LOメアフー、ついにデビューへ。フランス、ウエールズ戦で「ようやく」新布陣
あわや敗戦となるところだった前節のイタリア戦(13-13/2月25日)から2週間。フランス代表ヘッドコーチ(以下、HC)ファビアン・ガルチエは、今週末のウエールズ戦(3月10日)に向けて前節から大きくラインアップを変えた。
現地では「ようやく」という声が聞かれた。
ラグビー欧州6カ国対抗戦「シックス・ネーションズ」
全15試合をWOWOWで独占生中継・ライブ配信!
まず、負傷でイタリア戦に出場できなかったキャプテンのNO8グレゴリー・アルドリットとWTBルイ・ビエル=ビアレが復帰した。
また、ワールドカップ(以下、W杯)開幕戦のNZ戦で負傷し、今大会ここまでベンチスタートが続いていたHOジュリアン・マルシャンがゲームをスタートさせ、ペアト・モヴァカが久しぶりにインパクトプレイヤーの役目を担う。
イタリア戦で膝を負傷、途中退場したSOマチュー・ジャリベールに代わってチームを動かしたのはトマ・ラモス。ラモスは今週末もSOに入る。
負傷しているロマン・ンタマックに代わり、トゥールーズでも背番号「10」をつけて出場している。今季出場した10試合中、9試合で司令塔を務めている。
今大会初戦のアイルランド戦で代表デビューを果たしたSHノラン・ルガレックがラモスとコンビを組み、マキシム・リュキュは「試合終盤のゲームコントロールをする」(パトリック・アリエタズ アタックコーチ)。
そして負傷していたLOチボー・フラマンが帰ってきた。先週末、トゥールーズでの試合で後半に出場、19分プレーしただけで代表復帰だ。
ウエールズ戦は背番号「4」をつけて出場する。W杯では背番号「5」を背負い続けたが、4番に戻り、彼本来の可動性が生かされる。
フラマンとコンビを組むのが、ファンが待ちに待ったエマニュエル・メアフーだ。
オーストラリア出身のメアフーは5年前にトゥールーズに加入した。203センチ、145キロの巨体が物語るようにパワフル。エネルギーに溢れ、運動量も豊富だ。
ハンドリングも器用で、タックルされた後もパスでボールを繋ぐ。
スクラムでは、同じく巨漢のウイニ・アトニオのお尻を押す。右側は2人合わせて290キロと重量級だ。
ガルチエHCも「1年半待った」と言う。
メアフーの渡仏は、代表資格規定の居住歴が3年から5年に変更される前だった。W杯前、フランス協会はワールドラグビーに特例を申請した。
申請は認められず、W杯には出場できなかった。
しかし、W杯後の昨年12月に居住期間5年を満たす。今大会直前の膝の捻挫からも回復し、ようやくレ・ブルーのジャージーでデビューを果たす。
アイルランド、スコットランド、イタリア戦に出場していたカメロン・ウォキは「リフレッシュさせることにした」(ガルチエHC)と今週はメンバーから外れた。
さらにガルチエHCは新しい血を導入することにした。
FBにスタッド・フランセのレオ・バレ(21歳)、CTBにボルドーのニコラ・ドゥポルテル(21歳)を起用した。2人とも今季、目覚ましい活躍をしている。
バレはもともと、SOとCTBの選手だった。しかし2年前に当時のスタッド・フランセのHCだったゴンザロ・ケサダ(現イタリア代表HC)から勧められてFBに転向した。
それが見事にハマった。クラブで出場機会を増やした。
スピードもあり、フランス代表の弱点でもあるハイボールにも強い。まだ成長過程だが、ボーデン・バレットのようなイメージだろうか。
CTBのドゥポルテルは昨年のU20世界大会の優勝メンバーで、『今季のアトラクション』と言われるほど、開幕からノリに乗っている。
194センチ、95キロと長身だがスピードもある。ボルドーで見せる、若い熱気あふれるプレーは痛快だ。
天真爛漫なキャラで「このシックスネーションズの期間中に代表デビューできればいいな」と言っていたが、ジョナタン・ダンティーのレッドカードによる出場停止でチャンスが巡ってきた。
先週のラシン92戦でも、自陣ゴール前スクラムからテビタ・タタフが持ち出したボールを受け取り、80メートル駆け上がってトライを決め、代表スタッフに強いメッセージを発信した。
フィニッシャーでも、ラ・ロシェルの右PRジョルジュ=アンリ・コロンブ(25歳)が初選出された。193センチ、142キロと巨体のコロンブはアトニオの後継者として育つことが期待されている。
ガルチエHCは保守的で、初キャップの選手が4人もメンバーに入るのは、彼が代表チームを率いた初戦の2020年1月のイングランド戦で5人起用して以来のことだ。
これまで練習では、スターティングメンバーの選手たちにそれぞれのポジションの背番号をつけたビブスを着用させていた。
しかし今週は、水曜日までメンバーが定まっていなかった。
「我々はエネルギーを必要としていた。練習のレベルを上げたかった」とガルチエHCは説明する。
「本来の我々のレベルではない周期にある。立ち直っていこうとしている時期なのだ。物事の過程では必ずあること。しかしここには覚悟と決意と聡明さがある。我々のチャレンジはそのバランスを見つけること。幸福を受け入れ、また苦しみも受け入れなくてはならない。確かなことは、私はここまでの結果に満足していないと言うこと。苦しい時期だが、もうすぐ良くなって行く」と続けた。
対戦相手のウエールズについてガルチエHCは、「過去2回の敵地での対戦では、グランドスラムも経験している年上のチームだったが、今回はずっと若いチームだ。ブラボー、ウエールズ! これこそ彼らのラグビーの心となっているものだ」と話し、続けた。
「ウエールズは炭鉱の国だった。イギリスに、特にイングランドに石炭を供出していた。困難な状況での労働、努力の文化が根付いている。ウエールズの偉大なジャージーを纏い、このジャージーの責任と覚悟を胸に抱いた若いチームと我々は対戦する。この国は常に素晴らしい才能を生み出しているということを忘れてはいけない。さらに対戦場所はカーディフの中心にあるミレニアム(プリンシパリティ・スタジアムの呼称)。ウエールズ代表チームの心臓だ。しかも屋根は閉められる。これが日曜日に私たちが対戦する背景だ」
キックオフは、3月10日(日)の15時(日本時間同日24時)。