国内 2022.03.23

仕事もラグビーも。田森海音の決断

[ 多羅正崇 ]
仕事もラグビーも。田森海音の決断
いつも穏やかな表情。ブルーシャークスに加わる(撮影/多羅正崇)



 田森海音(たもり・かいと)がいるスクラムは華やかだ。

 スクラムの最前線で真っ向勝負を挑むフッカーだが、いつも朗らかに、時に笑顔でレフリーとコミュニケーションを取る。

 明治大学のHOとして、2021年度の大学選手権準優勝を経験した。

 出身は長崎県長崎市。長崎中央RS−長与ヤングラガーズから長崎北陽台高校。長崎南山高校に敗れた3年時の花園県予選決勝はNO8だった。

 U20日本代表にも選出された世代屈指のHO/NO8であり、紫紺の次に着るジャージーはファンの関心事だったろう。タレント性も感じさせる22歳の新天地。それは、清水建設江東ブルーシャークスだった。NTTリーグワンでディビジョン3に所属するチームだ。

「ラグビーが好きなので『(大学卒業後も)続けたい』という気持ちもありましたが、選手を引退した後の方が人生は長いので不安もありました。僕は何を優先してラグビーをしたいのかと考えた時に、仕事とラグビー、どちらもちゃんとやってきたいと思いました。選手の間はしんどいとは思いますが、そこを充実できるのはブルーシャークスだと思って、自分から、です」

 他チームからの誘いもあったなか、自問自答で導き出した答えに従い、行動した。自分からブルーシャークスにアプローチした。

 チームには高校、大学が同じであるWTB宮?永也がおり、連絡を取った。2018年度の大学日本一を経験している3学年上の先輩だ。ブルーシャークスに魅力を感じた。

「仕事をフルタイムでやって夜から練習、という環境ですが、そこにプライドを持っています。『それで勝つからこそ意味がある』『感動を与えられる』ということを皆さんが理解していて——そこに憧れるというか、素晴らしいなと思います」

 1月9日の東京・国立競技場。大学日本一を懸けた大一番では、帝京大学に14−27で敗れた。後半にシフトアップする明治大学らしく、HO田森みずから決めた後半5分のトライを含む14得点で、後半のスコアは14−7で凌駕した。

 笑顔が印象的な田森だが、試合後の中継映像では涙を浮かべていた。あの試合の後は、すこし楕円球から離れた。

「(大学ラストシーズンが)終わってからすぐはちょっと離れました。ラグビーボールにも触らないし、トレーニングからも離れて、リラックスする時間を作りました」

 2月中旬のブルーシャークス合流まで心身を休めた。

 しかし3月にはさっそく練習試合に出場。そして4月1日の入社からはいよいよ研修も始まる。“サラリーマンラガー”の日々が本格化する。

 チームは今季躍進しており、第8節を終了して6勝2敗の2位。急伸中のチームにも追いついていかなくてはならない。

「清水建設の社員、社会人1年目として、仕事100%、ラグビー100%を実行したいです。ラグビーではチームに慣れて、チームのいろんな事を知って試合に出たいなと思います」

 ハードな日々も笑顔で乗り越えてしまいそうだ。

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