海外 2023.05.30

39歳の元オールブラックス、12年ぶりスーパーラグビー出場。ジョン・アフォア(クルセイダーズ)

[ 松尾智規 ]
39歳の元オールブラックス、12年ぶりスーパーラグビー出場。ジョン・アフォア(クルセイダーズ)
持ち味である機動力の高さも見せた。(Getty Images)
役目を終えてベンチに下がったアフォア。試合中にインタビューを受けた。(撮影/松尾智規)



 5月27日、ニュージーランド(以下、NZ)のクライストチャーチでおこなわれた、クルセイダーズ×ワラターズ戦で赤黒のジャージを着たジョン・アフォアがスーパーラグビーの史上最年長の出場記録(39歳223日)を作った。

 10年以上前にスーパーラグビーで青のジャージを着ていた大ベテランのタイトヘッド(右プロップ)は、今年の9月に40歳を迎える。

 アフォアのスーパーラグビーデビューは2004年。クルセイダーズの最大のライバル、ブルーズのメンバーとしてピッチに立った。
 そのブルーズでは、100試合を超える出場を果たしたレジェンドだ。2005年にオールブラックスに選ばれ、積み重ねたキャップは38ある。

 2011年、自国開催のワールドカップ優勝を達成した後にヨーロッパに移籍した。
 様々なチームでプレーを重ね、現在はフランスの2部リーグ “RCヴァンヌ” でプレーを続けている。

 今季のクルセイダーズは、プロップ陣のケガで悩まされていた。
 フレッチャー・ニューウェル、ジョージ・バウアー、ジョー・ムーディーの3人のオールブラックスを含め合計4人も離脱している。危機の状態といっても過言ではない。

 先週末、アフォアが所属するRCヴァンヌはシーズンを終えた。
 直ぐに使えるPRを探していたクルセイダーズは、早速アフォアにSOSを出した。

 5月25日のメンバー表の背番号3に名前があったのは、今季急成長でオールブラックス入りが有力視されている140キロの巨漢、タマティ・ウイリアムズだった。
 しかし、スコット・ロバートソン ヘッドコーチ(以下、HC)は、今季全試合出場しているウイリアムズをプレーオフの前に休養させたいと思っていた(メンバー発表時点ではアフォアとの契約が成立していなかった)。

 アフォアがニュージーランドに帰国したのは試合のわずか2日前の5月25日、木曜日の午後だった。ヨーロッパからのフライトは長時間であるため、大ベテランの身体には堪えたに違いない。

 アフォアの準備は、試合前日のキャプテンズランの一回のみだった。しかし、ロバートソンHCは、アフォアに背番号3を託す。先発出場の決断を下した。
 2011年以来、12年ぶりのアフォアのスーパーラグビー復帰の舞台が整った。

 試合当日のアフォアのパフォーマンスは、準備不足どころか問題なくスクラムを組み、ときには相手の反則を誘った。さらにはボールを持ってのラインブレイクも。スタジアムを沸かせた。
 40歳目前にもかかわらず、テンポの速いスーパーラグビーで通用するフィットネスと身体の強さ。ただただ驚くばかりだ。

 急遽出場となったもののアフォアは、49分間プレーをした。年齢の事を考えると、十二分に仕事をこなしたと言える。

 試合中、ベンチに座るアフォアに対し、Sky Sport NZの放送席からインタビューがあった。
 解説者の元オールブラックスSH、ジャスティン・マーシャルとの会話の中で、「エコノミークラスの飛行機は自分でお金を出してきたよ」と答えると、笑いが起こった。
 アフォアは「クルセイダーズだろうが、ブルーズだろうが関係なかった。ニュージーランドの人や家族の前でプレーしたいと言う気持ちだった」と、熱く続けた。

 カンタベリアン(カンタベリー地区の人のニックネーム)は、基本的にブルーズが嫌いな人ばかりだ。
 しかし、アフォアはクルセイダーズの危機を救ってくれた。クルセイダーズのサポーターで埋め尽くされたスタンドからは、元ブルーズの勇者に惜しみない拍手が送られた。

 試合は序盤、ワラターズに勢いがあった。
 しかし、途中からミスが多くなり失速。赤いジャージーがトライを重ね、42−18のスコアでクルセイダーズが勝利した。

 試合後のインタビューでアフォアは、「今回の出場は誰にも知らせていなかった」と話した。
 スーパーラグビー復帰のサプライズは大成功に終わった。まるでドラマのような出来事。このサプライズに、NZ国内のラグビーファン&元選手も驚きを隠せない様子だ。

 アフォアは、自身のキャリアを今年で終えると決めているからこそ、今回クルセイダーズからSOSが来た時に『NO』と言えなかったようだ。
 かつてのライバルチームでのプレーを存分に楽しんだ。長年ヨーロッパでプレーしていた事から、キウイ(NZ人のニックネーム)アクセントの英語でなくなっていたのも印象的だった。

 アフォアはブルーズ時代、優勝を経験していない。
 引退を間近に、クルセイダーズの選手として悲願のスーパーラグビー優勝を達成することができるだろうか。
 今後も出場するチャンスがあるかもしれない。40歳目前でハッスルするアフォアを応援したい。


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