国内 2024.03.07

創部70周年迎える上智大ラグビー部。武骨とやんちゃ、ふたりの主将が先頭に立つ

[ 編集部 ]
創部70周年迎える上智大ラグビー部。武骨とやんちゃ、ふたりの主将が先頭に立つ
朝日大智(左)と大田浩平。共同主将としてチームを引っ張る。(撮影/松本かおり)



 まだ寒い日があるけれど、春の空気が濃くなってきた。
 大学ラグビー部では新しい体制、新キャプテンのもと、チームが走り出す季節だ。

 一人ひとりの個性が重なり合ってパワーを生む。チームスポーツの最大の魅力だ。
 優等生ぞろいの集団となるときもあれば、やんちゃ者が集まる年もある。ごちゃまぜで成り立つシーズンも可能性を秘める。

 学生チームは、その様相が毎年変わるのがおもしろい。
 関東大学対抗戦Bで戦う上智大学ラグビー部の2024年度は共同主将体制で走り始めている。
 朝日大智(あさひ・たいち/NO8・LO)、大田浩平(FB)のふたりがキャプテンとなった。

「シーズン5勝」を目標に掲げるFB大田(左)とNO8朝日

 昨季は対抗戦Bの6位だった。
 シーズン最終戦(2023年11月26日)は一橋大との死闘。力を出し切ったものの、21-24と惜敗した。

 その試合の直後、体を張り続けた朝日(当時3年生)は、ブレイクダウン時のコリジョンなど、体をぶつけ合うシーンでは差を感じなかったが、セットプレー、特にスクラムを高められていなかったと悔やんだ。
 春から取り組んできたのに、と唇を噛んだ。

 自分たちが最上級生になった時の体制を考えている時期だった。
 朝日は「(リーダーを)支える立場になろう」と考えていた時期もあったけれど、自分が先頭に立って引っ張ろうと思い始めていた。
 先輩たちから、「主将は(チームの中で)いちばん勝ちたいやつがやるべき」と言われたからだ。

 負けてシーズンを終え、「きょうの試合で、自分が引っ張っていく気持ちが強くなった」と胸の内を吐露した。
 シャローディフェンス。そして低いタックル。部の伝統をぶらすことなく磨いていきたいと話した。

 父は九州の出身。朝日自身、キリッとした眉が印象的だ。
 野球に熱中していたが肘を痛めたことをきっかけに、日大習志野高校1年時にラグビーを始めた。
 愉快な先輩たちの勧誘に心を奪われた。

 WTBでプレーしていた。FWに転向したのは大学2年のシーズンの途中からだ。
 そこから肉体改造に取り組んで、食べ、鍛えた。70キロだった体重は86キロとなった(179センチ)。

 2か月強のシーズンオフを経て、今年2月13日、新チームが始動した。
 数回の練習を終えた後、朝日は、よく声が出ているチームの雰囲気について「モチベーション高く練習できていると思う」と笑顔を見せた。

 シーズンインに向けての準備の日々は、チームの方針を決めるため考えに考えた。
「昨シーズンは接戦を勝ち切れませんでした。今年は接戦で勝てるチームにしたいですね」

 激しい防御はそのまま、より積極的に攻めるチームを目指す。
 頭に描くスタイルを実現するために必要なのは豊富な運動量。強化を担当する朝日は、「キャプテンとしても、フィットネス強化のリーダーとしても誰よりも走りたい」と話した。

 自身の姿勢で周囲を鼓舞する覚悟がある。
「チームをまとめる役目は僕がやります。だから(共同主将の)大田は、得意のアタックで暴れてくれたらいい。キレのあるステップでトライを取ってチームを勝たせてほしいですね」

 そんな期待を受ける大田は小柄も(163センチ)、相棒が言うように、チームにモメンタムを与えるプレーが魅力だ。
 朝日が武骨なら、大田は陽気なキャラクター。周囲を巻き込んで空気を明るくする。

 やんちゃでもある。上智大ラグビー部を2度退部している。
 最初は1年時。キャンパスライフを楽しむ周囲の学生たちがキラキラしているように見え、自分も、と辞めた。引き止めてくれる仲間たちの声も振り切った。
「でも、1か月もしたら、やっぱりラグビーをやりたくなりました」

 2回目は2年時だった。そのときは、周囲との思いの違いを感じた。
「モチベーションが下がって。あまり、引き止められなかったと思います。またか、と思われたのかもしれません」
 1か月経ったら、またラグビーがやりたくなって復帰した。

「そんな過去もあります。だから、自分がキャプテンをするなんて思っていなかったのですが、(同期の)みんなが推してくれました。なので、やってやるぞ、という気持ちになりました」

 主将経験はある。茗溪学園中の3年時のことだ。サッカー部だった。
 高校でラグビー部に入ったのは、授業で楕円球を追ったことがあり筋が良かったことと、全国大会に出たい思いを胸に秘めていたからだ。

 思ったことを行動に移す。それが大田の流儀だ。
 ラグビーへの転向。2度の退部もそうだ。そして復帰も、意固地にならず、自分の心に素直に沿ったからだ。

 辞めるのも、復帰するのも、大きなエナジーがいる。この人には、それを厭わぬ行動力がある。
 実はリーダーに向いているのかもしれない。

 例年以上にアグレッシブな姿勢を前面に出したい今季のチームに、大田は不可欠な存在だ。
「一人ひとりがハードワークして、個々がレベルアップする必要があります。自分のやる姿でみんなを引っ張っていきたい」と自覚する。

 2人の主将は新シーズンの目標を「対抗戦Bで5勝」と言う。簡単ではない。しかし、目指さないと絶対に届かない。
 それができて初めて、成蹊大、明学大の2強にチャレンジできる。

 まずは新入部員の獲得に全力を注ぐ。
 朝日が言う。
「伝統的に未経験者も入部してくるチームです。その人たちが戦力になって戦う伝統は守っていきたいし、その育成にも力を注ぎたい」

 大田は、自分を筆頭にキャラが立っている集団であることを気に入っている。
「オンとオフがはっきりしていて、みんな全力でラグビーをして、練習が終わるとみんなではしゃぐ。留学に行く人もいるし、それぞれが目標を持って頑張っています」

 2024年は創部70周年と節目のシーズン。「BREAK」をチームスローガンに掲げる。
 凸凹な共同主将、ふたりの熱が壁を溶かすか。


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