国内 2025.02.21

ふたつ隣からの金言にも刺激。ブルーレヴズで台頭の山下憲太は「引き出しが増えている」

[ 向 風見也 ]
ふたつ隣からの金言にも刺激。ブルーレヴズで台頭の山下憲太は「引き出しが増えている」
山下憲太[静岡BR]©︎JRLO

 学びがある。競争がある。所属する静岡ブルーレヴズの環境に、山下憲太は背中を押される。

 昨年12月に開幕したジャパンラグビーリーグワンの新シーズンにあって、ここまで全8試合に先発。スクラム最前列の左PRとして、持ち前の機動力で渋く光る。
 
 身長177センチ、体重112キロの26歳。長崎の海星高を経て入った法大では、走者をなぎ倒すFLとして活躍していた。

 現職においても突進、タックル、接点での下働きといったフィールドプレーを得意とする。その特徴を、就任2シーズン目の藤井雄一郎監督にも買われているようだ。

「フィールドで周りと差をつけないと、試合には出られないと思っています。スクラムも1番になり、タックル、ボールキャリーを目立たないと」

 いまの位置へ転じたのは、2021年加入のブルーレヴズでのことだ。

 一時は先頭中央のHOへ挑んでいたが、職責にあたるラインアウトの投球で苦労。その左隣に活路を見出したのが、正解だった。

「昨季、1番の選手に怪我が続いていた時の練習試合で僕が(その位置で)先発。スクラムを組んだ時に自分で合っていると思いましたし、その試合が楽しかったんです。その後、自分から(本格的なコンバートを)お願いしました」

 ブルーレヴズは、前身のヤマハ発動機ジュピロ時代から独自のスクラムにこだわる。低重心で小さくまとまる型はやがて日本のオリジナルとなった。

 ヤマハでその領域を教えてきた長谷川慎氏は、‘16年秋からの約7年間、日本代表のアシスタントコーチを務めた。

 その間もクラブは、「慎さん」こと長谷川氏のイズムを継承した。

 ‘23年秋に再入閣した長谷川氏、さらには長谷川氏のもとで右PRとして開眼した田村義和アシスタントコーチのもと、タフな塊を構築する。

 その舞台で山下が得られるのは、年長者の教えとライバルからの刺激だ。

 セッションの合間に、長年レギュラーを張ってきたHOの日野剛志、右PRの伊藤平一郎から助言を授かるのが嬉しい。特に伊藤には、隣の隣で組んでいるのに自分のずれに気づいてもらえるという。
 
 ある時、ヒットの感触に問題があったからか、伊藤からこう看破されたようだ。

「丹田、入ってないんじゃない?」

 ブルーレヴズの組み方においては、へそから下あたりの「丹田」に力を込めるのが是とされている。伊藤は自分たちにとっての正解が明確にわかるから、違和感があった場合の解決策もすぐに思いつくのだろう。

 左PRには強力なライバルがいる。昨年5月までのシーズンで出番を増やした茂原隆由は、そのまま日本代表デビューも果たしていた。

 猛者がぶつかり合うスクラム練習には、ゲームさながらの負荷がある山下は言う。

「レヴズ同士の練習で組むスクラムが一番、きついです。(スクラムで)正々堂々やり合う。それが一番、練習になる」

 苛烈のバトルを乗り越えてファーストジャージィを着れば、公式戦ならではの学びに触れられる。

 相手によっての組み方の違い、押すタイミングや体勢次第で反則を取られるリスクについて皮膚感覚で学ぶ。それを次の1本、また次の1本へと反映させてゆく。

「全てが全て(のチームが)レヴズのように組むわけではない。色んなチームとやり合うことで、引き出しが増えている実感があります。例えば、(圧を)かけてこない相手には、(反則のリスクを考えて)僕たちもかけない」

 チームは6勝2敗で12チーム中4位。攻めの破壊力が増したのもあり、8位に終わった前年度よりも好結果を残しつつある。

 次節は2月22日。東京・スピアーズえどりくフィールドで迎え撃つのは、ひとつうえの3位にあたるクボタスピアーズ船橋・東京ベイだ。向こうはスターターのHOに、南アフリカ代表76キャップで大柄なマルコム・マークスを配してきた。

 それに対し、山下ら青のパックは本来の力を出せるか。ぶつかる直前の予備動作から注目される。

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