’27年12月末運用開始の新秩父宮ラグビー場、運営事業者決定。屋根付きの全天候型、人工芝、座席は約1万5000席に
日本スポーツ振興センター(以下、JSC)は8月22日、新秩父宮ラグビー場(仮称)の整備、運営等の事業をおこなう民間事業者を選定したことを発表した。
落札した事業グループは鹿島建設が代表企業となる「Scrum for 新秩父宮」。入札金額は約81億円と、参加した3つの事業グループの中でもっとも安かった。
JSCはこの日、新秩父宮ラグビー場の完成イメージ図も公開。現在の場所よりも北側(現・神宮第二球場 敷地内)に移動され、屋根付きで全天候型のスタジアムとなる。
また、グラウンドは現在の天然芝から人工芝となり、座席数は現在の約2万5000席から当初想定していた2万席も下回る約1万5547席に減少されることも明かされた(イベント時の収容人数は約2万0547人)。
全天候型になることで音楽コンサートやイベント等も開催しやすくなり、ラグビーへの影響も心配されるが、「ラグビーの日程をほかより先に入れることができたり、利用料金を下げること等を考えている。ラグビーの制約になるとは考えていない」とJSCの松坂浩史理事は説明する。
座席数の減少はゴール裏の座席1面が大型スクリーンとなり、座席を設置できなかったことが大きい。松坂理事は「もともと敷地の制約上、4面のスタジアムを作ることが難しかった。フランスのUアリーナを参考に見ても、3面で(事業を)おこなうことが十分可能だった」と話す。さらに、「コンコースの広さ、座席の幅も考慮して、座席数を減らしてもよりホスピタリティあふれる、見る人にとって快適なスタジアムを考えた(結果)」と続けた。
また、人工芝への変更は「(かねてより)ラグビー協会の方から全天候型で人工芝の施設を整備したいという要望があった。われわれもこれからのラグビーを考えながら具体的に検討した上で、それがふさわしいという決断に至った」と答えた。
運用開始は2027年の12月末を予定。テラスなどの付帯施設が現在の神宮球場の敷地内に位置するため、すべての施設が建設される完全オープンは2034年5月末を想定している。着工時期は神宮外苑地区市街地の再開発事業全体のスケジュールを考慮した上で決定するとした。
今回の事業には建設や運営を民間に委託する「PFI方式」が採用され、3つのグループが入札に参加。デザインや機能性、環境への配慮等を評価する技術評価点(400点)と、価格評価点(100点)の合計で審査され、ともに1位の得点を得た「Scrum for 新秩父宮」が約81億円で落札した(詳細は下記表)。
同事業グループは鹿島建設を代表企業とし、三井不動産、東京建物、東京ドームが構成企業として名を連ねる。ほかにも松田平田設計、読売新聞、日本テレビ、エイベックス、ニッポン放送、ソフトバンク、鹿島建物総合管理、ALSOK、東京ドームファシリティーズ、東京不動産管理が協力企業として参画する。
入札には楽天を代表企業とする「新秩父宮STTTARグループ」(ほか清水建設、東急、TBS、博報堂等)と、三菱地所を代表企業とする「新秩父宮ラグビー場(仮称)事業推進グループ」(ほかNTT、電通、大成建設等)が参加したが、いずれも価格評価点で大きく離される結果となった。
「Scrum for 新秩父宮」が提案した新秩父宮ラグビー場の総工費(施設整備費)は489億円。これに併設のスポーツ博物館の維持管理費4億円を足した493億円から、30年間の運営で得る利益(運営権対価)411億円を引いた81億円で、同グループは建設と運営を担う。