サンゴリアスの河瀬諒介 今季のブレイクは「やるべきことをやり続けた結果」

今季のジャパンラグビーリーグワンにあって、痛快な走りを重ねるひとりが河瀬諒介。東京サントリーサンゴリアス所属の25歳だ。
身長183センチ、体重89キロのサイズで大胆にスペースを切り裂く。最後尾のFBとして開幕から10戦連続で先発し、5トライをマークしてきた。
連戦の疲れを問われても、顔つきは涼しげだ。
「多少はありますけど、大丈夫です」
大阪府出身。第1回ワールドカップに出場した泰治氏の長男で、小学4年から阿倍野ラグビースクールに通い始めた。
父は大阪工大高(現常翔学園)、明大を渡り歩いた一方、息子は東海大仰星高、早大に進んだ。自主的に進路を選択し、行く先々で年代別の代表にピックアップされた。
サンゴリアスには2022年に加入。昨季終了後に転機を迎えた。
6月上旬から2カ月間、ニュージーランドへ留学。現地のワイテマタというクラブに混ざった。言語の壁に苦労しながらWTB、FB、SOで7つの試合に出た。
「日本では考えられない」ような状況からでもオフロードパスが飛んでくる日常に浸った。
平日はオークランド州代表のトレーニングに参加できたのもあり、トレーニングのスタンダードも上げられた。自信をつけた。
帰国後も己を磨いた。担当スタッフとスピード強化のトレーニングメニューを工夫。ステップを切った時にストライドの大きさを保ち、速度が落ちないよう努めた。
積み重ねの成果を、現在のパフォーマンスに繋げる。
「(昨季の映像などから)『ここでスピードが上がればもっとゲイン(突破)できているな』というシーンがあったので、(その課題に)夏合宿くらいから取り組んでいます」
反省も肥やしにする。
昨年12月28日、東京・秩父宮ラグビー場での第2節でリコーブラックラムズ東京に32-33で惜敗した。
河瀬はハットトリックで気を吐いていたが、ラストワンプレーで4度目のフィニッシュを狙ったところを相手のタックルに阻まれた。敵陣ゴール前の左隅で、トライゾーンへ飛び込む寸前にタッチラインの外へ出された。
本来なら逃げ切って仕留めるべきところ、自ら向こうの追いつく間を作ってしまったと悔やんだ。
「(パスをもらった瞬間に)内に切るか、外に行くかで迷った。迷ったらああいうことになると感じましたし、最後に獲りきるのが15番(FB)だと思うので、練習から意識してやっていきたいです」
その後も河瀬はサンゴリアスの15番を守り、豪快なランニングを重ねる。
データ会社による「ディフェンス突破」の回数をリーグトップの「54」とし、本人は飄々と述べる。
「自分がやるべきことをやり続けた結果、ああいう数字が出ただけです」
第10節では、同じFBで日本代表経験者の松島幸太朗がリザーブで復帰。定位置争いが激しくなりそうな中、こう言葉を選んでいた。
「(松島は)チームメイトとして頼もしい。同じ15番を着るかもしれないだけに少しは意識しますが、最終的にメンバーを選ぶのはスタッフ。いままで通り、自分のやるべきことをやっていきたいです」
今年度に就任の小野晃征ヘッドコーチは、「バックスリー(WTB、FB)の違いは、背番号だけ。色々なところに顔を出してボールを触ることが大事で、(自軍のバックスリーは)チームの強みになっている。いい状況でボールを触れるようにしたい」。ブレイクした河瀬については、端側のWTBでの起用も視野に入れる。