今季スピアーズでデビュー。デーヴィッド・ヴァンジーランド、進歩の裏側。
渋く光る。
デーヴィッド・ヴァンジーランド、まもなく25歳だ。
ジャパンラグビーリーグワン1部で一昨季王者となったクボタスピアーズ船橋・東京ベイへ2023年に加わり、昨年12月からのシーズンで公式戦デビュー。第6節まで4戦連続でスターターを担った。
最近では2メートル超級のひしめくLOにあって、身長196センチ、体重116キロのサイズで効果的なタックルを重ねる。攻めてもここまで2トライをマーク。敵陣ゴール前で球をもらう瞬間の身のこなしが柔らかい。ラインアウトでもしなやかにジャンプする。
前所属先は関東大学リーグ戦の拓大とあり、平易な日本語で声明を伝えられる。
「チームメイトと仲がいい。そして、いいプレーができる!」
オーストラリア出身だ。「日本のカルチャー、食べ物」に興味を持ち、’19年にこの国へ来ていた。ちなみに、好きな寿司のネタは「マグロ」である。
大学シーンではチームが1、2部を行き来していたとあり、知名度には限りがあったか。それでもスピアーズは、このオージーの潜在能力を見出していた。
そもそも昨季まで採用を務めた前川泰慶ゼネラルマネージャーは、中長期的な強化計画に沿って「セットプレー(ラインアウトなど)の核になってくれる、勤勉で頭のいい選手」を探していた。自軍のLOではルアン・ボタ、デーヴィッド・ブルブリングといった2メートル超の南アフリカ出身コンビが30歳を超えていた。
ここで白羽の矢が立ったのが、ヴァンジーランドだったのだ。
業界屈指のスカウトだった前川は、拓大のことも厳しく鍛えるチームとして信頼していた。関西弁でジョーク交じりに述べる。
「(ヴァンジーランドは)あまり目立つプレーはしないけれど、よくなるんじゃないかなと。それに男前で、王子様。うちにはいいひんなぁと思って」
受け入れから2年弱の時を経て、その成長ぶりに前川が目を細める。
「勤勉なところは変わらず、身体つき、ラグビーに取り組む姿勢が変わりました。南アのLOたちと練習して、身体をぶつけるところが足りないと自分でわかって(トレーニングに)取り組んでいましたから」
当の本人も、「おじさんのプレーヤーから、勉強しています」。オーストラリア代表だったSOのバーナード・フォーリーやボタ、ブルブリングらから「働き続けよう。周りとコネクションを取り続けよう」と助言される。組織内における自分の活かし方を、皮膚感覚で掴み取る。
今季から日本代表資格のある「カテゴリA」に区分され、自身も将来のジャパン入りを目指している。
チームは現在3勝1敗1分けで12チーム中4位。8日には敵地の神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で、同3位の横浜キヤノンイーグルスに挑む。ヴァンジーランドはこの試合でも先発する。