国内 2023.03.13
【連載】プロクラブのすすめ⑥ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] 2024シーズンからのリーグのあり方

【連載】プロクラブのすすめ⑥ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] 2024シーズンからのリーグのあり方

[ 明石尚之 ]

――日本代表が長期合宿を通して成果を挙げてきた背景を踏まえると、リーグと代表の並走は議論が難航しそうな印象を受けます。

 確かにバスケやサッカーは国際試合がシーズン中にあっても、長期的に拘束されません。先日バスケは国際試合がありましたが、その時は1部リーグ(B1)を3週間止めただけでした。ここがラグビーとは違う。
 とはいえ、試合時期を長くするには、代表活動との並走は避けて通れません。試合数を増やした方がいいと感じているチームが多いのも事実です。

 リーグやチームにとっては、プラスしかないと思っています。スポンサーや放映権の価値を上げられ、多くの選手にチャンスが巡ってくる。長丁場をどう戦うかを考えることは、各チームの強化にも繋がります。
 代表強化は2015年のW杯からずっと成功していると思いますが、そうではないやり方を模索したり、ファン目線で考えたり。リーグワンがなにを目指すのか、本質的な議論ができればと思っています。

――開催時期については、山谷さんが何度も訴えているテーマですね。ほかにも変えた方がいいと感じていることがあれば教えてください。

 開催時期は屋外スポーツであることも考えれば、お客さんが見やすい時期、寒くなく過ごしやすい3〜5月、9〜11月がベストです。寒かったり、天気が悪いと一気に着券率が下がるのは、この2年で痛感してます。

 ほかは細かいところですが、スポンサー関係ですね。他競技と比べると、試合時のチームのスポンサーを露出する場所が少ないです。例えば、記者会見やプレイヤー・オブ・ザ・マッチの裏に立てるボードは、他競技であればホームチームのスポンサーのロゴなどが並ぶのですが、リーグワンはリーグのものなんです。選手の入場口周りもそうです。(パートナーシップを締結したTOP14の)トゥールーズではそこもうまく活用していました。もう少し、チーム側の権益を増やせればと思っています。

――興行としてのラグビーの難しさはどう感じていますか。ラグビーは現状、他のスポーツと比べて試合数が少なく、各チームが抱える選手数も多くてコスト(人件費など)がかかります。

 確かにバスケはコンパクトな規模です。選手は1チーム12人、観客も1試合3000〜4000人呼べれば大盛況。ラグビーの方がスケールは大きいので難しさはありますが、可能性は十分にあります。
 ラグビーのコンテンツとしての価値や評価は本当に高い。しっかりと見やすい時期に面白い試合をして、お客さんに楽しんでもらえること(演出)ができれば、絶対に人気が出ます。

 おいしい料理はあるんです。ただ、ついこないだまでは、まかない料理のように身内だけで食べていた。きちんとお客様に食べていただこうということで始まったのがリーグワンです。味見をしてもらったり、メニューを説明したり、内装をよくしたり、店員の愛想をよくしたり…。しっかりプロモーションできれば必ずその店は繁盛するはず。いまはその一つひとつを積み重ねている段階だと思います。

――リーグワンが創設されて1年半が経ちました。いい方向に向かっていると感じますか。

 それは絶対にいい方向に向かっています。一番はやはりホーム&アウェーにして各チームが興行を始めたこと。コロナの影響はありますが、チームの色が出始めていますよね。しっかり収益を求めて、自分たちの価値を高められている。
 ただ収支を合わせるのは難しく、お客さんが少なかったり、会場の演出にお金をかけ過ぎれば当然赤字になる。どこのチームもそこのバランスを試行錯誤しているところだと思います。我々はこの間の試合のように4000人でも利益が出るような状況になってきました。興行での満足度や収益を上げることをだいぶ学習できてきていると思います。

 次のステップは、リーグ全体として売り上げをどう上げていくか、より良くしていくためにどうするか。先ほど話した試合数だったり、企業名を取るのか、チームを会社化するのかといったチームのあり方も考えていかないといけない。そうしたステップを踏まなければ成長は続かないと思っています。



PROFILE
やまや・たかし
1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任

静岡ブルーレヴズ立ち上げの際の記事はこちら(ラグビーマガジン2021年9月号)
リーグワン2022を振り返った記事はこちら(ラグビーマガジン2022年7月号)

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