国内 2024.05.16

【連載⑤・秩父宮のゆくえ】リーグワン・玉塚元一理事長が展望。

[ 明石尚之 ]
【連載⑤・秩父宮のゆくえ】リーグワン・玉塚元一理事長が展望。
ロッテホールディングス代表取締役社長も務める玉塚元一氏。写真は今季開幕前のメディアカンファレンスにて(撮影:松本かおり)

 秩父宮ラグビー場は、リーグワンの玉塚元一理事長にとっても青春の場所だ。

 慶大時代、何度もこの舞台に立った。「本当に思い出深い場所」と回想する。

「僕はたまたま伝統校だったので使わせてもらう機会が多かったのですが、秩父宮は紛れもなくラグビーの聖地であり、秩父宮でプレーできることはやはり憧れでした」

 現役時のポジションはFL。ラインアウトのスローワーも務めていたから、観客の声援を一番近くで受け取ることも多かった。

「試合前のロッカールームでの緊張感はやはり他の会場と違うし、グラウンドに出れば特にバックスタンドはお客さんとの距離が近い。早慶戦の日なんかは同級生のみんなが応援しに来てくれて、『ゲン、頑張れ!』という声もはっきり聞こえた」

 当時を懐かしみながら、今回はリーグワンのトップの立場からも、新秩父宮ラグビー場を展望した。

 神宮外苑地区の再開発事業に伴い、2027年12月末の運用開始を目指して神宮第二球場跡地に建設される新秩父宮だが、同理事長は「ぜひとも早く作って欲しい」と鼻息を荒くする。

「ラグビーは南半球とヨーロッパに盛んなリーグこそありますが、経済的には苦しんでいるリーグもあります。これからはアジアが経済全体の成長をリードしていく中で、リーグワンは日本のリーグとしてだけでなく、アジアの中のリーグワン、世界の中のリーグワンとして存在感を示していきたい。香港やシンガポール、タイ、韓国、台湾といった国々を巻き込んでいきたいと思っています。世界でも認められるリーグワンを目指していく上では、ラグビー専用のスタジアムが日本にあるということがすごく重要になります」

 リーグワンは今季、「クロスボーダーラグビー」を初開催できた。スーパーラグビーのチーフスとブルーズを招待し、リーグワンの昨季4強クラブが対戦した。

 今回は交流試合だったが、将来的にはチャンピオンシップを争う大会にまで発展することを目指す。「それが新しい秩父宮でできたら最高ですよね」と頬を緩める。

ただ、1万5500席のキャパシティについては、議論した時期の動員実績を鑑みて理解を示しながらも、「今季のリーグワンの盛り上がりを見ると、ちょっと少ないですね」と苦笑い。日本ラグビー協会の土田雅人会長によれば対戦カードによって国立競技場と使い分けるとしているが、今季のリーグワンは観客増が顕著で、レギュラーシーズンでも3万人超えの試合が複数おこなわれていた(1万5千人超えは7試合)。

全天候型になることについては、「開放感はなくなってしまうがラグビーの試合数は少ないですし、(人工芝にすることで)稼働率を上げて経営として成り立たせるためには致し方ないと思います。それに、雨や寒さを気にせず高いレベルの試合ができるのは素晴らしいこと」と話す。

「最新のデジタル技術を色々導入していただき、お客様にとってエキサイティングな空間を作っていただけたらすごくありがたい」と願う。

海外スポーツにも日常的に興味を持ち、千葉ロッテマリーンズのオーナーでもある玉塚理事長は近年の球場やスタジアム事情に詳しい。

「いまデジタルの進化はもの凄くはやいです。超巨大スクリーンにプレー映像がほぼリアルタイムで鮮明に映ったり、透明なスクリーンに映像が映し出されたり、天井までがスクリーンになっているドームや場内の案内のすべてをロボットがおこなう、なんていう技術まであります。ラグビーはものすごく迫力があるので、それをうまく体感できるような空間を作っていただきたいです。最新の映像環境を整えてTMOでの検証シーンがほぼリアルタイムで見ることができたり、AR(拡張現実)を駆使したゴーグルをかけると走っている選手の速度が分かったりとか。そうした新しい技術を活用して、世界に誇れるスタジアムにしてほしいと思います」

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