかにディフェンスをかわしトライラインに飛び込んだ(22分、15-11)。
その後、ブレイクダウンでペナルティを再三おかしていたボルドーが、初めてペナルティを得る。この瞬間から、トゥールーズはブレイクダウンで後手に回り始め、ペナルティを繰り返す。
ボルドーのSHマキシム・リュキュが、約60mのPGを射抜く。ボルドーのサポーターから大きな歓声が沸き起こった(28分、18-11)。
前半終了間際、トゥールーズはスクラムで得たペナルティを足がかりに、トライラインまで10mのラインアウトからトライを狙う。FLフランソワ・クロスが宙を舞い、ボールを掴みかけた瞬間、ボルドーのサムが手を伸ばす。辛うじて後方へ弾かれたボールを、FLジャック・ウィリスが痛恨のノックフォワード。絶好のトライチャンスを逃し、ユーゴ・モラHCが天を仰いだ。
その後のスクラムから、ジャリベールのキックで大きく陣地を挽回されたトゥールーズは、再びボルドー陣22mライン付近まで攻め込むが、ノットリリースザボールの反則をおかし、点差を縮めることができないまま、前半終了のホイッスルが鳴り響いた。
後半が始まる。SOロマン・ンタマックのキックオフを、自陣深くでキャッチしたのはジャリベール。猛烈な勢いで迫るカプオッゾをステップでかわし、左サイドのビエル=ビアレにパスを送る。
超音速WTBは、タッチライン際を疾走する。2人のディフェンスを置き去りにし、サポートについていたサムへパスして待ち構えていたマリーアをかわす。サムがディフェンス3人を引きつけ、内側に走り込んだビエル=ビアレへ短いパス。赤いヘッドキャップが、ゴールポスト脇へ一直線。後半開始わずか19秒、約80mを駆け上がる劇的なトライが生まれた。
ジャリベールがコンバージョンを成功させ、さらに2点を追加。スコアは25-11。トゥールーズを突き放した。
王者トゥールーズが、まるで精彩を欠いている。試合後、ンタマックは「あれは痛かった」と、このトライがチームに与えたダメージの大きさを認めた。
その後、ボルドーがシンビンで一時14人となる時間帯にトゥールーズが1トライを返す(56分、25-18)。しかし、64分、ボルドーが再びトライを奪い返し(30-18)、トゥールーズに反撃の隙を与えない。
ボルドーの鉄壁のディフェンスと、ジャリベールの巧みなキックでプレッシャーを受け続け、トゥールーズは自陣に釘付けとなる。ボルドーがさらにトライを追加し(78分)、35-18で昨年度のヨーロッパ王者を堂々と下して、決勝の地カーディフへの切符を掴み取った。