国内 2022.08.02

「ふがいない結果」に覚醒。流経大柏・小野塚勇太、日本一への過程にこだわりあり。

[ 向 風見也 ]
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「ふがいない結果」に覚醒。流経大柏・小野塚勇太、日本一への過程にこだわりあり。
全国高校7人制大会の茗溪学園戦で相手を振り切ろうとする流経大柏の小野塚勇太(撮影:黒崎雅久)


 成長の証を示した。

 流経大柏ラグビー部3年の小野塚勇太が、長野・菅平高原での全国高校7人制大会で鋭さをアピール。

 初日の7月16日には予選プールを2戦全勝とし、2日目のカップトーナメント初戦では効果的なジャッカルとフットワークを披露。岐阜工を40-5で下す。

 続く2回戦では、國學院栃木に12-17と惜敗も、前半6分には一時同点のトライを決める。防御の隙間を駆け抜けたうえ、追いすがるタックラーを鮮やかにかわした。約80メートル、走り切った。

 背後へのキックへも鋭く反応。FBを務める15人制での活躍も予感させた。

「試合前、監督から『このゲームではお前がキーマンだ』と言われていました。他のリーダーにばかり頼ってはいられないと思いました。(トライは)日々の練習の成果です。走ることには誰にも負けない自信と責任があります」

 身長175センチ、体重73キロ。幼稚園児の頃からタグラグビーを始め、小学2年頃から本格的にこの競技にはまった。いつしか、チャンピオンチームの仲間になるよりチャンピオンチームを作りたい人になった。

 所属先だった秦野ラグビースクールは比較的、人数が少なく、近隣の強豪に挑む立場だった。小野塚自身は中学時代に神奈川県スクール代表へと選ばれたが、地元の名門たる桐蔭学園には進まなかった。

 2020年度まで全国2連覇の桐蔭学園がかねて関東の雄と見られたが、「一番、強い桐蔭学園を倒したい、という思いがあって…」。頂点に立ったことのない高校を選び、クラブで上昇気流に乗りたいと考えた。

 同じ関東圏でも最高位が全国4強という流経大柏に誘われ、即決した。

「神奈川を出るからには、日本一を獲れるチームに行きたいと思いました」

 願いは叶っていない。昨季の全国大会では、3回戦敗退。準優勝する國學院栃木に7-27で屈した。1軍入りを果たしていた小野塚も、自身の働きには満足できなかった。

「準優勝する國學院栃木との試合に14番(WTB)で出させていただいたのですが、その時は本当にふがいない結果で、自分としても何もできなくて…」

 ラストイヤーはエースになる。その決意のもと、普段の取り組みを改めた。体力強化メニューでは先陣を切って走り、疲れた味方に声をかけた。夏の7人制大会では、その意識を体現した。

 大会3日目に唯一組まれた茗渓学園戦(●26-33)では、下級生にチャンスを与える方針のもと後半1分に交代。それでも信頼は揺るがない。相亮太監督はこうだ。

「要所、要所で(トライを)獲ってくれる。責任感はあるし、本当にラグビーを楽しんでいる。最初の2年間は精神的にもろいところもあったんですが、この春から本当に化けた。楽しみですね」

 本人は簡潔に言う。
 
「今年のテーマは必至。必ず、至るという意味です。日本一に向け、頑張っていきたいです」

 悔しい経験から、中心選手としての自覚を育んできた小野塚。入学前の決意を果たすべく、晩夏も秋も走る。

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