海外 2024.05.06

【スーパーラグビー・パシフィック】クルセイダーズ、不調から抜け出せず。レッズに敗れ、プレーオフ進出に黄信号

[ 松尾智規 ]
【スーパーラグビー・パシフィック】クルセイダーズ、不調から抜け出せず。レッズに敗れ、プレーオフ進出に黄信号
プレッシャーを受けるクルセイダーズFL、カレン・グレイス。(Getty Images)



 昨年のチャンピオンのクルセイダーズが今季8敗目を喫した。調子のアップダウンの激しさに、クライストチャーチのスタジアムは静まり返った。

 スーパーラグビー・パシフィック第11節、5月4日にクライストチャーチで行われたクルセイダーズ×レッズの試合は、FW戦で上回ったレッズが33-28で逃げ切った。1999年以来25年ぶりにクライストチャーチの地でクルセイダーズに勝った。

 クルセイダーズの立ち上がりは悪くなく、むしろ押していた。
 開始9分、10番で起用されたデイヴィット・ハヴィリが見事なロングパスを出す。それを受けたFLカレン・グレイスが先制トライをしたかと思えた。
 TMOによりトライは認められなかったものの(途中のプレーでノックオンがあったとみなされた)、クルセイダーズに勢いを感じた。

 先に得点を取ってスコアボード上でプレッシャーをかけたいクルセイダーズは、10分にペナルティゴールで先制点を狙いにいく。しかし35歳でスーパーラグビーデビューを飾ったFBリー・ハーフペニーが難しくないキックを外す。先制はならなかった。

 14分にキャプテンのLOスコット・バレットが負傷退場。ここからクルセイダーズの歯車が狂っていくのが感じられた。流れはレッズに傾いていった。

 キャプテンを失ったクルセイダーズは、22分、25分にレッズにあっけなくトライを奪われて0-14と一気に突き放された。クライストチャーチのスタジアムは、静まり返った。
 クルセイダーズが初めてスコアボードに得点を刻んだのは前半終了間際の38分。12番ダラス・マクロードのトライで7-14。差を7点に縮めてハーフタイムを迎えるも、ラインアウトをはじめミスが多く目立ち、課題の多い前半となった。

◆後半追いつくも、終盤にレッズに連続トライを許し今季初の連勝ならず。

 後半に流れを変えたかったクルセイダーズだったが、43分、自陣ゴール前のラインアウトを確保できない。自らチャンスをレッズに渡してしまった。
 その後、レッズFWに押し切られてトライを奪われてしまう。7-21と、再び14点差にされた。

 しかし、クルセイダーズはここから目を覚ました。52分に7番コーリー・ケロウ、56分にLOクインテン・ストレンジの連続トライが生まれて21-21とスコアを並べた。
 一時は静まり返っていたスタジアムも、この2つのトライで一気に盛り上がっていった。

 勢いをつけて一気に逆転したいクルセイダーズは、自陣22メートル内で途中出場のFLトム・クリスティーがラックでボールを奪う。しかし、ハヴィリのキックがレッズの8番、ハリー・ウイルソンにチャージをされ、そのままウイルソンがインゴールに押さえた。再びレッズにリードを許した(21-28/62分)。
 その後、69分にはWTBティム・ライアンに、この日2つ目のトライを献上して21-33と突き放された。スタジアムに再び沈黙が訪れた。

 残り10分で逆転するには2トライが必要な状況。厳しい状況に追い込まれたが、74分にWTBセブ・リースがトライを挙げて28-33と5点差に詰め寄る。クルセイダーズの勝利を祈る子どもたちの声援も大きくなった。
 しかし、一試合を通じて固かったレッズのディフェンスを崩すことはできず、逆転のトライを奪えない。そのままフルタイムを迎えた。
 
 シーズン終盤にさし掛かっても一貫性がなく、調子が上がらないクルセイダーズ。それを見ているファンの落胆は大きく、フラストレーションがたまっている様子がうかがえる。
 いつもなら試合後にピッチに降り、選手と交流するファンが多いが、この日は、すぐにスタジアムをあとにするファンが多かった。

◆敗因はFWのフィジカルバトルの劣勢と、多発したラインアウトのミス。

 前週のレベルズ戦(4月26日)ではFW戦で圧勝し、39-0と完璧な試合をしたクルセイダーズだったが、レッズ戦では、フィジカルバトルで劣勢となり、それが敗因のひとつとなった。
 この試合、7番で先発予定のイーサン・ブラカッダーがケガで急遽欠場となった。その影響が出たと言えるかもしれない。

 キャプテンのバレットが前半の早い段階で負傷退場したことは、フィジカル戦だけでなく、ピッチ内にリーダーがいなくなった点でも痛かった。
 レベルズ戦で大幅に改善されたラインアウトが再び不安定になり、何度もチャンスを逃した。自陣でのミスは、相手のトライに直結した。

 今季挙げた2つの勝利は、素晴らしいパフォーマンスで得たものだったが、好不調の波が激しいのが気になる。ブラカッダー、バレットのケガの状態次第では、残り試合も厳しくなりそうだ。

 救いはCTBコンビ、マクロード、リーヴァイ・アウムアのパフォーマンスの良さだろうか。特にアウムアのボールキャリーは強力で、必ずゲインラインを超える。FWの出来を毎試合安定させることが浮上の鍵になってくる。

 レッズ戦をコーチングボックスから見ていたHOコーディー・テイラーは、試合前のアップでは、ピッチを走り回っていた。来週、12節(5月10,11日)からの復帰が見込まれている。ラインアウトを含むFWの安定感をもたらしてくれると期待される。
 巨漢PRタマティ・ウイリアムズの復帰も近い。そちらも明るい材料だ。

 残り4試合で現在10位。ブランビーズ、ブルーズなど強豪との試合が残っている。今回の敗戦により、プレーオフ進出(8位以内)は厳しくなってきた。
 クルセイダーズの復活はいつだ。

試合前の練習で元気な姿を見せたHOコーディー・テイラー(右)。(撮影/松尾智規)



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