国内 2022.09.08

【日本選手権予選・東京大会】車いすラグビー予選大会で、次世代プレーヤーが躍動。

[ 張 理恵 ]
【日本選手権予選・東京大会】車いすラグビー予選大会で、次世代プレーヤーが躍動。
「ハリケーンズの一員として日本選手権で良いラグビーをしたい」とザチャリー・マデル。(撮影/張 理恵)
運動量が増した倉橋香衣はディフェンスの要だ。(撮影/張 理恵)
緩急に磨きをかけハイポインター選手賞を獲得した橋本勝也(右)。(撮影/張 理恵)
橋本とマデルのマッチアップが試合をヒートアップさせた。(撮影/張 理恵)
新人プレーヤーたちの成長が光った(左:青木颯志、右:若狭天太。(撮影/張 理恵)
堂々としたプレーで公式戦デビューを飾った奥原悠介。(撮影/張 理恵)
日本代表でも活躍する中町俊耶(左)と羽賀理之(右)のキャプテン対決。(撮影/張 理恵)



 まばゆいスターの輝きに、キラリと光る原石。
 車いすラガーマンたちが、十人十色の輝きを放った。

 9月3日と4日、「渋谷区長杯 第5回車いすラグビー大会 兼 第24回車いすラグビー日本選手権予選 東京大会」が渋谷区スポーツセンターで開催された。
 クラブチーム日本一決定戦「日本選手権」(2023年1月)の出場権をかけておこなわれた東京大会には、TOHOKU STORMERS(東北)、AXE(埼玉)、Okinawa Hurricanes(沖縄)の3チームが臨んだ。
 2回の総当たり戦・全6試合の結果、TOHOKU STORMERSとOkinawa Hurricanesが本大会への切符を勝ち取った。

 車いすラグビーの大会としては昨年11月の「2021ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」以来、約9か月ぶりに有観客でおこなわれたとあって、会場には親子連れや手作りの応援グッズを持ったファンが数多く訪れた。
 人々の心を鷲づかみにした東京パラリンピック日本代表選手や、ルーキーたちの初々しくも頼もしいプレー、さらに海外のスター選手まで加わり、観客の期待を上回る白熱した試合が繰り広げられた。

“予選”ということを忘れさせるほどの接戦を制して4戦全勝でトップ通過を果たしたのは、日本選手権で5回の優勝を誇る強豪チーム、Okinawa Hurricanes(以下、ハリケーンズ)だ。
 2019年におこなわれた21回大会に続き、“ザック”の愛称で親しまれる世界トッププレーヤー、カナダのザチャリー・マデルが参戦し、国際試合さながらの白熱したゲームを演出した。

「日本のチームは強いので、プレーするのが楽しみ」だと語るマデルは、昨年の東京パラリンピックにカナダ代表として出場し、絶対的エースとして活躍した。
「無観客ではあったが日本の皆さんがサポートしてくれて、他の国の選手たちと再会しハイレベルなラグビーができた。すばらしい時間だった」
 東京2020大会時に伝えることができなかった感謝の気持ちを表すかのように、世界トップレベルのスピードやパス、体幹を活かした鮮やかなチェアワーク(車いす操作)で日本のファンを魅了した。

 マデルとラインナップを組み、アグレッシブなプレーで公式戦デビューを果たしたのが、高校2年生の奥原悠介だ。
 中学2年から車いすラグビーを始め、コロナ禍という大きな壁が立ちはだかる中で基礎練習を積み重ね、ようやくこの日を迎えた。緊張した表情でコートに立った奥原だったが、右・左・右・左…と車いすをこぎ初トライを決めると、試合ごとにプレータイムを延ばし、チームの一員として本大会の出場権獲得に貢献した。

 前回の21回大会(※)では予選ラウンドでマデルが負傷し8位に終わったハリケーンズ。「楽しく、激しく、沖縄らしいラグビー」で王座奪還を狙う(※新型コロナの影響により22回大会は中止、23回大会は予選大会のみの開催となった)。

