国内 2024.03.12

大一番でプレーヤー・オブ・ザ・マッチ。ワイルドナイツSH小山大輝はプレータイム増で進化中

[ 編集部 ]
大一番でプレーヤー・オブ・ザ・マッチ。ワイルドナイツSH小山大輝はプレータイム増で進化中
セブンズ日本代表キャップ3を持つ。スピードが魅力。(撮影/松本かおり)



 試合で得る経験はプレーヤーを成長させる最高のコーチだ。埼玉パナソニックワイルドナイツのSH、小山大輝がそれを証明している。

 3月9日(土)、熊谷ラグビー場で東芝ブレイブルーパス東京との全勝対決に挑んだワイルドナイツは36-24と勝利した。
 今季開幕からの連勝を9とした。

 咲いた 咲いた また咲いた 咲いた またまた 咲いた 埼玉♫
 ワイルドナイツが得点するたびにスタジアムには、映画『翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜』の主題歌、『ニュー咲きほこれ埼玉』が流れた。

 この日、小山自身がスコアすることはなかったが、自身のパスや仕掛けがトライを呼んだ。
 特に印象的だったプレーが、後半5分、WTB長田智希がトライを挙げたシーンにつながる一連の動きだった。

 ブレイブルーパス陣22メートルライン付近での中央スクラムから、小山が左にボールを持ち出して前進。チームはモメンタムを得てゴールラインに迫った。

 FWで何度か攻め立てた後、右にいたHO坂手淳史にパスを送った小山はリターンパスを受けて外へ走る。タックルを受けながら、フリーの状況だった長田につないで5点を追加した。

 そのシーンを振り返る。
「(坂手主将から)声はかかっていたのですが、そのプレーはやらないとなっていました。でも、坂手さんからボールが来たので走るしかなかったんです」。

 試合終了間際にピッチから出るまでワイルドナイツのテンポを作った働きが評価され、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた。
 今季ここまで全9試合に出場し、そのうち8戦に先発している。昨季はベンチスタートの方が多かったから、プレータイムは大きく伸びている。

 ピッチ上に立つ時間が長くなったことで、ゲームをコントロールする感覚をつかめてきたと実感している。
 実戦を通して得た成長だ。「(途中出場が多かった頃の出場時間)20分では出せないところもありました」と過去を振り返る。

 先発の機会が増えて分かる。
「試合の序盤は相手も元気。テンポを作ることを優先しつつ、(時間の経過とともにスペースが)空いたら行く感じです」と話す。

 攻撃的なスタイルが持ち味だ。ラック周辺をいつも見ている。
 空いていたら行く。
 その感覚を持ち続けていることが、チームを前に出す好走につながる。

 もともと持っていたその感覚に、駆け引きやゲームを読む力が積み重ねられている。
 周囲には、国際舞台での経験が抱負な選手たちが多くいるから学びも多い。
「(SOの松田)力也をはじめ、すごい人たちがたくさんいる。その声を聞きながらプレーしています」

 ブレイブルーパスとの試合を通しても成長しただろう。好調な相手と戦った体感を、「フィジカルの強さを感じました。(それを受けて)ペナルティをしてしまった。自分たちからプレッシャーをかけていくべきでした」と言葉にする。

 そんなハードな攻防の中でゲームプランを遂行し、「勝たなければいけない試合」で結果を残した。
 視察に訪れていたエディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチのメモにも名前が記されたかもしれない。

 愛称はボビー。以前チームに在籍したベリック・バーンズ(元オーストラリア代表)が命名したものは、いまもチームメートに受け継がれている。

 2017年度にチームに加わった29歳は「目の前の試合を全力で戦うだけ」の姿勢を崩さず、「その結果が日本代表となればいいですね」と自然体のまま進化し続ける。

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