【フランスTOP14ファイナル】トゥールーズが23度目のV! 決勝初進出のボルドーを圧倒。
59-3。クラブ史上初の決勝に挑んだボルドーをトップ14決勝戦史上最大の点差で打ちのめして、トゥールーズが23度目のブレニュス盾(優勝盾)を掲げた。
トップ14は昨年に引き続き2連覇。5月には欧州チャンピオンズカップも制覇し、3年ぶりの2冠達成となった。今の世代の選手にとっては、2019年から中止になった2020年を除く5シーズンでトップ14が4度目、チャンピオンズカップは2度目の優勝で、合計6つのタイトルを獲得した。
今年はシーズンを通じて、トゥールーズが群を抜いていたことは誰の目にも明らかだった。この試合もトゥールーズの優勢を多くの人が予想していたが、誰がこの点差を予想できただろうか? 完膚なきまでとはまさにこのことか。
決勝戦に臨むにあたって切り札を切ってきたのはボルドーだった。
6月8日におこなわれたレギュラーシーズン最終節のオヨナ戦で太ももを傷め、「今季はもうプレーできない」と自身でコメントを発表していたSOマチュー・ジャリベール、さらに準々決勝のラシン92戦で右肩を脱臼し、決勝の2日前もまだサポーターで肩を吊っている状態だったPRベン・タメイフナをスターティングメンバーに起用した。怪我の回復具合やフィットネスの点で不安はあったが、トゥールーズという巨大な怪物と戦うためにチームの主軸を戦列復帰させたのだ。
今年の決勝の会場は、マルセイユのスタッド・ヴェロドローム。例年のスタッド・ド・フランスの8万人には及ばないが、観客動員数66,760を記録し、これまでの最多動員数だったサッカーのオランピック・マルセイユ対パリ・サンジェルマンの66,046を上回った。チケットが発売されたのは11月。その時点でトゥールーズのサポーターは、すでに彼らのチームが決勝まで行くことを信じていたのだろう。会場では赤×黒のトゥールーズカラーが多く見られた。
試合は、開始7分でトゥールーズのSHアントワンヌ・デュポンが相手ゴール前のラックからボールを持ち出し、ボルドーディフェンスに阻まれながらもインゴールにボールを置いて先制点を奪った。FBトマ・ラモスのコンバージョンも決まりスコアは7-0。さらにこの一連のプレーの中でボルドーのNO8テビタ・タタフがハイタックルでシンビンとなる。
その後、ボルドーのSHマキシム・リュキュがPGを決めて3点返すが、これがボルドーの最初で最後の得点になる(7-3)。
トゥールーズもPGで3点追加した後(10-3)、ボルドー陣ゴール前のラックからデュポンが鋭いパスを出し、タッチライン際で構えていたHOペアト・モヴァカの手に収まり、モヴァカはタックルを受けながらもWTBフアン=クルス・マリーアに後押しされながらインゴールに飛び込んだ(15-3)。
準々決勝から中5日で試合を重ねてきたボルドーの選手に疲れが見えてきた。特にジャリベールとタメイフナが苦しそうだ。
そして4分後にSNSで映像が駆け巡っているデュポンのトライが生まれる。ラインアウトからサインプレーで巧みに細かくパスをつなぎ、デュポンに渡る。前で構えていたリュキュをミニパントで抜き去り、自らボールをキャッチしてそのままインゴールに飛び込んだ。コンバージョンも決まり22-3とした。
ボルドーもボールを持つが、トゥールーズの速く激しいディフェンスに阻まれ、相手陣22メートルラインを越えることができず、ミスで陣地を戻される。
41分にボルドーゴール前でボルドーのラインアウトからこぼれたボールにモヴァカが素早く反応してキャッチ、そのままインゴールに飛び込むが、これはグラウンディングが確認できずノートライとなり、前半を終えた。
「もっとボールを持って僕たちのラグビーをしなければ」とハーフタイムにボルドーのキャプテンであるリュキュが現地中継局のマイクに向かって話したが、コンタクトで食い込まれ、ラックでは遅れをとっている状態では困難だ。
後半開始後はボルドーも攻め上がろうと奮闘する。タタフが中央付近のモールからボールを持って抜け出し、ようやく敵陣22メートル内に入るが、その後のパスが繋がらず戻されてしまう。
そしてボルドーにとって悪夢の時間帯がやってくる。
