国内 2022.03.13

ケガ明けから先発定着。舟橋諒将[静岡ブルーレヴズ]が明大時代に培った絶対的メンタル。

[ 明石尚之 ]
ケガ明けから先発定着。舟橋諒将[静岡ブルーレヴズ]が明大時代に培った絶対的メンタル。
4戦連続で先発する静岡BR・LO舟橋諒将。高校日本代表、ジュニア・ジャパンの代表歴を持つ(撮影:大泉謙也)

「負けたこと自体は本当に悔しいですけど、手ごたえは感じられる試合になりました」

 静岡ブルーレヴズは前節、クボタスピアーズ船橋・東京ベイに24-30で惜敗した。コロナの影響を含めなかなか勝ち星に恵まれない中、当時リーグ首位のスピアーズを追い詰めた。

 リーグワンの中でもトップレベルに大きくて強いスピアーズFWに、どれだけ立ち向かえるかが焦点だった。

「一番(良かったの)はセットプレーで、特にスクラムはいいプレッシャーをかけられたし、課題だったモールのディフェンスも改善できた。チームはいい方向に向かっていると思います」

 そう振り返るのは、5番で先発した舟橋諒将(ふなはし・りょうすけ)。186㌢、106㌔と国内最高峰リーグのLOとしては、決して大きいとは言えないサイズで奮闘する。スピアーズ戦でも頑健なFW相手にゲインを切りまくった。

「自分の強みであるフィジカルの手ごたえは十分に感じました。長谷川慎さんから『僕ら(レヴズ)は体が特段大きいわけではない。だから一局面、一局面、全力以上をやって初めて結果が出る』と日々言われています。今季はその意識が強いです」

 舟橋は自分自身をサイズもなければ、スキルも高くないと見る。だから泥臭く、一つひとつのプレーに集中することを身上としてきた。長谷川コーチ(現・アドバイザー)から口酸っぱく言われている言葉もすっと胸に落ちた。

 そうして今季、先発の座を掴んでいる。ここまで3戦連続で先発出場中だ。LOだけでなくバックローもこなせるのがこの人の強み。第7節、グリーンロケッツ東葛戦ではFLでの先発だった。札幌山の手高時代はNO8で、明大3年時からLOに転向した。自然とバックファイブであれば、どこでもプレーできるようになった。

「LOで出て途中からFLに移って出続けることもできます。セットプレーの重要性はLOの方が高いですが、僕は接点での局面が強みなので、そこはポジションが変わっても変わりません」

 入団3年目の舟橋は1年目のトップリーグ2020でデビューを果たした。第3節のリコー戦で初出場、初先発を飾っている。その後も出場を重ねていたが、リーグは途中で中止になった。さらに2年目は開幕直前に左足首あたりの腓骨を骨折、シーズンを丸々棒に振った。

「(骨折は)リーグが延期になった直後でした。1シーズンをダメにしてしまったので、今年は2年分いいプレーをして、チームに恩返ししたい気持ちが非常に強いです」

 復帰まで約9か月の時を要した。小学3年で始めたラグビー人生、長期離脱はこれが初めてだった。はじめこそ焦りはあったが、同じ境遇の先輩に救われた。LOのポジションで争う桑野詠真は、右足前十字靭帯断裂の大けがを負っていた。

「同じタイミングでケガをしたこともあって、たくさんのサポートをしてもらいました。詠真さんはラグビーナレッジの高い選手でいろいろ吸収できましたし、こういう期間にどうチームに貢献するかも学びました」

 グラウンドに立つことは叶わない。では試合に出られなければチームに貢献できないのか、いや、そうではないだろう。桑野も舟橋も、チームのために何ができるかを考えていた。

「詠真さんとは対戦相手の分析をしたり、自分たちがどういうラグビーをして、どう勝っていくのかという資料を作って、新しく入ってくる庄司(拓馬)や奥村(翔)に教えたりもしました。ケガをしながらもサポートできることはやってきたつもりです」

 ケガでの離脱こそ初めても、1軍の試合に出られなかった経験は、これが初めてではなかった。明大3年時、先発を勝ち取った舟橋がシーズン終盤に、そのポジションを後輩に譲った。対抗戦の早明戦以降、箸本龍雅(現・サンゴリアス)が台頭してきたのだ。

 それから最上級生となった翌年も、出場機会にはなかなか恵まれなかった。その一方で明大は福田健太主将(現・ヴェルブリッツ)のもと、22年ぶりの優勝を果たす。

「最後まで出られるように頑張りましたし、決勝に出られなくてもちろん悔しかったですけど、優勝した瞬間は嬉しかったんです。悔しいだけで終わらなかったのが良かった」

 チームは団結していた。ノンメンバーの全員が、試合に出るメンバーを送り出す雰囲気ができていた。そうした空気を肌で感じ、舟橋も自然と行動に移していた。

「箸本だったりと激しいメンバー争いをしている中で最後僕は出ることができませんでした。でもそれで終わりではなく、サポートできることをいろいろ探しました。ジュニアのキャプテンをしたり、決勝戦はウォーターボーイでした」

 そこで築き上げたメンタリティがいまの舟橋の根幹にある。だから昨季もチームのために行動できた。切り替えることができた。

「メンバーに入って頑張るのもそうですが、入らなくてもチームに対して良い影響を与えられる。そういう選手が多くなればなるほど、強いチームだなと大学のときに感じました。そこで絶対的なメンタルができあがったと思います」

 3月13日のシャイニングアークス東京ベイ浦安戦。舟橋は5番での先発出場が決まっている。

「自分のやることは変わりません。とにかく体を張り続けます」

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