新人賞は同級生が獲るよ。控えめヴェティ・トゥポウが抱く大志。

上腕と胸板が盛り上がる。
身長190センチ、体重124キロのヴェティ・トゥポウは、静岡ブルーレヴズの誇る破壊力抜群のフィジアンだ。
4月27日、本拠地にあるエコパスタジアム。横浜キヤノンイーグルスとのジャパンラグビーリーグワン1部・第16節へ、6番をつけて最初から最後まで出た。突進、タックルで生来の強さを示した。
4点差を追う後半14分には、攻守逆転からのアタックを自らのフィニッシュで彩った。
中盤右でのカウンターラックを起点に仲間が相次ぎ前進するなか、敵陣ゴール前左端にいたトゥポウはパスをもらった。豪快なストライド、ハンドオフの合わせ技で止めを刺した。22―21。直後のゴール成功で24―21とできたこの場面について、本人は「スペースがあったのでトライが獲れると思った」と振り返った。
この日は一時21点リードを奪われながら、38―28と逆転勝利を収めた。
就任2年目の藤井雄一郎監督から「ゲームプランを信じなさい」「もっとハードワークを」との言葉を授かっていた。かくして再びフィールドに登れば、強みの波状攻撃に集中できるようになったようだ。
ちなみに前節では、ディフェンディングチャンピオンの東芝ブレイブルーパス東京から同カード2連勝にあたる白星を奪っている。ここで今季のプレーオフ行きを4番手で決め、休息週を経て臨んだ今節で昨季4強のイーグルスを振り切ったのだ。
難しいシチュエーションを乗り越えて凱歌を奏でた。この春、摂南大卒2年目に突入の25歳はこう喜ぶ。
「今季もっともタフと言っていいくらいの試合で勝てた。嬉しいです」
自身は実質1年目も、アーリーエントリーの制度により前年度にデビュー済みだ。今季は日本代表資格のある「カテゴリA」に区分されたとあり、初戦からここまで全試合でプレーしている。
「たくさん試合に出たことで、アタックのボールキャリー、ディフェンスともに成長できています。マークされているとは感じますが、それを考えすぎずに自分自身にフォーカスできています」
3月15日には、地元のヤマハスタジアムでの第11節で光った。
3シーズン連続ファイナリストの埼玉パナソニックワイルドナイツから、約50メートルを駆け抜けてのトライを奪った。22―17で勝った。
2020年に来日してから、ずっとなりたかったプロ選手になって活躍している。感慨を口にする。
「このレベルで戦えることは凄く嬉しい。これからももっと様々なチャンスを掴んでいきたいです」
ナショナルチームでの躍動も待たれる。当の本人も前向きだ。
「もし必要と言ってくれたら、行きたいです」
リーグワンの新人賞も狙える。もっとも、このトピックについてはほんの少しだけ控えめに語る。
自身以外の候補者に、同僚で立命大前主将の北村瞬太郎がいるからだ。この午後SHでフル出場の北村は、試合終了間際に約95メートルを走り切ってだめを押している。
報道陣に囲まれたトゥポウは「自分はそこまで…。北村だと思います」と笑うのだった。
レギュラーシーズンは残り2試合。5月中旬からはプレーオフで日本一を争う。