国内 2022.09.29
兄弟で挑む最初で最後の対抗戦。楢本鼓太朗&幹志朗[筑波大FL・SO]

兄弟で挑む最初で最後の対抗戦。楢本鼓太朗&幹志朗[筑波大FL・SO]

[ 明石尚之 ]
2人とも対抗戦デビュー戦は1年時の開幕戦・明大戦。写真は弟・幹志朗(撮影:松本かおり)

――鼓太朗さんが修猷館を目指したきっかけは。

 自分が通った小学校も中学校も修猷の近くでした。偶然、同級生に修猷を目指す子も多くて、ラグビーも強かったし、勉強もする、行事も盛ん。それで興味を持ちました。

――それから筑波大に進学しました。部員の多くが学ぶ体育専門学群ではなく、人文・文化学群です。

 正直、ラグビーは高校で辞めようと思ってました。でも筑紫との花園予選準決勝で、前半7-5で勝って折り返したのに、後半差をつけられた。負けたら悔しくて、やっぱり続けたいなと。お金のこともあったので、やるなら国立の筑波だった。内申点が取れていたこともあって、一般公募推薦で受験しました。人文にしたのは歴史が好きだったからです。

――内申点が良かったということは、修猷館の中でも成績が良かった。

 定期テストでたまたま点を取っていただけです。基本的に負けず嫌いなので。

――賢い兄のことは幹志朗さんの目からはどう見えていた。

 マジですげえと思いましたね。最初は自分も修猷に行きたかったけど、全然届かない(笑)。ちゃんと努力してるからすごいなと。

――一方で幹志朗さんは昨年まで東福岡の10番を背負い、U19日本代表候補にもなりました。鼓太朗さんは弟に対してラグビー面での嫉妬はなかったか。

 そういうのはあまりなかったですね。ただ、ヒガシで2年からメンバーに入って、その年の花園ですでに主力。自分の知っていたカンジローのイメージと全然違ったので、これはマコトかと。自分とはプレースタイルもまったく違うので、本当に家族なのか、と思いました(笑)。驚きの方が強かったです。

――鼓太朗選手はハードタックラーで、幹志朗選手はクレバーなプレーメイカー。どうしてここまでスタイルが違う。

 何でですかね(笑)

 分からないんですよね。コタローは体も大きくないのに、ブレイクダウンやディフェンスで身体を張り続けてるから筑波で1年のときから出続けてる。尊敬してます、そこは自分にできないところなので。

 お前もやれよ(身体張れよ)。

――鼓太朗さんがいた修猷館にとっては、幹志朗さんがいた東福岡は絶対に倒したい相手。

 2年生の時に戦ってボコボコにされました。花園予選の準決勝で113-0です。その強さを知っていたので、カンジローはヒガシでは通用しないと思った。それでも出ていたので、ヒガシのコーチの見る目を疑いましたね(笑)。

――幹志朗さんはなぜヒガシを選んだ。

 ジュニアの福岡県代表に入った時点で、ラグビーを頑張ろうと決めました(12月の全国ジュニアで優勝)。父親からも自分のプレースタイルはヒガシに合ってると言われてました。
 でも確かに、1年生のときは中学でのプレーがまったく通用しなくて苦労しました。何ひとつ自分の良さが分からなくなった。本当にヒガシで良かったのかなと思うことも何度もありました。

――転機があった。

 コロナ禍になってからです。一度ラグビーから離れたことで、頭を整理することができた。オンライントレーニングだけは参加して、それ以外は映画鑑賞したり散歩したり。ラグビーをやっていたらできないような生活をしたら、リラックスできました。再開した後のラグビーが楽しくてしょうがなかった(笑)。そうしたら自分の良いところが自然と出てきて、夏合宿を通して自信を持つこともできたんです。

――2年生の花園では東海大仰星とロスタイム18分の死闘を演じました。

 試合をしているときはまったくそんな感じがしなくて。ただ一生懸命プレーしていた。終わってから考えてみると18分ってすごいなと。そのくらいあっという間で、もっとしたかったです。

――ロスタイム、幹志朗選手が裏へキックして西端選手がインゴールでボールを抑えたシーンがありました。結果的にトライは認められませんでしたが(ボールを追っていた仰星の選手のプレーを妨害したとしてオブストラクションの反則に)、なぜあの時間帯でキックを選択できた。

 まず、裏へのキックのサインが聞こえてました。同点だったし、自分も何かを変えなければいけないなと。仰星さんのディフェンスがすごく良くて攻めあぐねていた。ただ、向こうもキックはないと思って全員上がってきていたので、裏に入れてみようと。同点だから相手も蹴り出せない。トライかなと思ったんですけど(笑)。最後、仰星で追ってたのは大畑さん(亮太・筑波大2年)だったので、入学した時に『なんで蹴ったんや』と言われましたね。

――今週末(10月2日)は帝京大戦です。鼓太朗選手は1年生のときから対戦している。昨季はタックルで追い詰めました(7-17で惜敗)。

 1年の時の試合は思い出したくないですね(22-17で迎えた後半50分にトライを奪われGも決まり帝京大の逆転勝ち)。スクラムでペナルティを取られて、そこから自分はラストワンプレーのときに交代で出ました(後半48分)。それで最後、外に回されてトライされた。去年の試合にも出ましたが、フィジカルの差を感じました。でも今年こそは勝つための準備をしますし、(対抗戦では)最後の対戦なので悔いのないプレーをしたいです。

――幹志朗選手は初対戦。前年のチャンピオンです。

 楽しみです。高本幹也さんは大学ナンバーワンの10番。限りなく成功に近い選択肢を毎回選ぶ、すごく参考にしている選手です。実際に戦えるのはすごく楽しみ。でももちろん勝ちます。自分が余裕を持たないと、チームに余裕は生まれないので、いい意味でリラックスしてゲームに臨みたいと思います。

早大戦は雨の中での戦いだった。写真右が兄・鼓太朗(撮影:松本かおり)

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