日本代表・藤原忍は「本当に勝てる」。スタイル貫きオールブラックスを倒す。
自覚が芽生えている。
今年から約9年ぶりにエディー・ジョーンズヘッドコーチが率いているラグビー日本代表にあって、6、7月の活動で初選出されたひとりが藤原忍だ。
8月下旬からのパシフィックネーションズカップ(PNC)では全試合に先発した。務めるSHは攻めの起点だ。指揮官の謳う『超速ラグビー』の鍵を握る存在である。
「(仲間を)リードしないといけない気持ちはすごく出てきています。それを練習中から意識してやっています。エディーさんからも『しっかりコミュニケーションを取って、アタックでもディフェンスでもオーガナイズ(統率)しろ』と言われているので」
PNCは準優勝に終わった。決勝では、前回のワールドカップで8強入りのフィジー代表に17-41と屈した。
序盤こそ複層的な陣形でアタックまたアタックも、後半15分まで10-10とロースコア。徐々に突き放された。敗戦を受け、ゲームコントロールについて考え直した。
放つ方向によってはエネルギーをセーブしながら前進できるキックを、より意図的に使いたいという。
「攻めるところがなく、仕方なく蹴るというケースが多かった。どこかで9番(SH)、10番(SO)で切り替え、より効果的なキックを蹴って、自分たちでプレッシャーをかけたい」
技術も見直している。ジョーンズに助言され、考えを改めることでパスの精度を高める。
地面の球を拾うジェスチャーをしながら、こう解説する。
「最初は『何かをしないとだめだ』とフォーカス(ポイント)を一杯、考えながらやっていました。ただ、エディーさんに『それでは、自分にプレッシャーかかる。(意識するのは)2~3個。多すぎるとフォーカスがずれる。(例えば)とりあえずは(目の前の)ボールに集中する…ディフェンスをオーガナイズする…と(焦点を)ショートに』とレビューをもらって。多少は(後ろの陣形を)見ますけど、(パスをする際の意識の)8割くらいはボールに集中します」
ジョーンズには、世界で戦うSHとしての心構えも教わる。
「9番は、9人目のFWみたいに強気なプレーをしてくれ…と」
10月26日、神奈川・日産スタジアムでニュージーランド代表とぶつかる。
身長171センチ、体重76キロの25歳は、負けん気の塊だ。オールブラックスの異名をとるワールドカップ優勝経験国をも、沈めるつもりで臨む。
「自分の役割を理解して、チームのやることを明確にして、皆を鼓舞して、強みを出す。本当に勝てるんで、勝ちに行きたいです」
混とん状態からの速攻という向こうのお家芸を封じるべく、組織防御でも圧をかけたいとも述べる。