 2勝2敗の2位で日本選手権の出場権を獲得したのは、東京パラリンピック日本代表の中町俊耶と橋本勝也を擁するTOHOKU STORMERS(以下、ストーマーズ)だ。
 今大会屈指の好カードとなったハリケーンズとの最終戦は延長戦にもつれこむ大接戦となった。
 なかでも、橋本とマデルのマッチアップは息をのむ迫力。「緩急のつけ方を勉強した」と話す橋本は、マデルを引き付けると、間合いを読みグッとトップギアで振り切ってトライ。ゲームメークにおいてもチームをリードし、貫禄すら漂う存在感を発揮した。

 障がいの異なるプレーヤーが、それぞれの役割を果たしながらボールをつなぐ。ストーマーズらしい連係プレーは、個人技だけではないチーム競技ならではの面白さを再確認させてくれた。
 ハリケーンズ戦では惜しくも敗れたものの、現在持てる力を出し切ったからこその清々しい笑顔で大会を終えた。

 今シーズンのチームの合言葉は「デュエル(duel=勝負、争い)」と、中町キャプテン。戦術・戦略といった“型”だけにこだわるのではなく、まず目の前の相手に挑んで勝つことを追求する。
 練習では1on1、2on2など、相手と戦うという意識を持ち、一つひとつのプレーで勝つことにこだわったと、三阪洋行ヘッドコーチは話す。

「東北に車いすラグビー文化を作りたい」と2017年に結成したストーマーズ。メンバーそれぞれのバックグラウンドと目標がある中で、同じ絵を見て、ともに確認し合いながら「手をつないで」成長してきたチームから、「勝ち方」にもこだわる集団へとステージを変えようとしている。
 前回の日本選手権では3位の成績を収め、今大会でも表彰台を狙うストーマーズがどんなラグビーを見せるのか注目だ。

 最後までくらいつきながらも、本大会出場権の獲得はプレーオフへと持ち越されたのは、東京パラリンピック日本代表の羽賀理之と倉橋香衣を擁するAXE(アックス)。
 メンバーのケガによりファーストラインが組めない状況で臨んだ予選となった。しかし、チームの重たい空気をポジティブに変えたのが、スターティングメンバーを任された高校2年生の青木颯志だ。

 青木は小学6年生の頃から、車いすでおこなうツインバスケットボールでチェアワークやボールハンドリング等の基礎を学んだ。昨年10月、車いすラグビーに転向。何よりもメンタルの強さが持ち味だ。
 キャプテンの羽賀は「気持ちが強い。まだまだな部分はあるが、この1年で成長したので、これからもっと伸びると思う」と期待を込めた。

 スピード、パワー、正確なパス…すべてができる「オールラウンダー」を目指す青木。先月からは、日本の次世代を担う育成合宿にも参加している。今後も目が離せない選手のひとりだ。
 今大会に出場した10名のメンバーのうち6名が、障がいの重い“ローポインター”のアックスにとっては、特にオフェンスでも頼もしい存在になりそうだ。
 12月におこなわれるプレーオフでは、どんなアックスラグビーを見せるのか期待される。

 好ゲームの連続で本大会の熱戦を予感させた今回の東京大会。これで、日本選手権に出場する8チーム中4チームが決まり、10月29日、30日におこなわれる福岡大会(福岡・田川市総合体育館)と12月のプレーオフで、それぞれ2チームずつが本大会の出場権を獲得する。

 車いすラグビーでは、来月10月10日(現地時間)にデンマークで、日本を含む世界12か国の強豪が出場する世界選手権が開幕する。ディフェンディングチャンピオン、そして世界ランキング1位で臨む日本が狙うは連覇だ。
 国内の予選大会で活躍した日本代表選手は、世界へと舞台を移し、日本ラグビーを体現する。

★渋谷区長杯 個人賞
<MVP賞>ザチャリー・マデル(Okinawa Hurricanes)
<ハイポインター選手賞>橋本勝也(TOHOKU STORMERS)
<ミドルポインター選手賞>青木颯志(AXE)
<ローポインター選手賞>若山英史(Okinawa Hurricanes)

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