日本代表 2024.06.08

【車いすラグビー日本代表】カナダカップ2024開幕! パラリンピック前哨戦で日本は白星発進

[ 張 理恵 ]
【車いすラグビー日本代表】カナダカップ2024開幕! パラリンピック前哨戦で日本は白星発進
ベテランの池崎大輔は、プレーだけでなくコミュニケーションにおいてもチームをけん引した。(撮影/張 理恵)



 6月6日、車いすラグビーの国際大会「Wheelchair Rugby CANADA CUP 2024」(以下、カナダカップ)が、バンクーバー国際空港にほど近いリッチモンド・オリンピック・オーバルで開幕した。

 4日間の日程でおこなわれる今大会には、世界ランキング1位のアメリカ(※)をはじめ、オーストラリア(同2位)、イギリス(同4位)、カナダ(同5位)、フランス(同6位)、そして日本(同3位)と、ランキングの上位6か国(※2023年11月24日現在)が集結し世界トップレベルの戦いを繰り広げる。
 今回の6チームすべてが、パリ・パラリンピック(8か国が参加)に出場するとあって、開幕まで2か月余りとなったパラリンピックの前哨戦として大いに注目される。

 前回の2022年大会で日本は初優勝を果たし、その結果により史上初の世界ランキング1位に輝いたことは記憶に新しい。
 連覇が期待される日本代表だが、今大会でフォーカスするのは「個を押し出すのではなくチームのためにプレーし、連係の完成度を高めること」と、岸 光太郎ヘッドコーチ。そして、「それをやっていけば、きっと結果もついてくる」と続けた。

 試合は全チーム総当たりの予選ラウンドを経て、最終日に決勝と順位決定戦がおこなわれる。
 大会1日目の6月6日、日本は予選ラウンドでイギリスとの初戦に臨んだ。
 池 透暢―池崎大輔―小川仁士―草場龍治の4人がスターティング・ラインアップを務めた日本は、先制点をあげると、トランジションのはやさを生かしたディフェンスでターンオーバーを奪い連続得点。好調な立ち上がりを見せた。

 序盤からハードワークが光る日本だが、その運動量よりも、コート上の4人が密にコミュニケーションを取り合いながら試合を進める姿が印象的だった。
 ベテランの池崎が若手の草場にポジションなどの助言を与えながら、ときに「龍治、ナイスプレー!」と背中を押す。

 もはや定番となりつつある、安定のセカンド・ラインアップが流れをつなぐ。
 パラリンピック日本代表(12名)のメンバー選考が大詰めを迎えるなか、選手の中にはパリ2024大会前最後の実戦である今大会で、個人のパフォーマンスをアピールしたい気持ちは少なからずあるはずだ。
 けれども、そんな気配を微塵も感じさせないチームプレーで得点を重ねていく。もちろん1対1のマッチアップでしっかり勝負することも怠りはしない。相手の攻撃の起点からプレッシャーをかける日本はリードを広げ、25-22で前半を折り返した。

今大会では「プレーの一貫性」がチームテーマのひとつだと語るキャプテンの池透暢。(撮影/張 理恵)

 東京パラリンピックで金メダルを獲得したイギリスは、中心メンバー数名が同大会を最後に引退し、ここ数年はヨーロッパ・チャンピオンの座もフランスに譲っている。
 今大会には10名で臨んでいるが、その中で20歳の新星、タイラー・ウォーカーが躍動する。ハイポインター(障がいの比較的軽い選手)のウォーカーは第3ピリオドで起用され、高さを生かしたプレーでイギリス代表に新風を吹かせた。

 しかし、日本のチームラグビーは勢いを増す。
 その一翼を担ったのが、リオと東京の銅メダルメンバー・若山英史だろう。
「培ってきた経験を若い選手に伝えつつも、若手に負けるつもりはない。持ち味であるプレーの読みの良さという部分を出しつつ、ローポインター(障がいの重い選手)とハイポインターのつなぎ役だったり、若手とベテランのつなぎ役だったり、そういった潤滑剤のような働きができれば、チームとしてより強くなっていけると思う」

 若山はその言葉通り、池と池崎のハイポインター陣のトライを演出し、後輩の草場をリードする。
 プレータイムこそわずか2分半に留まったが、最後は自らもスコアして、この日最大となる6点差にまでリードを広げた。

 その後、パスをカットされるなど、いくつかのターンオーバーを許すも、日本は一度もリードを譲らない。
 第4ピリオドを前に、円陣を組むベンチでは、「自信を持ってプレーしよう」と岸ヘッドコーチの声が響いた。
 各ラインアップが、任された時間帯でその役割を果たす。全メンバーでつないだ日本は47-44で勝利を収め、初戦を白星で飾った。

 キャプテンの池は、「精度の高いディフェンスができて、プラン通りに相手をしっかり抑えられた。今大会では『一貫性を持ってプレーをおこなう』ということがテーマのひとつ。どのラインアップが出ても、ゲームプランに沿って徹底的にやれるかどうか。試合に勝つことだけが、価値のあるものではない。自分たちがやってきたことを出して、また課題を見つけるということも今回の目的。そういう意味では、良いところと悪いところの両方がでた試合だった」と冷静に振り返った。

 観客の温かい応援と同時に、パラリンピック本番を見据え、各国チームの鋭い視線がコートに送られる今回のカナダカップ。
 大会2日目の6月7日、日本はアメリカ、そしてオーストラリアとの予選ラウンド2試合に臨む。

【カナダカップ2024 車いすラグビー日本代表】
倉橋 香衣  0.5 F
長谷川 勇基 0.5
若山 英史 1.0
小川 仁士  1.0
草場 龍治  1.0
乗松 聖矢 1.5
羽賀 理之 2.0
中町 俊耶 2.0
池 透暢 3.0
池崎 大輔  3.0
島川 慎一 3.0
橋本 勝也  3.5

※数字は障がいの程度や体幹等の機能によって分けられるクラス(持ち点)。
数字が小さいほど障がいが重いことを意味する。
※「F」は女性選手。
※コート上4人の持ち点の合計は8.0以内とルールで定められている。女性選手が入る場合は、女性選手1人につき0.5の加算が許される。

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