フランス代表の今夏のNZ遠征の行方は。SOンタマックのコメントが話題に。

シックスネーションズ(以下、6N)2025を制したフランス代表のSOロマン・ンタマックが、現地ラグビー紙『ミディ・オランピック』のインタビューに応じ、フランス代表チームの進化と未来について語った。
2023年8月に膝靱帯を負傷して以来、初めてブルーのジャージーを着て臨んだ第1節のウエールズ戦でレッドカードを受け退場処分。続くイングランド戦とイタリア戦は出場停止と、再び試練の時を過ごした。
しかし、最後の2試合では的確なプレーでチームを見事にリードし、フランス代表の「10番」としての彼の地位は揺るがないということを証明した。
「自分が想像していた代表復帰ではなかったけど、僕のフランス代表としての歴史の一部になるだろう。長い間、代表チームで良いことを経験してきたが、最近は怪我や出場停止など、良くないことも経験した。この6Nの思い出も大切にしたい。大会5試合中3試合に出場することができ、いくつかの分野ではまだ改善の余地があるものの、自分のパフォーマンスに満足している」
彼が代表チームを離れている間、チームはワールドカップ(以下、W杯)での南アフリカ戦での痛恨の敗戦、そのトラウマを引きずった状態で臨んだ2024年の6Nの不調、南米遠征での不祥事など、数々の困難に直面した。
「厳しい状況の中でこのチームは成長したと思う。これらの試練はすべて、チームをよりたくましくし、グループの結束力を強めてくれた。今大会で優勝するためには、これらの試練を乗り越える必要があった」
ファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(以下、HC)も、「今のチームは2023年よりも強くなっている」と発言している。
「経験を積み、試合をコントロールする力が向上した。W杯の悔しさは、すべての選手を成長させた。新しい才能も加わり、チームのレベルを引き上げることができた。次のW杯では、さらに強くなると確信している」とンタマックも同意見だ。
今大会、フランスはより積極的にボールを持ち攻撃を仕掛けるラグビーに舵を切った。
「攻撃的な志向の強いパトリック・アルレタズがアタックコーチに加わったことで進化した。このシステムを機能させるためのバランスを見つけなければならなかった。この点でチームは大きく進歩し、新たな段階に入った。チームのトライ数がそれを証明している(大会通算30トライで最多記録)。チームにはボールやスペースに飢えている選手がいるし、このプロジェクトによりフレームを維持しながら、全員の能力を発揮することができる。このバランスを見つけることができれば、僕たちはとても手強いチームになれる」
一方、ンタマックのある発言が話題になっている。
「ファビアン(ガルチエHC)の就任以来、トップ14決勝進出チームや、『プレミアム』に選ばれている選手は保護されることになり、僕はまだ一度も夏の遠征に参加したことがない。しかし、ニュージーランド(以下、NZ)への遠征は滅多にないし、見過ごすわけにはいかない。トゥールーズが決勝に進出するかどうかに関わらず参加したいと思っている。他の選手たちも参加に前向き。あとはリーグと協会の話し合い次第。僕が理解している限りでは、最後の夏の遠征になるかもしれないのだから(2026年には、6N参加の6チームと、ザ・ラグビーチャンピオンシップの4チーム+2チームの計12チームで構成される新大会が誕生予定)」
確かに、現行のシステムになる前に代表にデビューしたWTBダミアン・プノーやSHアントワンヌ・デュポン、PRシリル・バイユ、PRウイニ・アトニオ、CTBガエル・フィクーを除いては、現在の代表チームの主力の中には、自国から遠く離れた国で1か月以上を過ごす遠征を経験したことがない選手がほとんどだ。次回のW杯がオーストラリアで行われること、また決勝トーナメントは毎週連戦で、6Nのように間にオフがないことを考えれば、この遠征はW杯のシミュレーションを行う良い機会になる。
しかし、ガルチエHCは慎重な構えを示している。
「代表選手はシーズン開幕から約20試合に出場しており、この後すべてプレーすれば、35試合でシーズンを終える可能性がある。ワールドラグビーは、1シーズンで2000分(80分の試合25試合に相当)を推奨している。それ以外にも、スマートマウスガードの使用で、選手の健康を危険にさらすコンタクトがあることもわかっている。35試合に出場した選手を連れて行っても構わないが、それは短期的な視点になる。
私たちは、リカバリーを最優先にするために、夏の遠征に一部の選手を連れて行かないことにしたのです。もし彼らをNZに連れて行くと、遠征は7月20日まで続く。参加した選手は、その後2か月間、つまり9月末まで競技に参加させずに休ませなくてはならない。この点でクラブと合意できるでしょうか?
調整案が見つかれば、検討することも可能でしょう。しかし、選手のコンディションを悪化させ、2027年まで私たちを危険にさらすことになるのであれば、何の利益もない。むしろW杯で彼らを失ってしまうことになる。今年11月には南アフリカ、フィジー、オーストラリアを迎え、2026年の6Nもある。リカバリーのための十分な時間を取れず、彼らのレベルを落とす危険がある。
最も重要なことは選手の健康。ショーとしては素晴らしいが、その代償はどうなるのか? 可能な限り最高のフランス代表チームで遠征したいが、選手の健康を犠牲にしてまではそうしたくない」
一方、フランス協会のジャン=マーク・レルメ副会長は、「リーグとの協定で、夏の遠征には、決勝進出チームの選手は参加しないと規定されている。どのチームが決勝に進出するかはまだわからないが、代表の主要選手が決勝進出チームに含まれる可能性は高いと思われ、彼らを連れて行くことはできない。
しかし、協会として、クラブ、リーグ、選手と個別に話し合いを試みることもできる。その場合は、この4者間の合意が不可欠で、選手にとって本当に最善の選択でなければならない。つまり、彼らが身体的に遠征に参加できる状態であり、NZ遠征によってリカバリーが妨げられず、次のシーズン開幕までに十分に回復できること、そして全体的な合意があることが条件となる。
多くの条件がありますが、選手たちがそこに行きたいという意欲を表明している限り、私たちは扉を閉ざしません。それは私たちにとって、代表チームにとってポジティブな指標だからです。選手たちは代表ジャージーを着て、世界最高のラグビー国であるNZでフランス代表のカラーを守りたいと思っているということだからです。しかし、すべての関係者の合意があって初めて可能になるのです」
今後の動きが注目されている。