スピアーズのオペティ・ヘル 「本当の兄」と慕う恩人のもと努力

フィールドでは破壊的に戦い、クラブハウスでは穏やかに微笑む。オペティ・ヘル。クボタスピアーズ船橋・東京ベイきっての人気選手だ。
昨春、日本代表に初めて選ばれた。ヘッドコーチとして『超速ラグビー』を謳うエディー・ジョーンズのもと鍛錬に励み、同年の秋までに2キャップを得た。
イングランドへ遠征した際は、寒空の下で厳しい練習に励んだ。「たくさん動いたので…暖かくなりましたよ」と微笑む。
「(代表では)求められるレベル、スタンダードの違いを感じました。エディーさんのやる『超速ラグビー』をするには、それまでしてきたハードワークをさらにしていかなくてはならない」
身長190センチ、 体重127キロの26歳。ポジションは最前列の右PRで、壁を突き破る突進、迫る脅威を跳ね返すタックルが得意だ。参戦する国内リーグワン1部では、3季連続でベストフィフティーン入りを果たしてきた。
2シーズンぶり2度目の日本一を狙う今季も、4月中旬の第15節までに計14試合へ出場。スターター、もしくは途中から出るインパクトプレーヤーとして持ち味を発揮している。
「怪我なくチームの一員としてプレーできているのは嬉しいです。瞬間、瞬間に感謝しています。(今季の学びは)一貫性です。例えば1本のスクラムがよかったら、その次のスクラムもよくする。また、スクラム後のキャリー、ディフェンスといったネクストジョブでもスタンダードを高く…」
チームは昨季12チーム中6位と苦しみながら、現在は同2位と好調だ。
浮上のわけを、殊勲のヘルは「個人がチームで何に貢献すべきかをわかったところもある。怪我人が出ても、お互いが助け合っている」と見る。どう戦うか、そのために個々が何をすべきかがより明確になったことで、もともとの強みのチームワークが結果に繋がりやすくなったか。
立役者に挙げるのは、新アシスタントコーチのスコット・マクラウドだ。
防御を担当するこの人は、「相手の素晴らしいアタックをどう破壊するか」に力点を置くようだ。接点に圧をかけながら、適宜、飛び出し方や人数を調整する。
全ての好材料を踏まえ、ヘルは「昨季は自滅していたところもありましたが、今季はステップアップしている」と笑う。
留学していたオーストラリアで高校代表となるなど、若くして注目された。一時的に宣教師となって表舞台から去るも、19年よりいまのクラブにいる。同じトンガ出身で、義理の兄にあたるトゥパ フィナウが所属していたのがきっかけだ。
9学年上の恩人へ謝辞を述べる。
「彼のことは本当の兄だと思っています。まさか自分がプロになるとは思わなかったなか、彼が自らの経験をフィードバックしてくれた。オンフィールドのこと、日常生活についてのことを含め、プロとして大事なことを教えてくれた」
職業ラグビーマンとしての心構えを、繰り返し説かれた。故郷の家族の面倒を見なくてはいけない…。トレーニングやゲームで全力を尽くせるよう、リカバリーも万全にすべきだ…。
「選手のベストを引き出すため、お兄ちゃん的な役割も担っていました。厳しかったですけど、ありがたいことだと思いました」
注目されるなか、謙虚であるよう先輩に諭されてきた。
残り3試合となったレギュラーシーズン、すでに進出を決めているプレーオフでも不可欠な存在となろう。