注目はチーフス×レッズ。スーパーラグビー・パシフィック準々決勝、いよいよ始まる
2024年度のスーパーラグビー・パシフィックは、今週からプレーオフに突入する。準々決勝の4試合は、6月7、8日の2日間で開催される。
いちばんの注目カードは、第1試合のチーフス×レッズになるだろう(現地時間/6月7日、19時5分)。準々決勝最後のブランビーズ×ハイランダーズ(現地時間/6月7日、19時35分)も面白い試合になりそうだ。
プレーオフを前にレギュラーシーズンの最終節(5月31日、6月1日)は、目が離せなかった。ハリケーンズがハイランダーズ相手に41-14で圧勝。ボーナスポイント(以下、BP)も獲得し総合56ポイントとした。
その直後の試合でブルーズはチーフスに31-17と勝利したが、最後にチーフスにトライを奪われた事により獲得できそうだったBPを手にできず55ポイント。その結果、ハリケーンズが1位に繰り上がり、ブルーズが2位となった。
上位チームの順位の行方よりも注目されていたのは、プレーオフの最後の1枠をどこが手にするかだった。
まずクルセイダーズがモアナパシフィカに43-10で圧勝。プレーオフに望みをつないだ。
翌日のフィジアン・ドゥルア×レベルズの試合は、前半は19-19と同点も、後半開始からエンジン全開のドゥルアがトライを重ね40-19で勝利。2年連続でプレーオフ進出を自らの勝利で決めた。
ドゥルアの勝利により昨年のチャンピオンで7連覇中(2020、2021年のスーパーラグビー・アオテアロアを入れて)のクルセイダーズは、プレーオフ進出の8チームから漏れる事になった。同チームがプレーオフを逃したのは、2015年以来9年ぶりのことだ。
プレーオフに出場する8チームは、1位ハリケーンズ(NZ)、2位ブルーズ(NZ)、3位ブランビーズ(AUS)、4位チーフス(NZ)、5位レッズ(AUS)、6位ハイランダーズ(NZ)、7位フィジアン・ドゥルア(パシフィック)、8位レベルズ(AUS)に決まった。
※NZ=ニュージーランド、AUS=オーストラリア
プレーオフを前にNZ国内では、オールブラックスのセレクションの話題が多くなっている。
レギュラーシーズン時のアピールも大事だ。しかしプレッシャーのかかるプレーオフは、テストマッチに似た状況もある。セレクションにプラスとなる事が大いにあるだけに、個々の選手のパフォーマンスも気になるところだ。
◆チーフス×レッズは、準々決勝の大一番!
NZ勢を中心に準々決勝の4試合の展望をしてみたい。
プレーオフは、6月7日(金)にキックオフとなる。まずはチーフスが、ホームのハミルトンでレッズを迎え撃つ。
3月9日のレギュラーシーズンでの対戦は、レッズのホーム、ブリスベンが舞台だった。25-19とレッズが勝利している。
昨季の準々決勝ではチーフスが29-20と勝利しているものの、過去5試合の対戦はチーフス2勝、レッズが3勝。興味深いデータだ。
レッズのFW3列陣が目立つことになれば、試合がもつれる事が予想される。逆にチーフスは、FW戦で耐えて攻撃力の高いBK陣にボールを供給できれば勝つ確率は高くなるだろう。
チーフスの注目選手はFW第3列陣。試合のカギを握る存在だ。シーズン途中にケガで離脱するも、終盤に復帰したFLサミペニ・フィナウ、FLルーク・ジェイコブソン、将来性抜群のNO8ウォレス・シティティの名前が先発メンバーにある。
彼らがハードワーカーのFLフレイザー・マクライトを筆頭とするレッズの強烈な3列陣相手に良いパフォーマンスができるか。
BKでは、新しくオールブラックス入りが期待されるSHコーティス・ラティマ、そして今季も好調のSOダミアン・マッケンジーのハーフ団が目をひく。この2人がクオリティーの高いレッズのSHテイト・マクダーモット、SOトム・ライナー相手にどんなプレーをするかも注目される。
今季のチーフスからは、決勝に進出した昨季のような強さはまだ感じられない。
昨年のレギュラーシーズンでチーフスに唯一の黒星を付けたのがレッズ(22-25)だった。しかもNZの地(北島にあるニュープリマス開催)での勝利だっただけに、準々決勝でのレッズの勝利も十分に考えられる。白熱した試合になりそうだ。
◆ハリケーンズ×レベルズ
第2試合は、ハリケーンズのホーム、ウエリントンでレベルズを迎える(6月8日)。
3月22日のレギュラーシーズンでの対戦は54-28でハリケーンズが勝利している。
ハリケーンズは、アサホ・アウムアをはじめHO陣に相次いだケガ人が出てから終盤にやや失速した感があるものの、層の厚さを武器にレギュラーシーズンを1位通過に成功した。HO陣のケガ人も無事に復帰を果たし、万全の態勢でプレーオフに挑むことが出来る。
一方のレベルズは、財政難のため今季限りで活動休止すると発表しており、選手たちが活動休止を前に奮闘する事も期待される。しかし、ハリケーンズの準々決勝のメンバーと今シーズンの充実度を見るとレベルズのアプセットは難しいと思われる。
◆ブルーズ×ドゥルア
第3試合は、ホームのブルーズがオークランドでドゥルアを迎える(6月8日)。
2月24日のレギュラーシーズンでの対戦は、34-10でブルーズが勝利している。
ブルーズは、準々決勝でCTBリーコ・イオアネを先発に戻すなどベストなメンバーを組んできた。SO/FBスティーヴン・ペロフェタのケガ以降10番を任されたハリー・プラマーが先週の12番から今週は10番に戻り、ケガ明けのペロフェタを15番の位置に下げたことは興味深い。今季ワンランクレベルを上げたプラマーの司令塔での起用がチームに最もフィットしていると判断をしたのだろう。
対するドゥルアは、勢いに乗ると手が付けられないが、敵地での一戦となると分が悪い。準々決勝でドゥルアの奮闘があれば盛り上がる。しかし、昨年よりも安定感のあるブルーズの勝利は固いと思われる。
◆ブランビーズ×ハイランダーズ
準々決勝最後の試合は、ホームのブランビーズがキャンベラにハイランダーズを迎える(6月8日)。 3月16日のレギュラーシーズンでの対戦は、27-21でブランビーズが勝利している。
ブランビーズは、今季も変わらずセットピース(スクラム、ラインアウト)の安定感を武器に攻撃力のあるBKを活かしてで勝利を重ねてきた。実力からいくとブランビーズに分がある。
しかし、今季のハイランダーズは、ブルーズで出場機会に恵まれなかったCTBタニエル・テレア、FBジェイコブ・ラトゥマイタヴキ・ニープケンス、そしてモアナ・パシフィカから獲得したWTBティモチ・タヴァタヴァナワイらの活躍でBKの攻撃力が上がっている。FW戦で五分以上に持ち込めば試合が面白くなりそう。
ブランビーズのフロントローには、主力の一部にケガ人が出ている。スクラムでプレッシャーをかけることができれば、ハイランダーズのアプセットが見られるかもしれない。
試合巧者のブランビーズ相手にキャンベラで勝利をするのは極めて難しいと言われている。ハイランダーズが勝利するには、常に先手をとる展開にしたい。
2024年のスーパーラグビーは、絶対王者と言われてきたクルセイダーズが崩れる波乱が起きた。準々決勝でアップセットがあっても不思議ではない。