64分、トゥールーズはデュポンからパスを受け取ったSOロマン・ンタマッックがディフェンスを突破、キックで転がし内についていたラモスが拾ってまず1本。
68分、モールで押し込んでHOジュリアン・マルシャンが続けて1本。
71分、ボルドーのパスを、今季大きく成長して決勝メンバーに選ばれた22歳のLOクレマン・ヴェルジェがインターセプト。昨年のU20世界チャンピオンで、今季はプロチームで連戦を経験しすっかりお馴染みのメンバーになったCTBポール・コストが繋ぐ。昨年12月に加入したばかりのスコットランド代表FBブレア・キングホーンがインゴールまで持ち込んでまた1本。
75分、15人がシャンパンの泡のように続々と湧き上がってきてパスを繋ぎ、最後にラモスが飛び込んでさらに1本。
79分、デュポンの不在を忘れさせるほどに今季成長したSHポール・グラウが素早くラックからボールを出し、スペイン代表で22歳の期待の右PRジョエル・メルクラーが駆け込んで受け取る。マルシャン、グラウ、LOチボー・フラマンと繋ぎ、ラックから再びマルシャンが持ち出してアメリカ代表PRデヴィッド・アイヌウがインゴールで押さえてまたさらに1本。
リュキュの目にはすで潤んでいた。「最後は崩れてしまった。優勝盾が遠ざかっていくのが見えた。そして諦めてしまった。諦めるなんて僕たちのマインドセットじゃない。それが悔しかった」と試合後に語っている。
ボルドーのキックオフで試合が再開される。ホーンが鳴る。スコアは54-3。ボルドーは最後の力を振り絞り敵陣に攻め込むが、ボールを落としてトゥールーズの手に入る。トゥールーズはスタンドに蹴り出して試合終了にはせず、そこからボールを回してきた。
モヴァカがインゴールからディフェンスを抜いて駆け上がり、後ろから踊り出てきたマルシャンにパス。グラウを介してWTBアンジュ・カプオッゾの手に渡る。イタリアのフェラーリが一気に加速する。ボルドーのWTBダミアン・プノーに追いつかれるが、うまくかわしてインゴールに飛び込みとどめの一撃を刺した。
FWもBKも、先発メンバーもベンチメンバーも、若手も中堅も混ざり合って、フィールドにいる15人全員でトータルラグビーを演じた。これがトゥールーズの強さだ。
「準決勝のラ・ロシェル戦がよくなかったから、それを忘れさせるような最上級の『僕たちのラグビー』をしたかった」と試合後にモヴァカが言っているように、彼らは、彼ら自身の限界と戦っている。どこまで自分たちのラグビーの完成度を上げられるかにチャレンジしている。
「FWがとても素晴らしい試合をした。FWで圧倒できれば、うちのBKのレベルを持ってすればいい試合ができる。過程と内容が大切だが、試合に勝てればさらに良い。水曜日(試合2日前)から選手たちにはエネルギーが満ち溢れていいたし、彼らの決意が感じられた」と、トゥールーズのユーゴ・モラ ヘッドコーチ(以下、HC)は試合後の記者会見で笑みを見せた。
一方、敗れたボルドーのヤニック・ブリュHCは、「全てにおいてエネルギーに欠けていた。簡単にボールを敵に渡し、タックルミスをし、イエローカードもあった。全てにおいて遅れをとり、全てのコンタクトで食い込まれた。早い段階で、我々は招かれざる客だと分かった。トゥールーズ相手に腕相撲で劣勢を見せると、拳を握りつぶされてしまう。それが今夜起こったことだ」と試合を振り返った。
しかし、忘れてはいけない。ボルドーは発展途上の若いチームなのだ。2006年にボルドーのクラブとベーグルのクラブが結びついてユニオン・ボルドー・ベーグルとなり、2部リーグからスタートした。2011年にトップ14に昇格し、2020-2021シーズンからは毎年プレーオフにコマを進め、これまで超えられずにいた準決勝の壁を今年は超えることができた。
「今季、多くの目標を達成した。今後につながる土台を築くことができた。来年はさらに良くなる。その後もさらに良くなっていく」とブリュHCは続け、最後に「もしかしたら、今回は予定より早く決勝という段階に到達してしまったのかもしれない」と本音も漏らした。
この経験は必ず生きる。この日輝いたトゥールーズもここを通ってきたのだから。