国内 2023.04.30

ラグビー始めよう、続けよう ~2023年春、東京都立大ラグビー部~

[ 見明亨徳 ]
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ラグビー始めよう、続けよう ~2023年春、東京都立大ラグビー部~
すでに1年生選手10名入部を達成した都立大(撮影:見明亨徳)


 東京都立大の話に入る前に。4月22日、強豪・早稲田大ラグビー部は4月22日、ホームに韓国から高麗大を迎え定期戦をおこなった。今季初の15人制の試合、入部したての選手33名、スタッフ6名らが先輩の試合を観戦、大学日本一を目指す部の思いを共有した。

 翌週4月27日、東京都下、八王子市南大沢にある都立大球技場。午後5時から新入生歓迎(新歓)行事の一つ「第2回セブンズ大会」がおこなわれていた。
 今年春、都立大は大学院から2年生まで16名、マネージャー4名の部員でスタートした。タレント逸材豊富な早大1年生の半分だ。15人制を戦うには「ポジション的に不可能」とPR船津丈主将(仙台三高)が話す。そのためには「10名以上の新入生部員獲得」を新歓の目標に置いている。

セブンズ大会には選手11名、マネージャー5名の1年生が参加(撮影:見明亨徳)

 この日、グラウンドにやってきた1年生は選手希望11名、マネージャー希望5名だ。2年生から満を持して早めに入部した選手も参加。
 最初に先輩(選手・マネージャー)を含めて30数名を4チームに分けて腰につけたタグを取る鬼ごっこから始める。先輩たちは後輩たちに襲いかかりタグを奪う。4チームが一緒におこなうので中には2チームが組んで一番強そうなチームに仕掛ける。その様子を見てまったく動くそぶりがないチームも。
 続いて2チームに分かれてタグラグビーを実施。マネージャーたちもボールをもらうと果敢に相手ディフェンスを抜きにかかる。見ているとハードな時間を過ごす。
 最後は選手のみでタッチラグビーからセブンズへ。ラグビー初心者の1年生がトライを奪うシーンも見られた。

 「ラグビーを経験していない子もバスケットや陸上などのスポーツをしている。動きやスピードが良いですね」と話すのは今季4期目の指導を任された藤森啓介ヘッドコーチ、37歳だ。早大ラグビー部出身、同期に今のラグビー熱をもたらした五郎丸歩らがいる。大阪の早稲田摂陵高監督時代に大阪府4強へ育てた。全国地区対抗で戦う国際基督教大(ICU)の強化にも取り組んだ後、当時の都立大学生たちの熱意にほだされ南大沢にやってきた。以後はコロナ禍でも対話、チームビルディングも積極的に採り入れて学生を教えてきた。そして昨年度は春、東京都内の国公立大大会初優勝。秋の関東大学リーグ戦3部で最高位の3位を勝ち取った。

 といっても都立大を常時、見ているわけではない。普段の活動は学生たちが中心。首都圏中心に公立の進学校から入学者が多い都立大。ラグビー強豪校から経験者も入学するには「入試突破」という壁がある。それだけに新歓の仕事は大切だ。「昼食時間に生協食堂で1年生たちに声をかけつづけいます」という2年生たち。

 実際に楕円球に触ってもらう体験練習をもちろん「バーベキュー」「しゃぶしゃぶ食べ放題」「焼肉食べ放題」とOBらも支援し勧誘に励んできた。
 その成果が27日だ。選手希望者11名中10名が入部を決めていた。経験者はわずか3名だ。

軽快なランでトライを奪う市川光琉はラグビー初心者(撮影:見明亨徳)

 タッチラグビーなどでステップを切りトップスピードでトライを奪っていた市川光琉は北海道旭川龍谷高からやってきた。ラグビー部は北北海道代表として全国大会6度の出場がある。自身は小学生の時にサッカー、中高はいろんなスポーツに親しんだ。「瞬発力に自信を持っています。スピードをいかしたWTBが希望。高校は駅伝も強いので陸上競技用の施設が充実していたおかげ」と話す。部員たちの優しさも魅力という。

 1年生の輪の中心のひとり、人見勇輝は都両国高で硬式テニスに打ち込んだ。ラグビーはお母さんの影響がある。リーグワン浦安D-Rocksを持つNTTグループで働いている。前身のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス時代から試合を一緒に見てきた。「フィジカルをいかした局面を打開できるラガーマンになる」。

 ラグビー全国大会・花園出場を続ける名門校から未経験者もやってきた。茨城・茗渓学園卒の山田晃大はPR希望だ。「バスケット部でした。高校のラグビー部同級生たちと体育の授業でラグビーを経験しています。高校で培ったスキルや知識をいかしていきたい」という。

FL萩原唯斗、國學院久我山でレギュラーも任された。同期を引っ張る(撮影:見明亨徳)

 経験者もいる。強豪・國學院久我山高の萩原唯斗は3年生春の大会まで強豪でFLの先発を任されてきた。そのあとはケガもあり仲間たちが出場した冬の花園、ピッチに立つことができなかった。都立大には学校推薦で合格した。ラグビーをしたくてたまらない。練習会では位置取りも一歩先をいく。的確な指示を出す。初心者の同級生には丁寧に知識を伝えていた。「都立大ラグビー部を伝えるSNSや記事を見てここで続けるのが楽しいと思いました。高校までのラグビー部とは違います」。早大や明大といった強豪に進んだ同級生の活躍を期待する、自分も思いっ切り楕円球を追いかける。

 すでに上級生といった落ち着きだったのが長身、米倉慶一郎。米倉も北海道から。北嶺高でLOとして3年間プレーした。南北海道地区、札幌山の手高、函館ラ・サールに立命館慶祥高の3強の背中を追ってきた。同校は昨年度の全国大会予選札幌支部準決勝で全国への初切符をつかんだ立命館慶祥に敗れた。大学はもう1ランク上の大学を希望していたが南大沢に落ち着いた。「高校時代は不完全燃焼もあった。都立はアットホーム。1年生から試合に出ます」。春、最初の志望校と対戦する機会もありえる。

 2年生になり満を持してラグビー部に入部したのはウズベキスタン出身のオリモブ・ムハマドオリム。すでに部員からはオリムと呼ばれる。日本に留学、大学と大学院を卒業して日本企業に就職した父親のもとに小学2年生の時に来日した。楕円球とは神奈川・日大藤沢中で初めて触れた。SHやSOでプレー。高校は特別進学クラスに入る。勉強中心もひとりで鍛えることが可能な空手部に。そして大学に入るとまずは「体を作る」とパワーリフティング部に入り鍛えてきた。「すぐに試合に出たい。2部との入替戦出場に貢献します」と頼もしい。

2年生から入部したオリモブ・ムハマドオリム。ウズベキスタン出身(撮影:見明亨徳)

 選手を支えるマネージャー。5名が27日に参加した。すでに入部を決めたのは4名。相澤穂香(都・朋優学院高)は「中高と吹奏楽部でした。大学では文化部と違うことをやってみたい。新歓で知ってラグビー部は雰囲気がいい。マネージャーの先輩たちはみんな優しいです」。ラグビーの魅力は「体をぶつけあうこと」と話す。マネージャー仲間には長崎の強豪・長崎北陽台卒業生も。同校ではマネージャーは選手の関係者でかつ1学年2名までというルールがあり、かなわず。大学で夢をかなえる。


※ 都立大ラグビー部は現在も部員募集中。
行事はインスタグラム「tmu_rugby_shinkan」で検索ください。
https://www.instagram.com/tmu_rugby_shinkan/

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