コラム 2021.12.07
【ラグリパWest】ラグビーのために撮り続ける。松岡征人 [カメラマン]

【ラグリパWest】ラグビーのために撮り続ける。松岡征人 [カメラマン]

[ 鎮 勝也 ]



 夫婦の名から1文字ずつとった長男・秀征は山口高に合格し、ラグビー部に入った。フルバックだった。1年夏の合宿で破傷風になる。それが元で退部。部に影響力のあった河野俊貞は名誉の負傷としてOBとして遇する。河野はOBの内科医。県ラグビー協会会長としてその普及・発展につとめた。

 その秀征も正明と同様、事故で亡くなる。
「もう20年ほどになります。河野先生が追悼のため、管弦楽部を呼んで、紅白戦を企画してくれました。本当にありがたかった」
 今は娘の清恵ひとりになった。
「娘がいてくれるから、松岡家はつながっています」

 亡き長男が選んだラグビー。退部後もOB扱いにして、追悼の試合もしてくれた。松岡は競技そのものに恩義を感じている。撮影を奉仕とするのはその思いもある。
「プレゼント。子供もよろこぶ、親もよろこぶ」
 高校だけではなく、ラグビースクールや大学の写真も撮る。弱いチームにも対応する。
「強いところは撮る人が来るじゃろうから」

 グラウンドには日本代表が勝った2回のワールドカップを経て、カメラマンと称する人間の数が増えた。
「コンテストに出して賞をとろうとする人が来だしました。プロというても、並んでいる写真を撮るだけの者もいる。これでゼニとるんか、と言いたくなります。わしはラグビーを愛して撮りよるんよ。ただ撮るんやない」

 ラグビーのよさを口にする。
「教育の一環。社会人になると役に立つ」
 合宿での掃除、洗濯。ジャージーやスパイク、道具などの整理整頓。自分のチームだけでなく、他者に対するあいさつや礼儀作法なども含まれる。

「自分のチームを強くさせるだけじゃなく、相手のチームも上達させる。それは技量だけではありません。学年が上がれば、おとなしかった子が、自分の意見を言うようにもなってきます。そういう成長もあります」

 この2021年、松岡には厄が多かった。3月、アキレス腱を切った。家庭菜園で足を滑らせる。がんの告知も受けた。治療を受け、現在は経過観察中にある。

「先読みして、選手が向かってくるところに行く、それができなくなった。迫力ある写真が撮れなくなったことが残念です。でも依然として撮れるよろこびは感じています」

 今年は3回、県内で個展を開いた。高校の公式戦にも顔を出した。
「子供たちと接していると元気をもらえます」
 年を重ねようが何をしようが、あくまで一カメラマンとして現場に立つ。ひとつことを貫き、無償でやる姿は後進たちのお手本である。若い人たちはいずれ松岡の偉大さがわかる時が来るだろう。



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