イングランド代表の前線を支えるベテランPRコンビ。マーラー&コール。
W杯を基準とする4年サイクルの初年度となる2024年は、どの国の代表チームも次世代を担う若手選手を数多く招集している。もちろんイングランドも’27年のW杯オーストラリア大会を目指すエキサイティングな若手が、今夏の遠征に数多く招集された。
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そうした中、’10年の代表デビュー以来112キャップを積み重ね、’11年から’15年、’19年、’23年とW杯4大会に主力として出場した37歳の右PR、ダン・コールもツアーメンバーに名を連ねた。そしてそのコールと日本遠征中のホテルで相部屋になったのは、左PRとしてコンビを組むジョー・マーラーだ。
現在33歳のマーラーは、’12年の代表デビュー以来93キャップを積み重ねる活躍を続けてきた。こちらも’15年の自国開催のW杯から’19年、’23年大会と、これまで3度のW杯を経験している。
コールとともにインタビューに応じたマーラーは、「これが俺たちの最後の代表遠征だよな」と語った。
メンタルヘルスや家族との時間を優先するために代表遠征を辞退したこともあるマーラーだが、メディアを前にした大胆な放言や試合での闘争心をむき出しにしたプレーなどで話題となることも多く、引退後はメディア関係の仕事で十分やっていけるだろう。対照的にコールは控えめで目立とうとするタイプではないように映るが、2人は’19年W杯でも記者会見にそろって登壇するなど、ネタとしてセットで扱われることがしばしばある。合宿の様子などを伝えるイングランド協会のYouTubeメディアでは漫才コンビのような立ち位置で、多くのファンから愛されているベテランPRペアだ。
‘09年にハーレクインズでプロデビューしたマーラーは現在も同クラブに所属しており、’07年にレスター・タイガースでプロデビューしたコールも同様だ。長年主力PRとしてスクラムを支えてきた両選手は、クラブのファンたちからも愛されている。
クラブの試合になれば双方とも相手PRを抑えるところでは抑え、攻めるところでは容赦なく攻めたてる。長年代表の座をキープする実力派だけにクラブの試合では抜き出たパフォーマンスを発揮し続けており、プレミアリーグのハーレクインズ対レスター戦では、スクラムでのこの2人の激しい戦いを楽しみにする通なファンも少なくない。
今夏の遠征では、マーラーのハーレクインズの後輩であるフィン・バクスター(22歳)、コールのレスターの後輩であるジョー・ヘイズ(25歳)や、今季プレミアリーグの準決勝まで進んだセール・シャークスのべヴァン・ロッド(23歳)など、次世代のPRが代表入りを果たした。マーラーが言うように、今夏の遠征は2人で参加する最後の代表遠征になるかもしれない。
ただ、PR陣の顔ぶれを見ればベテランと若手のみで、中堅選手が欠けている。現在31歳で66キャップと脂の乗ったカイル・シンクラーは、来季からフランスTOP14への移籍を発表。イングランドは例外的な事情がない限り国外のクラブに所属する選手は代表に選ばないというポリシーを維持しており、みずから代表を辞退する形になった。
また現在29歳で58キャップとこれまた脂の乗ったPRであるエリス・ゲンジも、負傷により今夏のツアーを欠場。才能と経験を持ったベテランPR2人の代表引退時期は、そうしたチームの事情にも左右されそうだ。