各国代表 2023.07.28

【プレビュー】ブレディスローカップ第1戦、攻撃型SHに注目

[ 松尾智規 ]
【プレビュー】ブレディスローカップ第1戦、攻撃型SHに注目
NZの熟練SHと新人。キャム・ロイガード(右)にアドバイスするアーロン・スミス(Photo: Getty Images)


 ザ・ラグビーチャンピオンシップ(以下、TRC)は、7月29日にいよいよ最終節を迎える。ここまで2連勝のニュージーランド(以下、NZ)代表“オールブラックス”が勝利すれば優勝となる。
 最終戦の相手は、タスマン海峡を挟んだ隣国のライバルであるオーストラリア代表“ワラビーズ”で、伝統の「ブレディスローカップ」を兼ねて戦うことになる。NZ国内において、ワールドカップ以外で最も大切なカップと言われているだけに、注目度は非常に高い。

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◆期待の新人SHロイガードが初のベンチ入り

 試合2日前の7月27日、オールブラックスのメンバー発表があった。
 先発メンバーの変更はわずか1人。スプリングボックス(南アフリカ代表)戦で首のけがをしたキャプテンのサム・ケインが大事をとって今週は欠場。代わりにダルトン・パパリイが背番号7をつける。今年、ケインが完全復活の兆しがあるだけに、パパリイはこのチャンスを活かして存在感を示したいところ。

 控えの選手に目を向けると、攻撃型SHのキャム・ロイガードがベンチ入りを果たした。3試合目にしてようやくチャンスを与えられ、出場すればテストマッチデビューとなる。今季のスーパーラグビー・パシフィックで強気のプレーが光り、トライの取れるSHとして名を売った。チームを勢いに乗せることができるロイガードがテストマッチレベルでどこまで通用するのか楽しみだ。

 その他の控え選手を見てみると、PRにベテランのオファ・トゥンガファシが新人のタマティ・ウイリアムズに替わってベンチ入りとなった。新人の巨漢PRウイリアムズの成長が著しいだけに、ベンチ入りしたPRネポ・ラウララ、トゥンガファシはワールドカップのスコッド生き残りをかけてアピールが必須になってくる。

 LOの控えには、アキレス腱のけががありながらもスーパーラグビー・パシフィック決勝に強行出場したサム・ホワイトロックのけがが癒え、ベンチ入り。ワールドカップに向けて明るい材料となりそうだ。クルセイダーズのチームメイトであるスコット・バレットの充実ぶりがあり、ホワイトロックがベンチに控えるなど贅沢な布陣となる。

 パパリイの先発でFW第3列の控えが空いた。その穴を埋めるのは、持ち味の安定感抜群のプレーに加えて、課題の激しさも身につけたルーク・ジェイコブソンが今季初登場でベンチ入りを果たした。3つのポジション全てで高いレベルでプレーすることができるジェイコブソン。ワールドカップスコッド入りの当落線上の位置にいることから、この試合にかける意気込みは大きいだろう。

 注目されていたBKの控えは、スーパーラグビー・パシフィック決勝で危険なタックルをしてレッドカードをもらったCTBアントン・レイナート=ブラウンが謹慎処分が明けてベンチ入りする。CTBのスペシャリストでないジョーディー・バレットとリーコ・イオアネのコンビが好調だが、レイナートブラウンがCTBのスペシャリストの意地を見せてレギュラー争いに食い込めるパフォーマンスができるかも注目したい。

ブレディスローカップ対決を前に、顔を合わせた豪州のジェームズ・スリッパー(左)とNZのアーディー・サヴェア(Photo: Getty Images)

◆好調オールブラックスの優勢となるか

 TRC2連勝のオールブラックス(対アルゼンチン 41-12、対南アフリカ 35-20)は、完璧と言えるくらい良いパフォーマンスをした。この成績を見る限りでは、2連敗中のワラビーズに敵地でも快勝になるのではないかとの声がNZ国内のメディア、ラグビーファンの間で多く聞かれる。

 しかし、ワラビーズが、このまま沈んだままでいるとは思えない。
 今年から久々にワラビーズの指揮官に戻った名将エディー・ジョーンズHCの存在があるからだ。
 20年ほど前にオールブラックスを何度も苦しめた記憶がよみがえる。
 2003年のワールドカップの準決勝、前回の2019年大会の準決勝(当時はイングランド代表の指揮官)でオールブラックスはエディーにまんまとやられている。

 メンバー発表後に微笑みながら記者の問いに答えるジョーンズHCの姿は不気味だ。言葉も巧みに使って相手にプレシャーをかけるのが相変わらずうまい。いくら好調と言えどもオールブラックスは、内心ジョーンズHCのことを気にしているだろう。

 対するオールブラックスは、ワールドカップに向けてメンバーを固定してきた感がある。長年の悩みの種であった6番のポジションは、スプリングボックス戦で激しい突進を何度も見せたシャノン・フリゼルが今季は充実している。この試合でも継続して良いパフォーマンスができればレギュラーの座をつかむことになりそう。

 注目の司令塔争いは、リッチー・モウンガが10番、ボーデン・バレットは15番が安定してきた。2試合ともダブル司令塔がうまく機能していることから、スーパーラグビー・パシフィックで素晴らしいパフォーマンスをしたSO/FBダミアン・マッケンジーが23人の中に入れないほど層が厚い。
 
 スプリングボックス戦に続いて、今回の試合もダブル司令塔からのキックを多用していくのか、それとも展開を重視していくのか、どんなラグビーを見せてくれるのか興味深い。

 また、オールブラックスの近年の課題だったFWのコリジョンエリアでの劣勢はTRCの2試合を見ている限りは改善されている。
 今回、フィジカルに強い選手を多く入れてきたワラビーズFW陣とのバトル戦がこの試合の最大の見所になりそう。
 今回のワラビーズの司令塔は、ラインブレイクのできる能力がある新人のカーター・ゴードンが大一番に抜擢された。ゴードンとハーフ団を組むのは、SHテイト・マクダーモット。同じく攻撃的なランが武器となる。この2人が目立つ展開になれば、ワラビーズの勝利も見えてくるかも知れない。

 ブレディスローカップを保持しているオールブラックスが1戦目に勝利した時点で今年もカップをキープできることになる(今年は2試合制。ワラビーズがカップを奪取するには、勝ち越しが必須。保持しているオールブラックスは1勝1敗でもカップを確保できる)。

 ワラビーズは、2002年までカップを長年保持していたが、2003年以降はずっとオールブラックスがキープしている。ジョーンズHCが戻ってきてカップを取り戻すには、まずは1戦目を必死で勝ちにいくだろう。

 開催地はメルボルン・クリケット・グラウンド。85,000人を超える観衆を背にホームのワラビーズが勝利できるか。ジョーンズHCが今回どんな戦略で挑んでくるのか楽しみだ。

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