同期の活躍に「燃える部分も」。ブラックラムズの津村大志が放った決定的なタックル。

努力の成果を示した。
3月1日、東京・秩父宮ラグビー場での国内リーグワン第10節に出たのは津村大志。リコーブラックラムズ東京の1番をつけ、地上戦で奮闘する。
走者の下半身へシャープに刺さり、転ばせるのとほぼ同時に起立。次の仕事を探す。正確で鋭いタックルはかねての課題だったが、アシスタントコーチのマット・テイラー氏との個人セッションを通して改善を図っていた。
三菱重工相模原ダイナボアーズとのこの一戦で首尾よく繰り出せたのは、その訓練のおかげだという。
「連戦を通してタックルがうまく決まらないと内省していました。コーチとコミュニケーションを取り、間合いについて練習してきた。それを(本番に)活かせた」
ハイライトは前半35分頃にあった。10-0とわずかなリードで自陣ゴール前にくぎ付けにされながら、自分たちから見て右中間から左側への攻めへ津村が反応。相手CTBのハニテリ・ヴァイレアと対峙し、そのヴァイレアを接点側から展開する方向へと押し出すようにじりじりと迫る。仕留める。
津村は身長174センチ、体重108キロで、スクラム最前列の左PRを担う。ランやパスの能力に秀でるCTBの選手とのマッチアップは、簡単な状況ではなかった。それでも危機意識と、積み上げた技術の総和でこの難所を切り抜けた。
「ダイナボアーズの選手は僕のところを狙ってくるだろう、ここで(防御ラインから)飛び出してしまうとステップを切られて抜かれる…と思いました。いい間合いを保ちながら上(半身)にタックルに。内心ドキドキしたんですが、僕が止めへんかったら(トライ後の)ゴールも決められて一気に点差を縮められていたはず。何が何でも止めなあかんという思いでした」
まもなく相手がミスを犯し、こぼれ球を手にしたブラックラムズが反撃に出る。SOの中楠一期の独走トライなどで17-0とリードを広げた。結局、22-7のスコアで今季3勝目を挙げた。順位を12チーム中10位から9位に引き上げた。
シーズン序盤に黒星先行も、秩父宮での第9節では昨季王者の東芝ブレイブルーパス東京に44-45と迫っている。
津村は、「ランキング上位入りへ、やれることをやり続けよう」。昨季は帝京大の一員として大学日本一を達成。今季、連覇記録を4に更新して13度目の頂点に立った名門のOBとあり、どんな相手からも勝利を目指すのを前提とする。
「個人的には、負けるのが当たり前になるのが嫌。何事にも勝つのが大事。一戦、一戦、チャレンジしていきたいです」
奈良の御所実高を経て帝京大に加わり、社会人になるに際しては「一番、最初に声をかけてもらったチームに行こう」。それがブラックラムズだった。
「自分が行きたいと思うより、来てほしいと求めてくれるチームのほうが、(出場の)チャンスがあると思ったんです」
近年、若手を抜擢するクラブにあって、実質1シーズン目の今季はここまで6戦に出場。読み通りだったと言える。
学生時代にフロントローを組んだHOの江良颯、大学選手権の決勝でスクラムを組み合った為房慶次朗は、揃ってクボタスピアーズ船橋・東京ベイに入った。前年度からアーリーエントリー制度を駆使して主力に遇され、為房は日本代表となっている。
出世する同期生の動きについて、津村は「嬉しいし、燃える部分もあります」。ライバルとの切磋琢磨も楽しむ。
ちなみに特技は散髪だ。帝京大の頃に熟練者の先輩から学び、東京郊外の寮内で仲間の側頭部を刈り上げてきた。いまは世田谷区の住宅街にあるブラックラムズのクラブハウスで、バリカンを手にする。