国内 2024.12.19

タフに這い上がって日本代表 岡部崇人、イーグルス優勝へ「プレッシャーも楽しんで」

[ 向 風見也 ]
タフに這い上がって日本代表 岡部崇人、イーグルス優勝へ「プレッシャーも楽しんで」
PR岡部崇人[横浜キヤノンイーグルス](撮影:大泉謙也)

 見事! 12位のチームの選手がジャパンになった!

 横浜キヤノンイーグルスの沢木敬介監督が、その旨をジョーク交じりに言う。視線の先には岡部崇人がいた。笑顔になった。

 現体制が発足する直前の2018年度は旧トップリーグで16チーム中12位も、直近のリーグワンでは2季連続で4強入りを果たしている。

 クラブが躍進するなか自らの存在感も高めてきた29歳は、今年、日本代表として初キャップを得た。その歩みが、指揮官の感嘆を呼ぶ。

 10月中旬から国内外を転戦した秋のキャンペーンでは、持ち場の左PRで全4試合に先発した。

 本拠地に戻って所属先の練習に合流していた12月下旬、秋の戦いをこう振り返った。

「いい経験になった。疲れたかと言われれば、それはそうなんですけど、自分の経験値になったという思いのほうが大きいです。まったく違う環境でラグビーをすることで、色々な選手の考え方、チームの戦術、スクラムでの引き出しの部分が多くなったと感じます」

 身長180センチ、体重105キロ。タックルにタックルを重ねる勤勉さと突破力のほか、最前列で組むスクラムでも進歩を示す。フランス代表戦では大型なパックへ対抗。イングランド代表との最終戦でやや後手を踏むまでは、順調な足取りを匂わせたような。

その状況を、当事者のひとりである岡部が出身地の言葉で掘り下げる。取り組んできたことが本番で発揮できたかを、その都度、可視化していたようだ。

「自分のやることに集中できた時はいいスクラムが組めるし、色んな要因でそれができんかった時は『ここがあかんかった』と、あかんかったところがわかるようになった。一貫して、やることをやっている」

 旅先ではフランス代表、イングランド代表に敵地で大敗した。現地のトレーニングも厳しい設定のもとおこなわれていた。若手主体のスコッドにとっては試練ばかりだったのではと想起させるが、そもそも岡部は、タフな状況が苦手ではない。

 奈良県出身。大阪の上宮中でこの競技を始め、全国的に無名な上宮高へ内部進学しながら関西大学ラグビーAリーグの関西学大のスポーツ推薦をもらう。5年間に及ぶ大学生活のさなか、ポジションを当時のFW第3列から最前列中央のHOに移してイーグルスの内定を掴んだ。

 社会人になってからも左PRへコンバートしたり、沢木監督の「100パーセントでやれ」という叱咤激励へ応えたりと、難関を乗り越えていまがある。

 10代から注目されてきたアスリートとは、異なる道を歩んでいる。

「チャレンジ的なことには慣れている、ではないですが、楽しんでできる性格なのかなと、自分では思っています」

 11月下旬までの欧州遠征から帰国すると、最初の2日間は北陸地方の温泉宿で心身共にリフレッシュした。雪は、降っていなかったという。

 その翌日から約1週間は都内のクラブハウスで、トレーナーの支えによる身体のケア、低重量でのウェイトトレーニング、走り込みと、段階的に動きのペースを上げる。同時並行で、組織の動きの変更点について同僚へヒアリングしてきた。

 果たして合流した。イーグルスの練習に加わって久しい折、こう宣言する。

「代表に入ったことで、皆からの見る目も変わるところもある。『何でこいつが代表やねん』と思われないように。プレッシャーも、楽しんで試合に臨めるかなと…。チームの目標に対して自分の役割をやり切ることが自分に与えられていること。派手なことはできないですけど、求められているブレイクダウン、スクラム、モール、タックル、運動量…それを遂行し続ける。怪我は、したくないです」

 ここでの「目標」とは、史上初の優勝である。イーグルスは22日、神奈川・日産スタジアムで昨季王者の東芝ブレイブルーパス東京と初戦をおこなう。

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