国内 2024.04.24

ありがとう、フミさん。日本ラグビーの発展を支えた小さな巨人田中史朗が今季限りでの引退を発表。

[ 編集部 ]
ありがとう、フミさん。日本ラグビーの発展を支えた小さな巨人田中史朗が今季限りでの引退を発表。
明るいキャラクターと歯に衣着せぬストレートな発言で、日本ラグビーの顔として絶大な人気を博した。日本代表キャップ75は歴代7位(撮影/松本かおり)



 さまざまな感情があふれる時間だった。

 4月24日、NECグリーンロケッツ東葛のSH田中史朗が、今シーズン限りでの引退を発表した。日本ラグビーの発展を誰よりも強く願い、166cm、75kgの小さな体でいくつもの新しい歴史の扉を開いてきたパイオニアは、5月末のD1-D2の入替戦を最後にブーツを脱ぐ。

 東京都内のホテルで行われた記者会見の冒頭、グリーンロケッツの太田治GMとともに登壇した田中は、声を震わせながらこう切り出した。

「私、田中史朗は、今シーズンの終了をもちまして現役を引退することを決めましたので、ご報告させていただきます。17年間という長い現役生活でしたが、最高に幸せな時間でした。本当にありがとうございます。この小さな体でここまでプレーできたこと、日本代表としてW杯に出て、新しい日本の歴史を築けたことは、私の誇りです。たくさんのチームメイト、チーム関係者、メディアの方々、そしてファンの皆様、何より家族のサポートがあってここまで続けることができました。本当に感謝しています」

 京都の伏見工業から京都産業大、三洋電機(現埼玉パナソニックワイルドナイツ)と進み、2008年に日本代表入り。W杯は2011年ニュージーランド大会から2015年イングランド大会、2019年日本大会と3大会に出場した。2015年大会では南アフリカを撃破した「ブライトンの奇跡」の立役者となり、2019年大会でも決勝トーナメント進出を果たし日本中にラグビーブームを巻き起こしたチームの欠かせぬ存在だった。

 もっとも2019年W杯以降は、長年のプレーで蓄積したダメージに加え年齢的なものもあり、年々体がきつくなってきたという。2022シーズンに加入したグリーンロケッツでもコンスタントに公式戦に出場してきたが、頼もしい後輩たちの台頭もあり、39歳となった今シーズンなかばに引退を決断した。

「日本ラグビーがすごくレベルアップする中で、自分が今のパフォーマンスで現役を続けていていいのかなという部分がずっとありました。それでも僕がやる意味というものがあると思い続けてきましたが、限界を感じて、こういう決断に至りました」

 記者会見の終盤では、日本代表のチームメイトであり親交の深い松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)と、伏見工業の後輩でもある松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)がサプライズで登場。事前に知らされていなかった田中が、それまで我慢していた涙をこらえきれず号泣する一幕もあった。笑いあり、涙あり、たくさんの感謝の思いにあふれる約40分の最後に、田中はこうメッセージを発して会見をしめくくった。

「たくさんの人にラグビーのよさを伝えながら、ラグビーを愛していきたいと思います。これからも日本ラグビーをよろしくお願いします。

 なお引退後はNECグリーンロケッツ東葛のアカデミーのコーチとして、ラグビーの普及・育成活動に携わっていく予定という。チームは今週末の順位決定戦(4月28日対豊田自動織機シャトルズ愛知@柏の葉公園総合競技場、14時30分キックオフ)から5月末の入替戦まで4試合を残しており、それが田中のプレーを見る最後のチャンスとなる。

会見の終盤、サプライズで登場した松島と松田の姿を見るや号泣した田中。松島からウイスキー、松田からは花束が贈られた
(撮影/松本かおり)

PICK UP