コラム 2022.03.11
【ラグリパWest】大阪外語の末裔たち。

【ラグリパWest】大阪外語の末裔たち。

[ 鎮 勝也 ]



 池田は46歳。在学中はスクラムハーフ。ハンガリー語を専攻した。三洋電機やそれを受け継いだパナソニックのラグビー部では通訳や普及、主務として11年間在籍した。現在はパナソニックに勤務しながら、週末、大阪大のコーチとして活動している。

「僕らが現役の頃、男女の比率は2対8でした。男子が少ないからみんな仲良くなるし、初心者も歓迎しました。OBさんたちも仲がいいですね」
 部はこぢんまりとした男子校の感覚だった。大阪外語の卒業生では小説家の陳舜臣と司馬遼太郎がいる。この2人は陳が一学年上で、専攻言語も印度と蒙古と違ったが、終生付き合いを続けた。

 河井和哉は笑顔を浮かべる。
「ノリで入部しました」
 外国語学部ラグビー部の最後の主将は、広島の高校、安古市(やすふるいち)ではバスケットボールをした。転部理由を話す。
「部の雰囲気がすごくよくて、ごはんもごちそうになって、胴上げもされました」
 チームではセンターを任された。

 中島希沙良(なかしま・きさら)は大阪大の一員として戦った。ポジションはロック。岐阜の高校、岐山(ぎざん)では体操部だった。天理との歴史はうっすらと知っていた。
「部室の整理をしていたら、キャンパスの設計図面なんかと一緒に、歴史を書いた資料が出て来ました。へーって思いました」

 外国部学部の学年の数え方は面白い。河井は6回生の4年生。中島は5回生の4年生になる。回生は在学年数。海外留学や休学が当たり前なので、こういう数えになる。

 フランス語専攻の河井は昨年一年、現地に留学した。先月帰国。就職活動を始める。


 ドイツ語専攻の中島は今月下旬、現地に旅立つ。河井と同じ1年の留学である。

 語学とともにあったラグビーは形を変える。大阪大はその伝統ごと受け入れる。東京外国語大との定期戦を受け継いだ。昨年12月、東上。初めて大阪大として戦い、54−14で勝利する。非公式を含め77回の通算成績は36勝38敗3分となった。

 池田はほほ笑んだ。
「学生たちが外語のラグビーを受け入れてくれました。そのよろこびがあります」
 定期戦のジャージーは大阪大の紺×黒の段柄ではなく、外国語学部のエンジを着用。その部歌を覚え、歌ってくれた。

 池田は新チームの目標を口にする。
「チーム一丸となってBリーグに上がりたいです。外語を知るメンバーが残っている中でそれを成し遂げたい」
 昨年、大阪大は12校編成のCリーグで優勝した。入替戦では大阪経済大に15−15。「同点の場合は上位リーグ所属を勝者」とする規約により、昇格はできなかった。

 外語の魂とともに…。今年こそBリーグの壁を打ち破りたい。


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