【ラグリパWest】初めての全国大会。仙台高等専門学校 広瀬キャンパス
名取を監督として率いるのは柴田尚都。兼村の10歳上で、仙台大の先輩にあたる。
「名取とは定期的に練習などをしてもらったりしています」
兼村が広瀬で教職を得るにあたって、柴田の引きがあった。
昨年、全国大会の東北代表になったのはその名取と秋田だった。秋田は今年、部員不足のため予選出場を辞退。広瀬が戦わずして代表になった。第一代表決定戦はその名取に0−103。主将の小綿の一定の達成感はこの前段があってのことである。その名取は本大会で準優勝する久留米に26−32と逆転負けする。広瀬の次の試合だった。
完封負けしたものの広瀬の初出場にOBや周囲は盛り上がった。部のFacebookでは、遠征費として不足する25万円の寄付を募り、瞬く間に集まる。兼村は顔を緩める。
「OBの方々も喜んでくれました。ご支援をいただき、つながりが新たに生まれました」
創部は1983年(昭和58)。関係者にとってはどのような形であれ、縁(えにし)のあるクラブが全国大会に出るのはうれしい。
広瀬はこの得難い経験を来年につなげられる。助っ人を含めた17人のメンバーはすべて4年生以下。最上級生の5年生はおらず、卒業での戦力ダウンはない。
PRの佐々木駿斗は4年生。体重は122キロ。大会最重量だった。
「春になったら1年生にいっぱい入ってもらって、より強くなって、自分ももっとパワーをつけて戻ってきたいです」
自分と似た大きな体を持つリーグワン・神戸の中島イシレリをお手本にする。
卓球と兼部した佐々木瀬那は3年生。170センチ、54キロと細い体ながらWTBを任された。満足感が漂う。
「やってよかったです。いい経験をさせてもらいました」
主将の小綿とは同じ寮生。誘われ、団体スポーツに興味があって加わった。
ただ、競技を続けるかどうかは分からない。
「まだそこまで考えていません」
ヘルプはあくまでもヘルプ。佐々木瀬那は使命を果たした。あとはクラブ全体での引き留めや新たな部員の勧誘が必要だ。
高専は中学卒業後、5年をかけ、理系の専門分野を学ぶ。仙台高専を含め国立校が多い。卒業後の進路は3つ。短大卒での就職、4年制大学への編入、学内の専攻科でもう2年を学び、大卒の資格を手に入れる道がある。
勉強中心の5年間は広瀬も例に漏れない。その中で全国舞台に立てた。
「キャプテンとしてまた大会に出て、初勝利できるようにやっていきたいです」
小綿は未来予想図を語った。その姿からは希望があふれた。