国内 2023.05.23

「ラグビーって、そういうものだと思ってやってきました」。立川理道(スピアーズ主将)の行動は、歓喜の瞬間も変わらず

[ 編集部 ]
「ラグビーって、そういうものだと思ってやってきました」。立川理道(スピアーズ主将)の行動は、歓喜の瞬間も変わらず
7シーズン、チームを率いている立川理道主将。優勝を決めた試合終了直後でも、レフリーのもとへ駆け寄った。(撮影/松本かおり)



 80分が経ったことを告げるホーンが鳴った。
 SH藤原忍が放ったパスを受けたSOバーナード・フォーリーが右サイドに蹴り出した。

 オレンジの大小の歓喜の輪がいくつもできた。
 5月20日、クボタスピアーズ船橋・東京ベイが埼玉パナソニックワイルドナイツを17-15と下し、リーグワン優勝を手につかんだ。

 1978年に創部したチームにとっては、45年かけて掴んだ日本一の栄光。立川理道主将は2012年にチームに加わり、一歩一歩階段を昇って頂点にたどりついた。

 優勝の瞬間、喜びを爆発させたスピアーズの選手たち。
 その中で立川は、勝利の瞬間こそ近くにいた仲間と握手をしたが、その後すぐに相手チームの選手と健闘を称え合い、すぐにレフリー、アシスタントレフリーのもとへ走った。

 キャプテンだ。
 いつもやっていること、と言うのは簡単だ。
 しかし、待ちに待った瞬間を迎えた。いつもと違う行動をしても不思議ではなかった。

「キャプテンだから、ということはあるかもしれません」と、本人は言う。
 外へ蹴り出したのが自分だったら、もしかしたら喜んだかもしれませんね。そう言って穏やかに笑う。
 仲間たちが泣きじゃくっていたので、逆に冷静でいられたのかも、と言う。

「(キックから試合終了の)あの瞬間、俯瞰して見ていられたんです。(終了の)ホーンが鳴って蹴り出すまで、僅かな時間かもしれませんが、終わるなあ、と感じていました」

 感情が爆発するようなことはなかった。
「いつものように、相手チームの選手のもとへ行き、レフリーに挨拶しました」
 自分の中で、そうすることが優先順位が高かった。

「どんな試合もそうですが、味方と喜ぶのは、ロッカーに戻ってからでも、翌週のクラブハウスでも、できますから」

 だから、試合を終えれば、まず、相手チーム、レフリーのところへ足を運ぶ。
「自然にやってきたことです。それはファイナルでも変わりません」

「ラグビーって、そういうものだと思ってやってきました」と話す。

 4人兄弟の末っ子だ。一つ上の直道さんの背中を見て育った。
「兄が高校3年で、僕が2年。試合が終わると、兄がレフリーのところへ握手をしにいく姿を見ていました。次男(誠道さん)がレフリーということも、(行動の)理由の一つかもしれません。(一緒にゲームを作る)レフリーや対戦相手をリスペクトするのがラグビー。そう思ってきました」

 立川主将は、5月22日に開催された『NTTジャパンラグビー リーグワン 2022-23 アワード』でディビジョン1のMVPに選出された。

「自分が選ばれるなんて、まったく予想していませんでした。それ以前に、その表彰があることすら頭になかった。式次第に自分の名前があって驚きました」

 壇上に立ち、優勝チームの主将、MVPとして表彰されたことを受け挨拶した。
 決勝の夜、翌日と、祝福の時間が続いたことを伝えた。仲間への感謝も。そこでも、はしゃぐ様子はなかった。

 玉塚元一リーグワン理事長から、MVPの賞金として100万円が贈られた。
「その瞬間、携帯(電話)にめちゃくちゃたくさんの連絡が入りました。『どこいく?』、『何にする?』とか。優勝した時よりはやかった。選手LINEにも『来年のパーティーはこれで』とありました。みんな、勝手なこと言っていました」

 スピアーズのこと、チームメートのこと、ラグビー仲間のことが大好きだ。
 それが伝わる笑顔がそこにあった。




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