国内 2021.11.29

ラストゲームで思いぶつかる。関東大学対抗戦B、学習院×武蔵。

[ 編集部 ]
ラストゲームで思いぶつかる。関東大学対抗戦B、学習院×武蔵。
タックル連発の荻田直弥同様、1年生ながら活躍の学習院CTB田中直音。(撮影/松本かおり)
学習院はFWが奮闘した。写真はPR原口昂大。(撮影/松本かおり)
前半の集中力など、武蔵も踏ん張った。写真はSH近藤優大主将。(撮影/松本かおり)
試合後、武蔵にエールを送る学習院。左端がWTB梶翔太郎主将。(撮影/松本かおり)
試合後の武蔵の円陣。来季へ思いをつないだ。(撮影/松本かおり)



 チームの意志。そして、4年生のプライドがぶつかりあう時間だった。
 11月28日、武蔵大学の朝霞グラウンドで関東大学対抗戦Bの学習院大×武蔵大がおこなわれた(以下、それぞれ学習院、武蔵)。

 昨週までの今季の勝利は、それぞれ4勝と2勝。この日の試合は、入替戦への出場権などは懸かっておらず、両チームにとっては対抗戦Bでの最終戦だった。
 29-21で学習院が逆転勝ちし、学習院=3位、武蔵=6位でシーズンを終えた。

 大学でのラストゲームとなる4年生も多かった一戦。ラストシーンまで熱戦は続いた。
 試合は武蔵が先制した。
 キックオフ直後から勢いよく学習院陣に攻め入る。前半3分、HO新海玲汰がインゴールに飛び込んだ(FB加藤健人のGも決まり7-0)。

 14分、学習院にトライ、Gを返されるも、23分にLO長嶺昇太、加藤のGで再び引き離す(14-7)。
 32分にはSH近藤優大が相手スクラムからの球出しを奪い取り、SO瀬尾叡史へつなぐ。瀬尾がトライラインを越え、(Gも決まり)21-7と点差を広げた。

 先手を取り続けた武蔵に対し、前半風下だった学習院は、慌てることなく好機を待った。
 前半38分にFB益田悠生のトライ、SO藤本祐樹で点差を詰めて後半に入ると、風上に立った後半7分、FL田中理稀のトライで射程圏内に武蔵をとらえた(19-21)。

 残る30分、攻防はほとんどの時間、武蔵陣内でおこなわれた。
 風上の学習院はキックでエリアを奪い、スクラムで優位に立つ。しかし、ミスと武蔵の粘り強いディフェンスで得点できない。押しながらも攻め切れない、もどかしい時間が続いた。

 34分だった。
 学習院は相手反則からPKを武蔵陣深くに蹴り込む。ラインアウトからモールを組み、押し切った。Gも決まり、ついに逆転(26-21)。
 死闘はさらに続いた。
 武蔵も再逆転を狙って力を振り絞る。劣勢だったスクラムでターンオーバーし、攻めたシーンもあった。

 学習院のピンチを防いだのがCTB荻田直弥だった。
 攻め込む武蔵をタックルで押し返す。反応良く味方も続き、相手の反則を誘った。
 ラスト数分でそんなシーンが2度あったうちのひとつは、後半43分だった。SO藤本がPGを決めて勝利を確定させた。

 ビッグタックルを連発したCTB荻田は1年生だ。
 主将のWTB梶翔太郎は試合に臨むにあたり、「(対抗戦最終戦で)勝って終わろう。笑顔で終わろう」と全員に呼びかけた。

「後輩たちに、勝たしてくれ、と頼みました。みんな、勝たしてやろうか、という感じで笑顔でした。(荻田のタックルは)それがあったからかも」と笑った。

 試合を振り返り、「これまでFWがスクラムで勝ったことがなかったのに、きょうは押した。逆に、それでチームが浮き足立ったかもしれません」と話した。
「ハーフタイムには、落ち着いて自分たちのやったことをやり切ろう、とだけ言いました」

 昨季はコロナ禍で試合数は少なく、対抗戦Aとの入替戦が実施されないことも早々に決まった。
 梶主将たちは、2年生の時に3位となったチームを超えようと練習を積み重ねたが昨季は7位。今季に懸ける思いは強かった。

「結果的に3位で先輩たちを超えることはできませんでしたが、コロナ禍での制限がある中で、やれることはやり切れたと思っています」
 後輩たちには自分たちの姿を通し、「焦らず、落ち着いて、丁寧にプレーすることが大事。それで、自分たちのやってきたことが相手にまさっていれば勝てる、ということは伝えられたと思います」と言った。

 ラストプレー直前、マイボールスクラムをターンオーバーされて冷や汗をかいた。「ラグビーは簡単には勝てない、ということも伝えられたかな」と苦笑しつつも、「勝ちたい気持ちが大事。それを絶対に忘れないで」と続けた。
「学習院は人数が少ない分、関係が密。一丸となって戦うチーム」
 後輩たちに伝統の継承を託した。

 敗れた武蔵のSH近藤主将も立派だった。
 試合後の円陣でみんなに言った。
「日々の積み重ねを振り返れば、もっとやれたかも、という後悔もあるけど、一生懸命に取り組んできたからこそ、いま悔しい。その気持ちを忘れないで」

 昨季は全敗。それなのにシーズン後に悔しさがなかったと回想する。
「接戦を勝てないのは今日だけのことだけでなかった。そう考えると、シーズンを通してやれることをやり切っていなかったのかもしれませんが、きょうの試合後には涙もあった」
 劣勢だったスクラムで試合終盤にターンオーバーしたときには、「結果的にトライには結びつきませんでしたが、団結を感じました」と言う。

 今季からチームの指揮を執る浅田就也ヘッドコーチも、4年生の結束をねぎらった。
「春先はコロナ禍の影響により、河川敷で少し練習するのが精一杯でした。そういう状況を乗り越えられたのは4年生のお陰。最後はワンチームで戦えていた。それなのに勝たせてあげられなかった」と涙ぐんだ。

 同HCは「試合後、最後に4年生が笑顔になって良かった」と話し、「彼らがつないでくれたバトンは受け取りました。積み上げていきたい」と来季への思いを胸に刻んだ。

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