各国代表 2025.03.07

SOにンタマックが復帰。アイルランドとの決戦に向けフランス代表が登録メンバー発表。

[ 福本美由紀 ]
SOにンタマックが復帰。アイルランドとの決戦に向けフランス代表が登録メンバー発表。
出場停止処分が明け、スタメンに復帰したSOロマン・ンタマック(Photo/Getty Images)



 前節、フランス代表はイタリアを相手に73-24という歴史的大勝を収めた。このスコアは、フランスのシックスネーションズ史上最多得点であり、49点という点差も、シックスネーションズではフランス代表にとって初めてのことだ。さらに11トライという記録は、フランス代表だけでなく、シックスネーションズ史上最多になる。

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 試合前には、FW7人+BK1人のベンチ構成に「南アフリカのようなFWの肉弾戦のラグビーをするつもりなのか?」と疑問の声も上がったが、FWが圧倒的な力を見せ、縦横無尽にボールを動かすアタッキングラグビーを展開。ファンもメディアも、イングランド戦の敗戦から見事に立ち直ったチームの姿に満足した。

 グランドスラム(全勝優勝)は逃したが、優勝の可能性はまだ残されている。そのためには、今週末のアイルランド戦で勝利が必要だ。できれば4トライ以上、さらに8点以上の点差をつけて勝利したい。

 そのためのメンバーが発表された。イタリア戦から変更点は、10番にロマン・ンタマックが復帰し、イタリア戦で10番を務めたトマ・ラモスが本来のポジションであるFBに入る。ンタマックは第1節のウエールズ戦でレッドカードを受け、出場停止処分を受けていた。

 ンタマックと同じくウエールズ戦でレッドカードを受けたアイルランドのCTBギャリー・リングローズも、規律委員会から3試合の出場停止を言い渡され、タックルの講習を受け2試合に軽減された。しかし、ンタマックがトップ14の試合を出場停止対象試合にカウントされず、イングランド戦、イタリア戦と待たねばならなかったのに対して、リングローズはURCの試合もカウントされ、シックスネーションズの試合は今回のフランス戦には出場できないが、最終節のイタリア戦には出場できることになった。

 この処分について、フランス協会は、会長の署名入りでワールドラグビーにメールを送り、ンタマックとリングローズの処分における扱いの違いについて説明を求めたが、現時点では回答は得られていない。

 また、イタリア戦でメンバーから外されたWTBダミアン・プノーが先発メンバーに復帰。前節のテオ・アティソグベも非の打ち所がないパフォーマンスだったが、アイルランドのWTBジェームズ・ロウとのマッチアップになることから、経験とフィジカルのあるプノーが選ばれたのだろう。

 肺感染症で戦列を離れていたLOエマニュエル・メアフーもリザーブに名を連ねた。メアフーはイングランド戦後、肺に直径5cmの穴が空いていることが判明し、1週間入院していた。先週、トゥールーズで練習を再開し、今週から代表合宿に再合流した。肺の穴はまだ塞がっておらず、現在も抗生物質で治療を続けているが、ラグビーをする上では問題ないと診断されている。

 さらに、イタリア戦でメンバー外だったLOユーゴ・オラドゥも、LO/FL/NO8アレクサンドル・ルマットに代わりベンチに入る。相手のラインアウトを読む能力でオラドゥが選ばれたのだろうと見られている。

 今回もベンチはFW7+BK1だ。この選択についてファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(以下、HC)は、「現在のフランス代表チームの選手のプロフィール、パフォーマンスレベル、FW、BK、HBの組み合わせを考慮した。常にリスクはあるが、アイルランドで最高のパフォーマンスを発揮するためには、これが最適だと考えた。もちろん対戦相手も考慮している。イタリア戦は初めての試みだったが、練習を重ね、この戦略をより磨き上げた」と説明した。

 今回の戦術について質問されると、ガルチエHCは、「どちらのチームがボールを持つかによる。自分たちのラグビーをしたいが、アイルランドはそれを妨げてくる。そのため、試合を左右する、一貫性のあるレフリングが必要だ。何が許容され、何が許容されないのか? 重要な局面となるスクラムのようなセットピースにおいて公平性が必要だ。モール、ラックでのプレーの解釈において公平に評価される必要がある。私たちはゲームのスピードを上げたい。レフリー団と協力しながらプレーする必要がある。2年前のジェームズ・ロウのトライの判定を思い出してほしい。アヴィヴァスタジアムの素晴らしい雰囲気の中で、本来の力を発揮してプレーしたい。アイルランドはグランドスラムで3連覇を目指している。私たちは自分たちの強みとチームの勢いを武器に、優位に試合を進めたい」と述べ、レフリーにプレッシャーをかけた。

「2年前のジェームズ・ロウのトライ」とは、TMOの映像で片足がタッチラインの外の芝生に触れているように見えたが、トライが認められたことを言っている。

 ガルチエHCが記者会見でこのような発言をするのは初めてだ。1月12日のチャンピオンズカップで、レンスター(アイルランド代表選手が多数所属)と対戦したラ・ロシェルのロナン・オガーラHCが、「レンスターの選手のラック周辺での賢さが興味深い。レフリーから笛を吹かれず、注意だけで済む範囲で非常に賢くプレーしている」と発言していた。ラックでの戦いがこの試合で重要になると見ているガルチエHCは、レフリーにアイルランドの選手の巧妙なプレーを見逃さず、厳しくペナルティーを取ってほしいと望んでいるのだろう。

 試合前日には、各チームのコーチがレフリー団とミーティングを行い、ルールの解釈について確認する。ガルチエHCは映像を見せながら、アイルランドのプレーについて意見交換することもできる。もちろん、アイルランドもフランスの気になるプレーをレフリーに伝えることができる。駆け引きはすでに始まっている。

 フランスにはもう一つ気になるエリアがある。ディフェンスだ。イングランド戦、イタリア戦と、ディフェンスの中央を突破され、簡単にトライを奪われている。

「個人的なミスが重なり、イタリアにスペースを開けてしまった。今後の対戦相手にヒントを与えることになる。対策を見つけなければならない」と、ガルチエHCはイタリア戦の後の会見で述べていた。この試合でヨラム・モエファナとピエール=ルイ・バラシの両CTBの連携が指摘されたが、この2人は今大会で初めてペアを組んだ。改善策は講じられているはずだ。

 さらに、タックルのテクニックだけでなく、敵の動きを読む能力でも定評があるンタマックが加わることでディフェンスが安定することが期待される。

「アイルランド戦が今大会の最も大きな山になると見ていた。ベストな試合をしなければならない」とキャプテンのSHアントワンヌ・デュポンも意気込みを見せる。

 イタリア戦で大勝した勢いに乗り、フランスは万全の準備を整えた。レフリーへのプレッシャーもかけ、ベストな状態で自分たちのラグビーをしようとしている。

 一方、長年アイルランド代表を支えてきたPRキアン・ヒーリー、FLピーター・オマーニー、SHコナー・マレーが代表引退を発表しており、この試合が彼らのアヴィヴァスタジアムでの最後の試合になる。

 きっとチームメイトは彼らのために最高の餞を送ろうと誓っているだろう。今大会期待の大一番の試合だ。

フランス代表チーム アイルランド戦メンバー

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