国内 2022.11.02
【連載】プロクラブのすすめ② 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] 「来年のW杯中になにができるか」

【連載】プロクラブのすすめ② 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] 「来年のW杯中になにができるか」

[ 明石尚之 ]

――前回のインタビュー時にお話ししていた、中長期的な視点についてもうかがいます。考えているのはワールドカップ2023(以下、W杯)の前後でしょうか。

 そうですね。来年のいま頃なにができるか、というのはよく考えています。W杯の真っ最中で、ラグビーに注目が集まっている状況ですよね。日本代表やW杯だけではなく、ラグビーそのものが注目されるこの機会を、どうファン獲得につなげていくか。
 W杯の前後に海外のチームを呼べないか、逆にわれわれが海外に出て試合ができないか、というのは考えます。呼ぶとすれば、興行としてしっかりやる。行くにしても、行く意義をしっかり伝えることでツアーをサポートしてくれるスポンサーがつけば、それは面白い取り組みになると思っています。
(TOP14の)トゥールーズとわれわれはヤマハ時代から協定を結んでいて、私も11月に一度トゥールーズに行きます。来年、それ以降になにかできることはないかを議論する予定です。

――ワールドカップ以降のことも考えている。

 いま考えているのは、われわれの練習環境を改善していく必要があるなと。D-Rocksさんやワイルドナイツさんがものすごい施設を作ったり、神戸さんも新しいクラブハウスを作りました。磐田市の中にも、医療、コンディショニング、ニュートリションなどを揃えた日本有数の練習環境、トレーニング施設を作りたい。それも、地域の人や高校生、ユースチームなども利用する地域に開かれた施設です。

 自分たちが練習場として使う時間はごくわずかですから、その施設をサテライトチームが利用するのもありだなと。いわゆる、チームの2軍を作るのはどうかなと思っています。ルール上できるか分かりませんが、社会人リーグに参戦するとか。これも選手の登録制度上、難しいと思いますが、サテライトチームで頑張った選手がいれば1軍に呼ぶといった入れ替わりがあってもいいなと。

 実はバスケの栃木(ブレックス)にいた時にまったく同じことをやりました。当時の日本リーグは1部と2部で入替戦がなかったので、栃木は1部と2部の両方にチームを持っていた。トップのリーグに行けなかった選手がサテライトチームに入ってくれて、そこで頑張った選手が1軍に上がったり、他のチームでエースになったりといった経験がありました。
 例えば茨城ロボッツで頑張っている多嶋朝飛選手や、群馬の並里成選手。彼は高卒でプロになりましたが、大活躍して他チームに引き抜かれました。栃木(現・宇都宮)の遠藤祐亮選手は、Bリーグのベストディフェンダー賞を2度も受賞しています。3人とも栃木のサテライトチームの出身でした。

 リーグワンは1チーム約50人の選手が在籍してますが、シーズン中にメンバーの23人に入る選手は、毎年35人くらいです。残り15人はまったく試合に出ないでシーズンが終わってしまう。だからラグビーこそ、サテライトチームを活用すべきだと思います。特にわれわれはヤマハ時代から選手の育成が得意です。
 いまは海外出身選手も増えていて、優秀な選手でもリーグワンのチームに入団できない日本人選手もいます。それでも諦めないで上を目指したいと思った時に、サテライトチームであれば努力して力をつければすぐに目に止まります。チャンスを掴む選手が必ず出てくる。大卒でリーグワンのチームに入れなくて、もう下のレベルでやろうと考えてしまうと、なかなかそうはなりません。

 サテライトチームなりに小さなスタジアムでも興行ができたらと思っています。プロ野球のイースタンリーグのように、2軍を応援したいファンもいます。2軍時代から見ていた選手が1軍の試合に出るとなれば、すごく愛着も湧きますよね。そういう選手が1軍の試合に出るとわーっと拍手が起こる。そうした雰囲気を作れたらいいなと。ラグビー界の選手育成の新たな発想を考えていけたらなと思っています。

 ただ、ここまでの話は完全に妄想です(笑)。それでも話してみると、いいねとか、この企業がスポンサーしてくれるんじゃない?とか、いろんな反応をもらえる。妄想から構想に変えることを、これから頑張ってやっていこうと思っています。



PROFILE
やまや・たかし
1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任

静岡ブルーレヴズ立ち上げの際の記事はこちら(ラグビーマガジン2021年9月号)
リーグワン2022を振り返った記事はこちら(ラグビーマガジン2022年7月号)

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