コラム 2021.12.30
【コラム】2021年、取材で出会った十の言葉

【コラム】2021年、取材で出会った十の言葉

[ 向 風見也 ]

「誰かと比べるんじゃなく、自分の強みを伸ばそうとしてきました」(サントリー/梶村祐介/6月10日/リモート)

 サンウルブズの一員として臨む日本代表との強化試合を前に、それまでの道のりを明かした。

2021年の国内トップリーグでは、主将の中村とインサイドセンターの定位置を争うなかで「自信を失いかけた時期」もあったと吐露する。しかし時間が経つにつれ、自分に矢印を向けるよう心を整えた。

新装開店するリーグワン参戦に向け、契約期間満了を前にキヤノンへ移籍。サントリー、サンウルブズで梶村を指導した沢木敬介監督のもと、代表復帰へ勝負する。

「自分を大切にすることは凄く大事かな、とは思いますね」(ハイランダーズ、日本代表/姫野和樹/9月29日/リモート)

 今年はニュージーランドのハイランダーズでプレーした。海外生活を経て感じた日本のよさについて聞かれ、こう説く。

「ニュージーランドって、時間がゆっくり、ゆったりしている。自分の時間を大切にする。仕事が終わったら帰る…。オンとオフの切り替えはいいなぁと思いました。ただ、マイペース過ぎてダメなところもあるというか…。例えば、僕はもともと2週間フラットでチームメイトと過ごして、色々とダニーデン(現地)での過ごし方を学びながら、その後に一人暮らしをする予定だったんです。でも、結局家が用意されたのが4か月後で、不動産屋に鍵を取りに行って、部屋に入ろうと思ったら、その鍵が違った! 逆に日本はきっちりしすぎている部分もあるし、お互いのよさを混ぜればいいなぁと思いましたけどね」

最後は「(どちらにも)悪い部分も、いい部分もあるから、何とも言えないですが…」と、掲題の一言を用いた。簡潔な人生観に行きつく。

「周りの僕を見る目が変わったとしても、僕が変わるわけじゃないです。それによって僕が何かを変えることはおかしいじゃないですか。自分は自分。やるべきことは変わらないです」(パナソニック、日本代表/稲垣啓太/10月1日/リモート)

 2019年のワールドカップ日本大会を機に、競技の枠組みを超えた有名人となった。代表候補合宿への参加中、自身の知名度に関して話す。

「街を歩けば、まぁこんな身体ですから皆、わかるわけです。別にやましいこともないから堂々と歩きます。ただ、周りが『あ、ラグビー選手だ』と認識してくれることはありがたい、嬉しいことです。自分のプレーに意見を言ってもらえたり、感動しましたと言ってもらえたりするのも。そう言ってもらえるようにも、結果を出さないといけない。逆に、結果が出なかった時、ファンの人はもっと(自分たちを)罵ってもいいと思うんですよね。ラグビー界も、それくらいのレベルになっていかないといけない」

 夏までの遠征後は、隔離先のホテルにファンが差し入れを届ける事態に唖然。もっとも時間が経てば、「気持ちはありがたいです。その応援してくれる情熱を、もっと違った形にしてくれたら最高なんですけどね」と少し表情を崩した。

「私は女性として女性にラグビーを教える身として、男性へのコーチングと女性へのコーチングで何が違うかと投げかけられることもあります。ただ私はまず、人間をコーチングしていると理解しています。ニュージーランド人、日本人、男、女と、カテゴライズすると視野を狭くすると思っています」(女子15人制日本代表ヘッドコーチ/レズリー・マッケンジー/11月3日/リモート)

 カナダ出身で就任2年目。異国の選手を指導する難しさについて聞かれ、即答した。違いを受け入れるよりも、違いなどあって当然だからそれをあえて意識しないという思いか。

「ただ、日本に来たことを楽しんでいます。ここに来なければ、納豆のおいしさもわからなかった」

「誰かの真似をしようとか、誰かのようなキャプテンに…というのでは、皆が求めていた僕のキャプテンではなくなってしまうのかなと思っていて。僕は、僕のキャプテンというのを貫こうと思っています」(帝京大学主将/細木康太郎/12月4日/東京・秩父宮ラグビー場)

 関東大学対抗戦Aで全勝優勝。細木が会見し、「理想のキャプテン像というものは、なくて…」と切り出す。同級生に船頭役を託されたのは「僕の個性、僕自身を認めてくれているから」だとし、丁寧に言葉を選ぶ。強烈な突破力を誇る、自分の心に素直な人間が、そのまま帝京大の主将になった。

「60パーセントくらいでしょうか。…まぁ、花園で100パーセントになることはないので、パフォーマンスとしては上出来だと思います」(富山第一高監督/河合謙徳/12月28日/大阪・東大阪市花園ラグビー場)

 全国高校ラグビー大会へ3大会連続で出場が叶うも、いずれも初戦敗退。第101大会の飯田高戦を8―31で落とした後、選手が力を発揮できたかどうかを聞かれてこう述べた。大舞台で普段通りに戦う難しさを受け入れ、この場に立っていた。キックオフの前には選手へこう告げた。

「お前たち、よくここまで来た。自信持って、楽しんでこい!」

【筆者プロフィール】向 風見也( むかい ふみや )
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(共著/双葉社)。『サンウルブズの挑戦』(双葉社)。

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