出番なしのツアーで得た学びとは。日本代表ファウルア・マキシが極めたい「ワークレート」。
帰り際に意気込む。
ファウルア・マキシは6月1日、所属するクボタスピアーズ船橋・東京ベイのファン感謝イベントに参加していた。
2日後から、日本代表の宮崎合宿に参加する。イベント閉幕後に取材に応じ、こう強調した。
「まずはワークレート。ひとつだけのプレーじゃなく、いろんなプレーができるようにしたいですね」
身長187センチ、体重112キロの25歳はトンガ出身。日本航空高校石川、天理大学を経て、2019年に日本でプロ選手となった。
学生時代から高校日本代表、20歳以下日本代表、ジュニア・ジャパンとさまざまなカテゴリーでこの国を代表した。正規の日本代表にも、若手主体で編まれた2016年に参加できた。
各所では激しいプレーぶりと同時に、几帳面な資質も注目される。遠征先でパッキングする様子を見た関係者が、すべての衣服を同じ形でたたまれているのに驚いたのだ。本人も、きれい好きであることを認める。
ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いる現体制のジャパンに初めて呼ばれたのは、昨年10月24日のことだ。
「代表に入りたい気持ちはずっとあったので、去年の秋、呼ばれて、嬉しかった」
国内外でツアー中だったチームから、追加招集を命じられたのだ。欧州へ出かける直前に合流。その後に3度あったテストマッチ(代表戦)へは出られなかったが、日々、感銘を受けた。
同じFW第3列でプレーする、30代の戦士たちの「取り組み」にである。
このツアーの主将でスピアーズの同僚でもあるピーター“ラピース”・ラブスカフニ、2019年の日本大会まで2度のワールドカップで主将を張ったリーチ マイケルは、常に努力を惜しまなかったという。マキシは2人の名を挙げ、関西弁で述懐する。
「同じポジションの人が、エキストラ(全体練習以外)でずっとタックルとかジャッカルの練習をしていて。ウェイトもすごい…(ハードにおこなっていた)。ラピースさんも、リーチさんもそう。すごいな、これくらいやらんとそこまでのレベルにはならないんだ、と思いました」
首脳陣からは、「毎日の練習でベストを出せ」「強みのコンタクト勝負で負けないように」とレビューを受けた。スピアーズに戻れば、地道なトレーニング、さらにはゲームでの「ワークレート」を意識する。
「ボールキャリアを何回する、とか、何回でもタックルするとか、そうしたことを意識しました。もちろん、きついっす。でも、きつい時に、どんだけ頑張れるか(が大事)」
トップリーグが動いていた2021年は、外国人枠を争っていたこともあり10試合中4度の出場に終わったもの。先発は2度に止まった。
しかし、今年1月からのリーグワンでは、日本代表資格を持つ選手は「カテゴリA」と見なされる。各クラブは、このカテゴリの選手を23名中17名以上登録しなくてはならない。もともとマキシの活躍の幅は広がりそうでもあった。
当の本人は、気を引き締めたままだった。きっとそれがよかった。
「去年はちょっと悔しい思いがあって…。あまり試合に出てなくて、アピールする機会がなかったので。今年は(試合に)出やすいと言われていますけど、(まずは)毎日の練習での取り組み、練習試合、毎回の試合で、しっかり自分のベストを出していきたいです」
果たして実戦16試合中13度、出番を得た。持ち場のNO8で定位置を確保。上位層にあたるディビジョン1で12チーム中3位と奮闘するチームにあって、宣言通りの高い「ワークレート」を保った。高低のタックルとジャッカル、機を見ての突進を重ねた。
国内での働きが買われたからか。5月9日、日本代表候補に名を連ねた。それらがふたてにわかれる際も、予備軍のナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)ではなく上部団体にあたる日本代表へ配属された。
宮崎で公開された6月6日の練習では、リーチ、ラブスカフニと同じ組でスクラムを組んでいた。
「ジャパンでも、貢献できるようなプレーがしたいです」
昨秋の日本代表ツアーで活躍したNO8のテビタ・タタフ(東京サントリーサンゴリアス)は、NDSに回る。大分で動くNDS組は、11日に「トンガサムライXV」との慈善試合に「EMERGING BLOSSOMS」として、18日にはウルグアイ代表とのテストマッチに日本代表として挑む(場所はいずれも東京・秩父宮ラグビー場)。
この2試合のパフォーマンス次第で、宮崎の代表本隊へ招集される選手もいそうだ。選手層拡大と内部競争激化へのチャレンジが続く。
タフな争いの渦中にあるマキシは、25日以降のテストマッチ3戦、さらには2023年のワールドカップ・フランス大会を見据える。
「もちろんラグビー選手なら、誰でもワールドカップに出たい。もちろん僕も出たい気持ちもある。ま、これから(次第)っすね。はい。どれだけ、頑張れるか、です」