我慢が白星にならず。日本代表、ジョージア代表に惜敗後の声。
レスリング大国からやってきたジョージア代表はスクラム、タックル、モールで腕力、粘り腰を示した。
極端な荒っぽさが反則となる向きもあったものの、それでも日本代表は及ばなかった。
こちらも要所で笛とエラーに泣き、もらったカードは相手を上回る2枚。そのうちひとつはレッドカードだった。おかげでほとんどの時間帯で数的不利を強いられ、23-25で勝ちを逃した。戦前に「12」「14」だった世界ランクはまもなくひっくり返された。
我慢強さなら示した。
20分、それまで肉弾戦で奮闘の下川甲嗣が接点で相手をひねり上げるようにして一時退室し、まもなく一発退場に格上げされるも、64分には23-18と一時的に勝ち越せた。
歓喜のスコアの呼び水となったのは、その4分前の動き。中盤での連続攻撃だ。
狭い区画のゲインライン上へレシーバーが駆け込んだり、横幅の広いライン上に立つおとり役が後ろ側のランナーの走路を作ったり。エディー・ジョーンズヘッドコーチの謳う「超速ラグビー」のコンセプトをにじませた。
今季初代表ながらすでにリーダー格の原田衛は言う。
「全員がオプションになって、速く動いて、スペースにボールを運ぶ、みたいなイメージ。でも、それをむやみやたらにやるわけじゃなく、全員が連携を取って、インテント(強度)を持ってアタックする」
向こうの得意なスクラムでも踏ん張った。試合中盤からFLの位置にWTBの選手が入る緊急事態にも、HOの原田曰く「(FWだけでの)8人で組むのと変わらないくらいいいセットアップ(予備動作)、ヒット(衝突)ができた」。前半には、この領域でペナルティーキックを獲れた。
一見するとジョージア代表がプッシュしたかに見えた1本でも、レフリーには日本代表が正当に組んでいるように映ったようだ。原田は続ける。
「僕らのヒットがよく、レフリーに判断しやすいピクチャー(現象)を見せられていた」
薄氷を踏みながら勝ち筋を手繰った末、今回はわずかに及ばなかったわけだ。
序盤を振り返れば、7-0と先制後に中盤で攻めあぐねた。
5分には連続アタックのさなかに走者が孤立。倒れてボールを手離さない反則でピンチを招き、9分には7-3とされた。
12分までの間は、高く蹴り上げたキックを複数名で追いかけるさかなに手痛いペナルティーを取られた。7-6とさらに詰められる。
球の運び方次第で防げたかもしれない6失点の裏側について、SHの齋藤直人が述懐する。
「前半20分くらいまでそこ(パスかキックか)の判断がよくなくて。やっていて、ずっと横に(ボールを)動かしているイメージでした。その辺は、柔軟にやらないと」
そして23-18とした直後には、自軍スクラムで笛を吹かれた。
しばらく向こうのモールと縦突進の応酬、こちらの陣地脱出のエラーが重なった。
72分にLOで途中出場のサライナ・ワクァがイエローカードをもらい、74分には23-25と逆転された。
直後のリスタートで再び上回るきっかけを作りたかったが、自軍キックオフは直接、タッチラインの外へ流れた。
次のプレーはジョージア代表ボールのスクラム。日本代表は押し込まれた。
局所的には首尾よく対処できた日本代表のFW陣だったが、13人で戦うこととなった終盤には「きつかったです」とある主軸選手。特にワクァの離脱、さらにはワーナー・ディアンズの途中交代により、支柱役となるLOの本職選手が不在だったのがスクラムに響いたようだ。
攻守に奮闘のディアンズは、65分に抜けていた。
タクトを振るったジョーンズは「疲れがあった。チャージ(充電)ステーションをさがさなくてはならなかった」と説明していた。ディアンズ本人はこうだ。
「いつも、もっと試合をしたいです。ハードな練習をやってきているから、80分(フルで)出られないのは悔しい。代わった時は、もうちょっと出たいという気持ちになりますね」
6月6日に始動した第2次ジョーンズ政権は、昨秋までのスコッドから大幅に選手を入れ替えながらも加速度的に組織を束ねた。7月6日には、非テストマッチのマオリ・オールブラックス戦で現体制初勝利を飾っていた。
スタイルの涵養には手応えを掴んでいる。ただ、そのスタイルを安定的に白星に繋げるにはやや伸びしろを残している。
35歳のリーチ マイケル主将は「14人でどう戦うか、14人の時のメンタリティをどうするか(を学べた)。若いチームには財産」と前向きも、「『経験、経験(貴重なレッスンだった)』と話していますけど、負けは受け止めています」。LOで先発して一時的に本職のFLに回り、最後はLOに戻って黒星を喫し、こう、総括した。
「タイトなゲームでどう勝つかを考えてやらないと。ここぞという時に超速ラグビーをどれだけできるかが大事です」
21日には、この船頭役の地元たる札幌ドームでイタリア代表とぶつかる。今年の6か国対抗における台風の目を、自分たちの土俵に引きずり込みたい。