ラグビー日本代表 タフなツアーで取る「バランス」
自分たちのやっていることは正しいのだろうか。大敗続きの只中に選手がそう疑問を抱かないよう、ラグビー日本代表の首脳陣は心を砕いているという。
エディー・ジョーンズヘッドコーチの腹心、ニール・ハットリー コーチングコーディネーターは強調する。
「(収穫と課題を)バランスよく見せることで、選手たちに自分たちのプランを信じさせています」
10月26日に国内でニュージーランド代表に19-64で、現地時間11月9日には敵地でフランス代表に12-52と屈している。その過程を踏まえ、こう続けた。
「私たち自身、ここ2試合のスコアにはがっかりしています。スコア以上のパフォーマンスが発揮できるのにというもどかしさがある。うまくいかない部分を修正する必要があるのは、わかっています。ただ、(振り返りの際は)我々のよかったプレー、悪かったプレーを選手たちにバランスをよく見せていく。フランス代表でのトライは、どの相手がフランス代表から奪ったトライよりもベストだと伝えました。さかのぼってニュージーランド代表戦でも最初の20分はよかった(接戦だった)ため、その時間をどう伸ばすかというフォーカスの仕方もします」
今年約9年ぶりに復職のジョーンズは「超速ラグビー」を提唱。体格に勝る強豪国に集団的な速度で上回ろうとする。
攻めては、パスをもらう前の選手が攻防の境界線へ果敢に仕掛けるのを目指す。総じて、素早い立ち上がりとポジショニングを是とする。
いまは攻撃中の接点、攻守逆転後の防御を課題にしながら、攻めの連携が機能したシーンに光を見出す。
2027年のワールドカップオーストラリア大会を見据え、ジャパンは前年度と比べスコッドを若返らせている。フランス代表戦では向こうが常連組を多く揃えたのに対し、日本代表では登録メンバー23名中10名のキャップ(代表戦出場数)が1けた台だった。
‘19年の自国でのワールドカップで初めて決勝トーナメント行きを果たしたジャパンにとって、成長の途中段階で上位国とぶつかることは痛みを伴うか。ハットリーは説く。
「ニュージーランド代表、フランス代表のような大きなチームとプレーすると、彼我のギャップを認識できます。それによって、そのギャップをいかに埋めるかを考えられます。我々はジャパンのようにプレーする。アタックではスピーディー、クリエイティブに、ディフェンスではアグレッシブに戦います。そんな中、若い選手が(強豪との)ギャップを知ることは大きな学びとなります」
同16日にはフランス・シャンベリーでウルグアイ代表とぶつかる。今度のツアーにおいて唯一、戦前の世界ランクで上回ったまま臨むカードだ。
ハットリーが話したのは、前日練習に伴う会見時である。
欧州遠征中の日本代表は、国内メディアがアクセスできるオンライン取材をチーム事情により日本時間の深夜におこなうことが多い。
ジョーンズが昨年まで指揮を執ってきたイングランド代表、オーストラリア代表でも入閣歴のあるハットリーは、「この時間に起きていただきありがとうございます。チームの情報を日本に伝えていただけることに感謝しています」と繰り返した。