海外 2024.03.15

スーパーW入りの足がかりに。東京山九フェニックス、豪州ツアーでインパクト残す

[ YASU TAKAHASHI ]
スーパーW入りの足がかりに。東京山九フェニックス、豪州ツアーでインパクト残す
最後の最後までワラターズに立ち向かった。(撮影/Yasu Takahashi)



 女子ラグビー日本王者の東京山九フェニックス(以下、フェニックス)がオーストラリアツアーを敢行した。
 スーパーWのクラブと対戦し、ウエスタン・フォースに24-14で勝利し、ワラタスには0-44で敗れた。

 2月3日(土)に全国女子ラグビーフットボール選手権大会で優勝したフェニックスは、同月下旬よりオーストラリアへ。最初に向かったのは西オーストラリア州の都市、パースだった。

 昨年、パートナーシップ契約を締結したフォースの本拠地だ。フォースはスーパーラグビー・パシフィックに参戦している男子クラブが知られているが、女子チームもオーストラリア国内最高峰のコンペティションである「スーパーラグビー・ウィメンズ」、通称「スーパーW」で戦っている。

 フォースの整った環境下でのトレーニング機会に加え、両クラブの選手たちとの交流もあり充実した時間を過ごした。
 そして2月23日にはスーパーラグビー・パシフィックの開幕戦、フォース×ハリケーンズがおこなわれる会場で、そのカーテンレイザーとして登場した。

 フォース(女子)のトライアルゲームとして実施された一戦の結果は、24-14でフェニックスが勝利。その後、シドニーへ向かった。

 オーストラリア最大の都市、シドニーでは、オーストラリアラグビー協会(Rugby Australia)の協力を受けた。同協会の設備を使用してトレーニングし、この遠征の最大のチャレンジであり、今シーズンの集大成となるワラターズ戦へ調整を進めた。

円熟味を増すSO大黒田裕芽。(撮影/Yasu Takahashi)

 ワラターズはスーパーWにおいて、過去6大会のうち4度の優勝を誇る強豪だ。
 試合は3月2日(土)、第1回ラグビーワールドカップ(1987年)で使用されたコンコード・オーバルでおこなわれた。

 曇り時々小雨という天候だったが、週末ということもあり、シドニー在住の日本人も応援に駆け付けた。
 キックオフより両者一歩も譲らぬアームレスリングの時間が続いた。体格で勝るワラタスにフェニックスの低いタックルが突き刺さる。ボールキャリアに対し複数人を要する事もあるが、確実に止め、立ち上がり、走力で補った。

 しかし前半20分、試合が動く。ワラターズに最初のトライを許すと、その後、23分、40分と続けてトライされ、0-15で後半へ折り返した。
 さらにワラターズのペースは続いた。フェニックスは耐える時間が多くなった。

 しかし地力を見せた。
 アタックではオプションを惜しみなく使って果敢に攻め、ゴール前に迫る。会場を沸かせる場面もあった。
 それでも後半に5トライを追加される。0-44の完敗でノーサイドとなった。

 ワラタスの関係者によると、「この試合はシーズン前の重要なトライアルと位置づけていた。またフェニックスはウエスタン・フォースに勝っていた事もあり、選手たちは相当気を引き締めて試合に臨んだ」とのことだった。
 点差がついても最後まで途切れることなく戦い続けたフェニックスを称賛した。

 この遠征の実現に奔走した四宮洋平GMは、「フェニックスを2025年シーズンからスーパーWに参戦させたい」と話した。
「現在の若い選手たちに継続した海外経験をさせて選手としても人としても成長させたい」
 現役時代に自らが世界でプロ選手としてプレーした四宮GMらしい考えだ。

フェニックスとワラターズの全員で。(撮影/Yasu Takahashi)

 現役引退後はこのフェニックスとともに歩んできた。
「コロナや震災で海外経験を積めていない選手も多い。私自身が海外でプレーした事により得た経験、友達、というかけがえのない財産を持てた事を、次世代に継承していきたい」と続け、「私財を投げ売ってでもこの活動の集大成として、スーパーW参戦へとフェニックスを成長させたい」と熱く語る。

 昨年までにもスーパーWに選手を輩出してきたフェニックス。今年も、岸本彩華がブランビーズ、柏木那月、小牧日菜多、妹尾安南の3選手がフォースでスーパーWに挑戦する。

 この日の試合では、先月の全国女子ラグビー選手権決勝で、PEARLSの選手としてフェニックスと戦った、エミリー・チャンセラー、ブリアナ・ホイがワラターズのメンバーとして出場していた。

 彼女たちが今度はスーパーWで戦うことで、この舞台が日本の女子ラグビーにもっと身近になっていくだろう。
 フェニックスの活動が日本の女子ラグビーの未来を動かしていくかもしれない。


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