ブラックラムズ伊藤耕太郎 「ハードワーク」で開く未来。

足りないものは何かを聞き、それを克服しようと努めていたようだ。
リコーブラックラムズ東京で実質1年目の伊藤耕太郎が、加盟するジャパンラグビーリーグワン1部の舞台について話した。3月11日のことだった。その直前までの全10試合で登録メンバー入りし、以後も2戦連続でプレータイムを得る。
「フィジカルの部分は大学生の頃と全然、違う。まだまだ、リーグワンのレベルに達してないなと思っています。ずっと、です。全部の試合で感じています」
身長177センチ、体重86キロの23歳はそう述べながら、タンバイ・マットソン新ヘッドコーチの助言で進歩できたとも頷く。
チームではおもに、最後尾で「15番」のFBでプレー。もっとも自身は、本職でもある「10番」のSOで戦いたいと考えている。そのため第5節終了時、マットソンに「10番」を担うのに必要なものを聞いた。
返ってきたリクエストは、防御力と「ハードワーク」だった。特に後者についてこう説く。
「ボールに関与してない時の動き。それをブロック2(第6節以降)に意識しました」
おかげでいまは、それまでとは違う感覚で動けるのだという。
「1回、プレーが終わった時に少し気が抜ける…というのは、だいぶなくなってきたかなと。プレーに関わる機会が多くなったのは間違いないです。ハードワークすることで、タックル、ボールタッチ(が増えた)」
続く言葉は充実感の発露。たくさん攻防に絡むことで、試合が「しんどくなりました」と本人は笑う。1試合あたりの活動量が増えたら、同じ出場時間でも疲れやすくなるのは自然だ。よい兆しである。
現体制は、シーズン中に黒星がかさんでも次戦へ、また次戦へと前向きに準備を進めてくれるのも嬉しいと伊藤は語る。
濃密な体験をしている。それはシーズン前も然りだ。11月、日本代表が実施していた海外遠征に追加招集された。アナウンスは13日だった。
2015年以来復帰のエディー・ジョーンズには2月の候補キャンプにこそ呼ばれていた伊藤だが、その後はチーム主導の海外留学、プレシーズンキャンプに注力していた。出国したのは、「(ブラックラムズの)沖縄合宿が終わった数日後」。関係者からの「次の日には出国してくれ」という電話の通り、急いで欧州入りした。
突然のピックアップに驚きながら、テストマッチに臨むナショナルチームで多くを学んだ。
「強度の高い練習で、自分をレベルアップさせたいと思っていました」
現地時間11月24日に敵地トゥイッケナムスタジアムであった、ツアー最後のイングランド代表戦。司令塔のSOには、本来インサイドCTBのニコラス・マクカランが先発した。
SOの経験が多い選手が伊藤を含めて3名もいたなかでの編成である。内部でも議論があったとされるが、途中合流の伊藤は「自分にベクトルを向けていました」と振り返る。
ちなみに複数の参加者によると、イングランド代表戦前の練習期間は気温が低いにもかかわらず薄着でのトレーニングが課された。半袖のジャージィでおこなう本番へ耐性をつけるためだったようだ。輪に加わったばかりだった伊藤は…。
「寒くならないように、(開始時間の)めちゃくちゃ前に(練習会場に)行って、めちゃくちゃアップしたのを覚えています! (埼玉パナソニックワイルドナイツから来たSHの小山)大輝さんと!」
途中合流前から通算すれば、秋のキャンペーンでの戦績は1勝3敗。厳しい結果である。それでも「何もわからない状態で行った」という伊藤は、マインドセットを新たにできたという。
「リーグワンで活躍する選手が試合に出るためにしのぎを削っていて、試合に出たらその力を出せたり、出せなかったり。そんな中チーム内ではラグビーへの姿勢について学べたし、試合では『世界はもっと強いんだな』と現地で見られた。いい経験になりました」
現在進行中のリーグワンは、今夏の代表活動に向けたアピールの場でもある。
若者は「エディーさんにも、タンバイさんにもフィジカルを…(強化すべき)と言われます。(体重を)急に増やし過ぎても怪我に繋がりますが、少しずつ(増量したい)。ディフェンスではまだ信頼を勝ち得ていないと感じる。(課題は)そこですね」と先を見据える。