「日本選手の強みで勝負」。女子日本代表、パールズの齊藤聖奈が『SUPER RUGBY AUPIKI』へ
31歳で扉を開ける。
女子日本代表(40キャップ)で『MIE PEARLS』(三重パールズ)所属の齊藤聖奈が、ニュージーランド(以下、NZ)の『SUPER RUGBY AUPIKI』(女子/スーパーラグビー アウピキ/現地発音ではオーピキが近い)の2024シーズンを戦う。
2023年から始まった同リーグの2シーズン目は2024年の3月に開幕する。4チームがホーム&アウェーの総当たり戦とプレーオフを戦う。
齊藤が加わるのは、昨季初代チャンピオンとなった『Chiefs Manawa』。『Blues Women』、『Hurricanes Poua』、『Matatū』も含む全チームに、NZ代表選手が散らばっている。
レベルの高いコンペティションだ。
コロナ禍の影響で開催時期が1年遅れ、2022年の秋にNZで開催された女子ワールドカップ(以下、W杯)。
齊藤は主将を務めた2017年大会に続き、再び大舞台に立った。
その際、同年7月までパールズでヘッドコーチ、アシスタントコーチを務めていたクリスタル、ブレントのカウア夫妻が応援に足を運んでくれた。
「アウピキができるから来ない? という話が出たことを覚えています」と話す。
クリスタルさんは、2024年シーズンからチーフス・マナワのヘッドコーチとして指揮を執る。
昨季はアシスタントコーチを務めていた。齊藤の実力はよく分かっているから声をかけた。
その後、クラブ間で話が進んだ。
なにより、齊藤の思いがあったから今回のチャレンジは実現した。
「アウピキができると聞いた時、(自分も)やってみたいな、と思いました。そして、日本、アジアからその舞台に立てたら、今後、同じようにそこを目指す選手も出てくるのではないか、とも考えました」
パイオニアとしての重責も担って王国へ向かう。
年齢を重ね、毎シーズン、毎大会に全力を注いで選手生活を続けている。「その気持ちが切れるまでプレーを続けたいと思っています」と話す。
ゴールを決めず、走れるところまで走り続ける。
2023年から女子の新設国際大会『WXV』も始まった。2025年にはイングランドでのW杯も予定されている。
世界との対戦を見据え、サクラフィフティーンにはさらなる進化が求められる。「アウピキで得たものをチームに還元したい」と話す。
齊藤自身が初めて日本代表に選ばれた頃(2012年)と比べると、日本の女子ラグビーの環境は飛躍的に整備された。
国際大会への参加、テストマッチも増え、選手たちの経験値は高まっている。
しかし、自分たちより大きなサイズの相手と伍すことは簡単ではない。これは、日本が世界と戦う上でなくなることのない前提条件だ。
そして、健闘はできても、上位国にはなかなか勝ち切れない。
それが現実だ。
齊藤はチーフス・マナワでバックローとHOのカバーを任されそうだ。自分より大きく、パワーのある仲間と競い合うことになる。
「日本人らしい細かいスキルやワークレートで勝負したいですね。ディテールにもこだわりたい」と抱負を口にする。
その経験を自分がサクラフィフティーンやパールズの仲間に伝える。あるいは、齊藤のチャレンジをみんなが見る。
それらは、日本の女子ラグビーが世界の中で上昇するためのヒントになるだろう。
2月に渡航し、ハミルトンへ向かう。大学(大体大)卒業後、クライストチャーチに6か月留学したことがあるから、王国で暮らすのは2回目になる。
かつてのパールズのチームメート、いまはチーフス・マナワでプレーするジョージア・ダールズ(現トンプソン)らと3人でフラットに住む予定だ。
11月、12月とパールズは女子ラグビー関西大会(15人制)を戦い、4試合に圧勝。優勝し、大会7連覇となった。
齊藤は関西大会の全試合に出場した。
1月下旬開幕の全国女子大会も控える。王国での挑戦の前、まずは国内でやれることをやり切る。