周囲の期待には謙虚 帝京大ルーキーの本橋拓馬が早大戦勝利で得た「自信」
ノーサイド直前、自陣ゴール前でカウンターラックを決める。29-22。7点差で勝った。
11月3日、駒沢オリンピック公園陸上競技場。帝京大ラグビー部1年の本橋拓馬は、関東大学対抗戦Aの5戦目に先発フル出場を果たす。終盤は味方のイエローカードで数的不利を強いられながら、昨季全国準優勝の早大から3年ぶりの白星を挙げた。
「最後、14人でプレーして守り切ったというのは、自分たちにとって自信にはなりました」
対抗戦に出たのはこの日が4度目。ともに全勝同士で臨んだ大一番へ、「グラウンドに入る前の円陣での気持ちの高ぶりが、いままで経験したことがないほどすごかったです」。いざ戦ってみれば、手応えをつかめた。
「高校の頃は、帝京大対早大はものすごいものだと感じていたんですよ。実際にプレーしていても、いままでとは気持ちの入り方が全然、違っていて、びっくりしました。対抗戦って、こういうものなんだ…と。(対戦相手の)コンタクトは強かったです。ただ、そのなかでも自分が勝てた部分があったり、タックルで相手を止められたりもしました。早大との試合は、自信につながりました」
身長192センチ、体重113キロ。低い姿勢でプレーできる大型LOとして、将来の日本代表入りが期待される。当の本人が「そんな…。それほどでも、ないんです。まだまだです」と謙遜するのは、向上心の裏返しか。
「正直、注目されていることを意識したことはないですね。いつも通りのことをいつものようにやるだけで」
京都成章高3年時に、全国大会で準優勝。その数か月前までには、帝京大進学を決意していた。複数あったと言われる選択肢から、大学選手権9連覇(2009〜2017年度)という強豪を選んだ。同部の練習環境に惹かれたからだ。
ラグビーで将来を切り開く。その覚悟の表れとして、上京後はもともと苦手だったという下半身のトレーニングに注力する。重量を肩に乗せて膝を曲げ伸ばしするスクワット、しゃがんだ状態からバーベルを持ち上げるデッドリフトの最重量値は、入学時と比べてそれぞれ「40~50キロ、70~80キロ」もアップさせている。
栄養バランスのよい食事がとれていることにも助けられ、身体の変化を実感する。
目指すは日本代表入り。身体を鍛えるのは、世界に勝つにはフィジカリティが不可欠だと思うためだ。
「数値(の変化がある)はもちろんですが、相手と当たった時にいい感触を得ることができています。みっちりトレーニングすることで、いつの間にか強くなった。いまは、もっともっと(トレーニングを)やる気です」
春先は同級生のFLの青木恵斗が一足早く1軍デビューを果たすなか、自身は右足首をけがして戦列を離れた。夏合宿前で練習に戻るまで、もどかしさを抱えた。
「Aチーム(主力組)で同期がプレーしていることへのうらやましさと、ちょっと、けがをしている自分に対する焦りがありました」
復調したいまは、上位陣との戦いに堂々と挑める。岩出雅之監督はこうだ。
「独特の強さ、意外な器用さがある。学生時代にのんびりとした選手生活を送るのではなく、いまの代表の先輩(日本代表入りした卒業生)たちを超えていくように…という基準で見ています。未来に期待できるよう日々を送って欲しいです」
当の本人はこう締める。
「やるからには、いけるところまでいきたいなというのはあります。シーズンが深まるなかけが無く、できるだけチームに貢献したいです。日本一になれるようにがんばっていきたいです」
20日には東京・秩父宮ラグビー場で明大とぶつかる。早大戦に続く全勝対決だ。