リーチ マイケルの家に招待? 帝京大のカイサ・ダウナカマカマ、激しさで頂点へ。
我慢ができる。帝京大ラグビー部2年のカイサ・ダウナカマカマは、接戦のさなかに己に言い聞かせる。
「マインドセットを強気に持つ。ポイントに関係なく、自分たちのラグビーをしっかりやる」
1月2日は東京・国立競技場で、4連覇が期待される大学選手権の準決勝に出ていた。対戦校は明大。同じ関東大学対抗戦A加盟のライバルだ。
帝京大は序盤、向こうのスペースを突くアタックに苦しみ何度も自陣ゴール前まで攻め込まれた。しかし14-12でハーフタイムを迎えた。
象徴的なのは22分頃のシーンだ。自陣ゴール前右で相手のラインアウトからボールを受けた選手へ、LOのダウナカマカマが強烈なタックルをお見舞いした。
それだけではない。端側の走者が抜け出そうとするところへも、赤いジャージィの4番が反応した。ランナーのひざ元へ鈍い音を鳴らしてぶつかり、タッチラインの外へなぎ倒した。
身長182センチ、体重120キロ。破壊力を示した。九州で覚えた言葉で振り返る。
「外(のスペース)を見たら、全然(帝京大の選手が)おらんかった。これは、『行かなあかん』と思って、行きました」
重要局面でファインプレーを披露したフィジアンは、19-12としていた後半8分には貴重なトライを挙げた。ラック近辺の楕円球を拾い上げるや、急加速。ゴールラインを割った。直後のゴール成功で26-12とした。34-26でノーサイドを迎えた。
「(自身の得点は)チームのおかげです」
他者の思いを受けて人生を切り開いてきた。
まず、近所の友達に「お前はでかすぎるから、やれ」と競技開始を促されたのは12歳の頃だ。
「そして、初めての試合でトライを決めて、そこからラグビーが好きになりました」
ラウトカアーンドラサンガムスクール、パ・プロヴィンシャル高を経て、2020年に来日したのは親の意向から。最初に進学する大分東明高にスカウトされた際はあまり前向きではなかったが、「お父さん、お母さんに『これはチャンスだから』」と背中を押された。
いま帝京大にいることは、想定外の結果と言える。
高校時代、もともと進学が有力視された都内の大学のゲームを見学したことがあった。その次の日には、東京郊外にある帝京大の試合会場へも出かけた。すると現地で、多くのファンに囲まれながらプレーの細部にこだわり戦う部員の姿によい印象を抱いた。
「あとは、自分は、優勝がしたい。帝京大しかない! と」
全国屈指の強豪では2年目となる今年度から主力を張り、突進役、タックラーとして奮闘する。さらには同僚の4年生でニュージーランド留学をしていた小村真也に「僕が出会ってきた外国人のなかで一番、日本語がうまい」と評される。本人はこうだ。
「いや、そんなことないです。まだ、勉強しています!」
アスリートとして目指すのは、日本代表だ。
「なぜかというと、自分の尊敬する人がリーチ マイケルだから。あの人みたいになりたいです」
フィジーにルーツを持ち、日本の札幌山の手高校、東海大に通った現役ジャパン戦士をロールモデルにする。本人とは面識もあり、「俺の家に来い」と優しく接してくれたと笑う。
開催中の選手権については、「応援の声が、嬉しい。対抗戦とは全然(雰囲気が)違う。緊張感、自信をしっかり持ってやりたいです」。13日、東京・秩父宮ラグビー場での決勝に臨む。対抗戦で敗れた早大に挑み、勝てば4連覇を達成する。